独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
結局俺はなんの方策もたてられず、お土産にクッキーを山のように持って送りだされることとなった。

「初子さんによろしく伝えて。申し訳なかったと」

真緒は最後までそんなことを言っていた。

帰宅すると、初子は部屋掃除をしている。掃除機の手をとめ、おかえりなさいと微笑む。俺はもらったクッキーを初子に手渡した。

「真緒さんのおうちのクッキー、とても美味しいんですよね。お茶にしましょう」

屈託なく笑う初子に頭を下げる。

「初子、すまなかった」
「真緒さんは大丈夫でしたか?」
「大丈夫ではないが、できることがないといった感じだな」

幼馴染のピンチに何もできないとは。少々無力感に苛まれていると、初子が近づいてきた。真剣な目をしている。

「連さん、真緒さんを支えて差し上げてください」
「俺が?」
「事情は存じあげませんが、危機にお電話をしてくるなんて、真緒さんは連さんを頼りにされているのだと思います。どうか」

俺は初子の言葉を遮った。皆まで言うなというように、初子の口元に手を持って行く。

「初子、誤解するなよ。俺と真緒は友人だ。幼馴染だ。特別な感情はない」
「ですが」
「俺の妻は初子だ。優先するのは初子。そこは絶対に違えない」

初子が驚いた顔をする。俺は少々気まずい気持ちで視線を逸らした。
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