独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
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セントリリィズホテルのバンケットルームは豪奢な身なりの男女でにぎわっている。この絵に描いたようなアッパークラスのパーティーを私は上京するまで目にしたことがなかった。いや、都内在住の人間だって、簡単に目にする機会はないだろう。私が付き従っている人がそういった階層の人であるというだけ。

文護院連は、会場中央で美しく着飾った女性たちに囲まれている。男前な笑顔と豊富な話題で周囲を楽しませている……といった様子に見える。

秘書役の私は、廊下に詰めているわけだけれど、同じように控えている秘書や要人警護員が多くいるため、廊下は廊下で人が多い。ソファなどもあり、ちょっとした控えの間状態だ。

ひと月この人について、すでに二度目のパーティーだ。さすが大銀行本店営業部の支店長ともなると、社交界も放っておかない、というか、平日も休日も招待される機会が多くて大変そうだ。そして、どこに行っても若く美しい文護院連は女性たちに囲まれている。

文護院連支店長は、噂以上に華やかな美貌の人だ。
整った目鼻立ち、印象的な大きな目、声は涼やかで耳に心地いい。笑うと急に幼く人懐っこく見えるので、女性の母性本能を刺激しそうだ。身長が高く、脚が長いので、私服もオーダーが多いと話していた。
そんな男性なので、とにかく女性にモテる。
このひと月で、何度女性と会食していただろう。お相手は、取引先企業の女社長、大企業のご令嬢、往年の大女優とその娘さん、エトセトラエトセトラ。これは女好きと噂を流されても仕方ないレベルだと思う。
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