独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
「こうして見ると、すごくお似合いね。連と初子さん」

真緒さんが嬉しそうに言った。真緒さんは私と連さんが書類の上の結婚であると知っているのだろうか。知らないのかもしれない。横から撫子さんが言い添えた。

「そうでしょう。兄さんたら、叔父さまがお見合い写真を持ってきたときから、初子さんに夢中なのよ」

撫子さんの口ぶりから、私たちは頭取にお見合いをセッティングされ結婚した流れになっていることが判明した。自分から誰かに話すことはなさそうだけど、この設定はよく覚えておかなければ。
お見合い設定を補強するように、連さんが言った。

「おいおい、撫子。初子の前で言わないでくれよ。恥ずかしいだろ」

本当に照れたように頭を掻いて見せるのだから、演技派だ。

「さあ、行こうか、初子」

私の腕を取って連さんは挨拶周りに出発する。

「仲睦まじい新婚夫婦、で頼むよ」

触れることで私が緊張でがちがちになってしまうことを懸念しているのだろうか。確かに接触は慣れていない。でも、お仕事なら腕を組むくらいなんのそのだ。

「……はい」

私は返事をし、そっと彼の腕に寄り添った。
正直に言えば、心臓がばくばくとものすごい音を立てていたけれど。


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