『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
「よっし! 準備が整ったな、出発だ!」
先頭に立つ彼の掛け声で荷駄隊と護衛のジャマル隊が同時に動き出した。
荷駄の数は三台、日用品や保存のきく食料が主で、若干の金品も含まれている。
それは貴族に売るそうで、貴重な収入源と言っていた。
「なんだか信じられない」
王都の中でその状態なら、それが拡大していくと考えると背筋が凍りそうな感じがする。
私は右翼について、最後尾は一番鼻が利く人が配置につく、ファルスは先頭で全体の指揮を担当した。
「順調ね」
両翼にそれぞれ三騎で六騎、先頭に二騎、後方に二騎の布陣で移動していくも、途中までなにもなく進んでいく。
出発前に言われていた、今まで何も起こったことがないというのは本当なのかもしれない。
このまま何事もなく目的地まで到達できたら嬉しい、そんな気持ちをもった瞬間――後方の見張りの人が鐘を鳴らした。
「⁉ 敵?」
一斉に慌ただしくなる隊に、荷駄も一度止まって様子を見始めた。
「どうかしたのか⁉」
ゼイニと呼ばれていた男性が顔を見せると、ファルスが近くに寄っていく。
「敵襲です! とにかく隠れてください、絶対に身をだしてはなりません!」
ファルスがサーベルを抜くと、ジャマル隊の各々も抜いていく。
私も緊張で手が震えながらも、サーベルを構えて警戒していった。
「来る‼」
ぞわっとする気配が私を包む、きっとソマリの能力のおかげかもしれない。
奥の砂丘から人影が現れると同時に、矢が飛んできた。
「弓⁉」
複数の矢が私たちめがけて飛んでくるのを回避しると、敵は剣を抜いて突撃してくる。
左翼側からも声が聞こえてくるので、挟み撃ちの形だろう。
「敵影十! 来ました!」
仲間から情報が伝わり、前と後ろのジャマル兵も混ざって応戦しはじめた。
「いくわよソマリ!」
『えぇ、久しぶりね……でも、嫌な予感がするわ気を付けてレイナ』
やめてよ、嫌な予感なんて言葉を使うと本当にそうなってしまいそうになる。
「相手はただの賊だ! うろたえるな、しっかりと戦えば問題ない!」
見た目はボロボロの服装に、馬もジャマルも無い。
荷駄に目がくらんで襲ってきた盗賊団なら、なんとかやれそうな気がしてくる。
「ひゃはははは!」
髭を生やした男が私めがけて斬りかかってくるのをサーベルで受け止める。
「⁉ う、うそ……」
しかし、私が想像していた以上に相手の攻撃が重く、軽いサーベルでは圧されてしまう。
そのとき、体中に光の玉が現れると、その攻撃を上手にいなして弾いてくれた。
「ありがとうソマリ」
『気を付けて、この人たちかなりの手練れだよ』
ちらっと周りを確認してみると、私同様に全員が苦戦している。
ファルスをはじめ全員ある程度鍛えられた兵とジャマルからの攻撃に対し対等以上の戦闘を繰り広げていた。
これってどういうこと? この世界の盗賊はみんなこれぐらい強いってことなの? それなら、正規軍とか……まって、正規軍?
「まさか」
「ひゃははははっ! こいつはすげぇ、どうやら俺様が当たりくじのようだな」
当たりくじ、なんとなく全容がわかりだしてきた。
しかし、現状をなんとかしない限りはどうにもできない、だから私は深呼吸を一度行い、再度構えなおして相手を見据える。
「ぷふぁふぁふぁふぁ、いいぞ! その柔らかそうな肉、俺様がミンチにしてくれる!」
大振りでありながら、素早さもある一撃を私はジャマルを操り回避すると、二撃目が向かってくる。
それをサーベルで受け止め、弾かれそうになるのをこらえつつ次の出方を見守っていく。
「ほらほらほら、どうした、守ってばかりだと死ぬぞ!」
「お願い、やれる?」
小さな声で私のジャマルに声をかけた。
頷くような仕草を確認すると、タンっと横腹を軽く蹴ってみる。
バフッ――! ジャマルの前足が砂をつかみ相手に向かって放つと、一瞬のスキが生じた。
「ぶふぁっ⁉ な、なにしやが……!」
相手の視界が塞がるタイミングで左肩から胸に向かってサーベルを振り下ろした。
ザックっと、肉を斬る感覚が全身に伝わってくる。
だけど、私は覚悟を決めていた、迷わない……だから、進むしかないの!
