独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
パーティーが終わり、私と連さんはハイヤーで帰途についた。私たちの住むマンションまでここからはさほど遠くないけれど、客全員の手配がさているようなので素直に乗り込むことにした。

「疲れたなあ。腹が空いたよ」

連さんは後部座席のシートに背を預け、うーんと伸びをしている。私はパーティースタイルのまま、遠慮がちに座席に腰かけていた。ずっと立食だったので、この衣装になってから腰かけること自体が初めてなのだ。
ワンピースなど一式はクリーニングしてお返ししなければならないと着て帰っているけれど、やはり元の服に着替えてしまえばよかった。私のお給料以上の衣装はやはり緊張する。

「初子は空かないか? ほとんど食べてないだろう」
「ケーキをいただきました。それに準備のとき、クッキーを」
「食べたうちに入らないぞ。うーん、ラーメンが食べたいな」

連さんはそんなことを言う。お菓子や肉まんが好きなのは知っていたけれど、ラーメンも好きなのね。お坊ちゃんなのに、ジャンクなものが好きなのだから面白い。

「一度帰って着替えたら、外にラーメンを食べに行かないか。美味いところを知ってるんだ」
「はい、承知しました」

私は頷く。正直、それは助かる。お借りした服を汚さないかひやひやしているのだもの。

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