独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
「うちのマーケティング部の部長、私よりひと回りも上よ。父が決めたの」
真緒の父親は確かに結婚を急がせたい様子だった。俺も真緒も三十二、おそらくは早く真緒に跡継ぎを産ませたいという思惑もあるのだろう。
「性格が合えば年齢はあまり問題にならないんじゃないか?」
「そこが一番駄目なの。仕事はできるけど、嫌味で高圧的な男よ。同期を蹴落として今の役職についたの。父や私にすり寄ってくるのも、ある時期から狙っていたんじゃないかしら。私の婿の地位を」
真緒はふうと嘆息し、冷めた紅茶を口に運ぶ。
「父は会社が大事だから、多少野心家でも仕事ができる人間に任せたいんでしょう。人間性は見ていないわ」
「娘の幸せだって願っているに違いないよ」
「優先順位をつけたら、会社と財産なのよ。自分の血が会社を支配し続けられればいい」
それを言われると耳が痛い。文治もまた、一族経営にこだわってきた。古くさい、衰退を招くという意見を抑え込むためには、結果を出すことで、強固な血縁支配をしていかなければならない。
真緒の父親にとっては、跡継ぎ問題は優先すべきことなのだろう。引いては真緒のためだが、娘がこれほど嫌がっていても推し進めたいものなのだろうか。
真緒の父親は確かに結婚を急がせたい様子だった。俺も真緒も三十二、おそらくは早く真緒に跡継ぎを産ませたいという思惑もあるのだろう。
「性格が合えば年齢はあまり問題にならないんじゃないか?」
「そこが一番駄目なの。仕事はできるけど、嫌味で高圧的な男よ。同期を蹴落として今の役職についたの。父や私にすり寄ってくるのも、ある時期から狙っていたんじゃないかしら。私の婿の地位を」
真緒はふうと嘆息し、冷めた紅茶を口に運ぶ。
「父は会社が大事だから、多少野心家でも仕事ができる人間に任せたいんでしょう。人間性は見ていないわ」
「娘の幸せだって願っているに違いないよ」
「優先順位をつけたら、会社と財産なのよ。自分の血が会社を支配し続けられればいい」
それを言われると耳が痛い。文治もまた、一族経営にこだわってきた。古くさい、衰退を招くという意見を抑え込むためには、結果を出すことで、強固な血縁支配をしていかなければならない。
真緒の父親にとっては、跡継ぎ問題は優先すべきことなのだろう。引いては真緒のためだが、娘がこれほど嫌がっていても推し進めたいものなのだろうか。