独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす～書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です～

初子は素直に俺の要請に従い、その日から俺たちは一応同居という形になった。
当初は気安い関係づくりのため男女の仲を考えた俺だが、今はほぼ間違いなく処女であり、おそらく恋人もいたことがないであろう初子に対し、家族という関係性を求めることにした。
縁あって一緒になった妻に相応の安心と幸福を与えたい。この先、初子が離婚を望んだとしても、一緒にいた期間が寒々しい思い出だけでは申し訳ないじゃないか。

もし、初子がともにいることに喜びや安堵を覚え、この先も俺と一緒にいたいと希望してくれるなら、それがきっと一番いい。

それなりに女性とは交際してきた。一夜限りだったり、割り切った関係も含めれば、経験は多い方だろう。
しかし、心から恋をし、一緒になりたいと思った女性は今までいない。おそらく俺はあまり恋愛に熱心な人間ではないのだろう。そんな俺が、初子とは一緒にいてもいいかもしれないと思い始めている。
恋ではなく、愛でもなく、健気な存在を愛でるような些細な気持ちではある。ただ、当初のような“条件が合うから”というだけではくくれなくなってきている。

もちろん、現時点では俺が圧倒的に不利である。
初子は契約期間だけの結婚生活だと思っているし、俺とは親しくならないように苦心している様子。
このままの距離では初子に離縁されてしまう……。

などと、考えつつ俺は、この日深夜の帰宅となった。