独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす～書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です～

「連さん」
「なんだ？」
「ありがとうございます」

私の御礼に連さんは、首を傾げた。タイミングがズレたので、なんに対する御礼だろうと思ったのかもしれない。それでよかった。

「お、来た来た」

店主が私たちの前に小高い山になっているラーメンのどんぶりをどんと置いた。迫力がある。

「先に麺を食べることを勧めるぞ」
「野菜だけでお腹がいっぱいになりそうな量ですね」
「だから、麺からだ。野菜が食べきれなさそうなら、俺が先に少しもらってやろう」
「はい、お願いします」

連さんといるといつも緊張している部分があった。それは上司であり、自分とは違う世界の人だから。契約上の夫であっても、私が近づいていい人ではないと思っているから。

だけど、それら全部を取っ払って、人間対人間で考えたら、私はこの人の考え方が好き。
この人の明るく温かな性格が好ましい。

きっと、私は以前より自分の顔を嫌だと思わなくなる。
連さんに褒められても、笑うことができるだろう。

この日食べたラーメンは、すごく美味しく、このふた月の食事の中で一番リラックスした時間だった。