独占欲に目覚めた次期頭取は契約妻を愛し尽くす~書類上は夫婦ですが、この溺愛は想定外です~
俺は若干苛立ち、初子の黒い瞳を見つめる。視線を絡め、熱意を込めて尋ねる。
「俺が嫌か? 俺は初子を好ましく思っている」
初子がぎゅっと唇を噛みしめた。一瞬泣きそうに顔が歪み、それから初子は吐き出すように強い口調で言った。
「一時の契約結婚という気持ちは変わりません。ですが……! 旦那様をお慰めするのも、妻の役目と心得ます。ふ、触れて……くださって構いません」
語尾が震えていた。
見開かれた目は決意こそあるものの、怯えが見え、俺はようやく無体なことをしている自分に気づいた。
罪悪感と、がっかりした気持ちがないまぜになる。
「気がそがれたよ。……いや、悪いことをした」
初子の上から退き、ベッドから立ちあがった。起き上がった初子を見下ろし、言った。
「すまなかった。でも、初子、夫を慰めるのが妻、というくだりは感心しない。夫婦に上下はない。良いも悪いも気持ちは伝えるべきだ」
「連さん……も、申し訳ありません」
初子が何に対して謝っているかはわからない。俺の苦言に対するものなのか、俺の欲求に応えられないためのものなのか。
「ただ、俺は初子と結婚生活を楽しく続けたい。その気持ちは変わっていない。当初の目標に合わせて、キスの許可をもらえるところから頑張るつもりだ。本当にすまなかった、おやすみ」
初子を残し、寝室のドアを閉める。リビングと内扉を抜け、自分の寝室へ。
ここまで完膚なきまでに女性に振られるのは初めてかもしれない。初子は俺のことを生理的に拒否しているわけではない。処女を理由に、肉体的接触を拒んでいる様子でもなさそうである。
何か俺と釣り合わないとでも言いたげな様子が気になる。
どちらにしろ、こんなことをすべきではなかった。暴走しかけてしまうなんて。
「妻と仲良くしたいだけなのになあ」
俺は自室のベッドに腰かけ、低く呻いた。
「俺が嫌か? 俺は初子を好ましく思っている」
初子がぎゅっと唇を噛みしめた。一瞬泣きそうに顔が歪み、それから初子は吐き出すように強い口調で言った。
「一時の契約結婚という気持ちは変わりません。ですが……! 旦那様をお慰めするのも、妻の役目と心得ます。ふ、触れて……くださって構いません」
語尾が震えていた。
見開かれた目は決意こそあるものの、怯えが見え、俺はようやく無体なことをしている自分に気づいた。
罪悪感と、がっかりした気持ちがないまぜになる。
「気がそがれたよ。……いや、悪いことをした」
初子の上から退き、ベッドから立ちあがった。起き上がった初子を見下ろし、言った。
「すまなかった。でも、初子、夫を慰めるのが妻、というくだりは感心しない。夫婦に上下はない。良いも悪いも気持ちは伝えるべきだ」
「連さん……も、申し訳ありません」
初子が何に対して謝っているかはわからない。俺の苦言に対するものなのか、俺の欲求に応えられないためのものなのか。
「ただ、俺は初子と結婚生活を楽しく続けたい。その気持ちは変わっていない。当初の目標に合わせて、キスの許可をもらえるところから頑張るつもりだ。本当にすまなかった、おやすみ」
初子を残し、寝室のドアを閉める。リビングと内扉を抜け、自分の寝室へ。
ここまで完膚なきまでに女性に振られるのは初めてかもしれない。初子は俺のことを生理的に拒否しているわけではない。処女を理由に、肉体的接触を拒んでいる様子でもなさそうである。
何か俺と釣り合わないとでも言いたげな様子が気になる。
どちらにしろ、こんなことをすべきではなかった。暴走しかけてしまうなんて。
「妻と仲良くしたいだけなのになあ」
俺は自室のベッドに腰かけ、低く呻いた。