独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
「まあ、真緒本人にも叱られた。おまえをほったらかしてしまったから。すまなかったな、初子」
「いえ、私はいいんです。でも」

真緒のことだろう。黙っていても初子は勘違いしそうなので、俺は真緒の結婚について話した。いずれ耳に入ることだし、結婚式があれば初子は俺の妻として出席することになるだろう。

「真緒さんが望んだ結婚ではないのですね」
「相手は財産狙いだからな。仕事はできるらしいし、若くして役職にもついているらしいが、真緒は嫌っている。真緒の父親が選んだそうだ」
「連さん、私に少し考えがあるのですが」

手を口元に持って行き、考えるふうな表情をしていた初子が言う。

「考え?」

俺は首を傾げた。初子が自ら提言してくることはほぼない。特にこういったプライベートなことは。

「そうですね、まずは一週間ほどお時間をいただきたく思います。そして、真緒さんに私からご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか」

俺はわけもわからず頷いた。うちの奥さんが何か企んでいるぞ。掃除機を片付ける初子の静かなまでの横顔を眺めながら、俺は紅茶の準備を始めるのだった。



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