独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
「これは……」

おそらく、パソコンで動画やドラマでも見ていたのだろう。そのまま寝落ちだろうか。案外年相応なところがある。
うん、やはり同居にして正解だ。こんなふうに隙だらけの初子が見られるとは。いつもびしっと軍人のように背筋を伸ばし、四角四面の初子が、口をうっすら開け、子どものような顔で眠っているのは、ことさら愛らしい。

「初子、起きなさい。風邪を引くよ」

優しく声をかけてみる。よほど疲れているのか初子は起きない。致し方なし。俺は手を伸ばし、左肩をぽんぽんとたたく。

「初子、ほら起きて」
「んー」

寝ぼけた声。可愛いな。
しかしまずいことが起こった。身動ぎをした初子のパジャマのボタンがはずれる。アンダーのキャミソールと胸元が襟からこぼれ見えた。
華奢だと思っていたが、胸はそれなりにボリュームがあるな……いやそんなところをじろじろ見てはまずいだろう。

「初子、初子。起きなさい」
「んうー」

むにゃむにゃ何か口の中で言っている。これは可愛い。さらに動くので胸元が露わになる。カップ付きのキャミソールだろうか、中で胸が波打つのがわかって……。
いよいよ本当にまずい。初子、起きてくれ、頼む。

俺の願いが通じたのか、初子がぱちっと目を開けた。覗き込んでいる俺の顔を見て、初子の目がみるみる大きく見開かれる。

「れ、ん、さん……」
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