独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
あまりある機会ではないが、今日は叔父の家で酒を飲んできたのだ。
叔父夫妻には子どもはなく、俺と撫子が子ども代わりである。父が亡くなってからは、俺も叔父夫妻を頼りにし、大学時代に母を亡くした後は、この少ない本家一族を守るために支え合ってきたつもりだ。

叔父の望みだから頭取になる願いも叶えてやりたいとは思う。
しかし、一族の一員になる恭の優秀さを叔父がもう少し真摯に見つめたら、後継はひっくり返るのではないかと、つい考えてしまう。俺はいつだって、恭には勝てない。はっきりと叔父の前では口にしないのは、叔父をがっかりさせたくないからだろう。

叔父の仕事にたいする想いを聞き、さらに間近に迫った撫子の式について少々打ち合わせて、帰途につくと、すでに日付が変わっていた。

明日が休みでよかった。朝からジムに行くつもりだったが、昼にずらしてゆっくり休もう。そんなことを思いながら靴を脱ぐ。

室内の電気を付ける前に奧から漏れる光を感じた。初子の部屋のリビングだろう。まだ起きているのだろうか。
覗くと、電気は煌々とつき、パソコンがスリープ状態になっている。
当の初子はソファに横になっていた。チェックのパジャマ姿で、のびのびと手足を延ばして。健やかな寝息が聞こえる。
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