独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
9.病める時も健やかなる時もですね、承知しました
「お姉ちゃん、ちょっと痩せた?」
私の髪の毛をアップスタイルにまとめながら、妹の美雪が鏡越しに私を見て言う。
「痩せたかなあ?」
「痩せてるよ。うわ、羨ましい。っていうか、もともと細いんだから勘弁して」
美雪はわざとらしく、憎しみをこめて髪の毛をぐいぐい引っ張る。痛い痛い。確かに美雪のボリュームのある身体と比べたら少々貧相だけど、そこまで目立って痩せただろうか。最近、忙しかったからそのせいかもしれない。
「美雪、上手だね」
私は鏡の中の変身した自分を見て、感嘆の声をあげた。白いドレスにアップスタイル、メイクもばっちり美雪にほどこしてもらった。
「本職ですから」
美雪は威張って言う。彼女は地元の繁盛店で美容師をしている。
今は長い巻き髪をアップにし、オレンジ色のドレスを着ているので、私と並ぶと対照的で面白い。姉妹だけど、私たちは体型も顔立ちもあまり似ていない。身長も美雪の方が少し大きい。
「っていうか、今日は私もお招きいただいちゃって嬉しいなあ。ドレスも小物もお義兄さん持ちだなんて申し訳ないよ」
「それはご招待だからいいのよ」
私はそう言って、美雪のドレスの襟を直した。
「マナーとかうるさくない?」
「大丈夫。立食形式だし、お喋りしたりするのがメインのパーティーだから」
美雪を窓辺に誘い、今まさに準備中の庭園を見せる。ホテルの中庭ではガーデンパーティーの準備が着々と進んでいる。
秋も深まった美しい日、今日は文治銀行の次期頭取決定をお祝いするパーティーだ。