独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす～書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です～

しかし、実際深く付き合う恋人はいない様子。どうも、食事や観劇などは誘われれば予定を空けて赴くようにしているようだ。一度無理に予定を変えなくてもいいのでは、と進言したことがあるが、『女性の誘いを断ったら、恥をかかせてしまうだろう？』と返されてしまった。上流階級の男性は思考のレベルが違う……。

しかし、私はこの文護院連という人をけして馬鹿にしていない。むしろ、たったひと月で尊敬すべき人物だと感じ始めている。

要職についているのは、頭取の甥であり後継者候補だからであることは間違いない。しかし、本人はけしてその立場に胡坐をかかず、日々に真摯に仕事に取り組んでいる。
実際、彼が本店営業部支店長になってから、業績は右肩上がり。各部門の目標を見直し、達成状況を自らチェックし、担当者とは忌憚なく意見を交わし合っている。取引先にはフットワーク軽く出向き、顧客は信頼でがっちり確保、さらに新規融資をどんどん見つけてくるので、融資係も渉外係も「支店長を放っておくとこちらの仕事がなくなる」と苦笑いするくらいだ。
本店営業部の面々は彼をお飾りの支店長とは見ていない。頼りになる上司だと好いている。