独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
頬にあたるシーツの感触が違う。
それが目覚めの感覚だった。
次に全身を強い倦怠感が襲い、筋肉痛のような痛みを覚えた。うつ伏せの姿勢でそろそろと目を開ける。あ、と思った。

そうだ、私は連さんとこの部屋に泊まったのだ。そして、連さんのものになった。
素肌に直接あたるシーツも、身体に残る違和感も、すべてそれだ。

気づいてしまえば猛烈に恥ずかしくなってくる。結婚生活も三ヶ月以上になるというのに、こうしてふたりで迎える朝は初めて。愛された感触が残る身体に意識がいき、どうしても羞恥の感情から逃れられない。

そうだ。連さんは? 首を巡らせるけれど、隣は空だった。
身体を起こし、胸まで薄手の毛布を手繰り寄せ、室内を見渡した。

「連さん……」

ふと心細さで胸がいっぱいになった。どこに行ってしまったのだろう。ほんの数時間前まで激しくで重なり合っていた身体が、彼の温度を探している。本能的に不在が不安になる。

すると、隣の部屋に続くドアが開いた。
姿を見せたのは連さん。シャツにスラックスという昨日の礼服を着崩した姿だ。その手にはティーポットにティーソーサーがある。
私はほおっと息をついていた。よかった、連さんだ

「おはよう、初子。どうした?」
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