「――ッ」
声にならないうめき声を発しながら相手は倒れていく。
体から流れた液体が、砂に吸い込まれていった。
「次!」
「ぐぁぁぁ‼」
ジャマル隊の一人がやられてしまう。
相手はそのまま荷駄に向かっていく、このままだと誰かまたやられてしまう可能性があった。
私はジャマルを操って、相手を追いかけていく。
「し、しまった! ゼイニ様!」
ひょこっと、なぜか顔を覗かせている彼に向かって盗賊が向かっていく。
「ヒッ⁉ く、来るな!」
お願い、間に合って!
先頭に立つ彼の掛け声で荷駄隊と護衛のジャマル隊が同時に動き出した。
荷駄の数は三台、日用品や保存のきく食料が主で、若干の金品も含まれている。
それは貴族に売るそうで、貴重な収入源と言っていた。
「なんだか信じられない」
王都の中でその状態なら、それが拡大していくと考えると背筋が凍りそうな感じがする。
私は右翼について、最後尾は一番鼻が利く人が配置につく、ファルスは先頭で全体の指揮を担当した。
「順調ね」
両翼にそれぞれ三騎で六騎、先頭に二騎、後方に二騎の布陣で移動していくも、途中までなにもなく進んでいく。
出発前に言われていた、今まで何も起こったことがないというのは本当なのかもしれない。
このまま何事もなく目的地まで到達できたら嬉しい、そんな気持ちをもった瞬間――後方の見張りの人が鐘を鳴らした。
「⁉ 敵?」
一斉に慌ただしくなる隊に、荷駄も一度止まって様子を見始めた。
「どうかしたのか⁉」
ゼイニと呼ばれていた男性が顔を見せると、ファルスが近くに寄っていく。
「敵襲です! とにかく隠れてください、絶対に身をだしてはなりません!」
ファルスがサーベルを抜くと、ジャマル隊の各々も抜いていく。
私も緊張で手が震えながらも、サーベルを構えて警戒していった。
「来る‼」
ぞわっとする気配が私を包む、きっとソマリの能力のおかげかもしれない。
奥の砂丘から人影が現れると同時に、矢が飛んできた。
「弓⁉」
複数の矢が私たちめがけて飛んでくるのを回避しると、敵は剣を抜いて突撃してくる。
左翼側からも声が聞こえてくるので、挟み撃ちの形だろう。
「敵影十! 来ました!」
仲間から情報が伝わり、前と後ろのジャマル兵も混ざって応戦しはじめた。
「いくわよソマリ!」
『えぇ、久しぶりね……でも、嫌な予感がするわ気を付けてレイナ』
やめてよ、嫌な予感なんて言葉を使うと本当にそうなってしまいそうになる。
「相手はただの賊だ! うろたえるな、しっかりと戦えば問題ない!」
見た目はボロボロの服装に、馬もジャマルも無い。
荷駄に目がくらんで襲ってきた盗賊団なら、なんとかやれそうな気がしてくる。
「ひゃはははは!」
髭を生やした男が私めがけて斬りかかってくるのをサーベルで受け止める。
「⁉ う、うそ……」
しかし、私が想像していた以上に相手の攻撃が重く、軽いサーベルでは圧されてしまう。
そのとき、体中に光の玉が現れると、その攻撃を上手にいなして弾いてくれた。
「ありがとうソマリ」
『気を付けて、この人たちかなりの手練れだよ』
ちらっと周りを確認してみると、私同様に全員が苦戦している。
ファルスをはじめ全員ある程度鍛えられた兵とジャマルからの攻撃に対し対等以上の戦闘を繰り広げていた。
これってどういうこと? この世界の盗賊はみんなこれぐらい強いってことなの? それなら、正規軍とか……まって、正規軍?
「まさか」
「ひゃははははっ! こいつはすげぇ、どうやら俺様が当たりくじのようだな」
当たりくじ、なんとなく全容がわかりだしてきた。
しかし、現状をなんとかしない限りはどうにもできない、だから私は深呼吸を一度行い、再度構えなおして相手を見据える。
「ぷふぁふぁふぁふぁ、いいぞ! その柔らかそうな肉、俺様がミンチにしてくれる!」
大振りでありながら、素早さもある一撃を私はジャマルを操り回避すると、二撃目が向かってくる。
それをサーベルで受け止め、弾かれそうになるのをこらえつつ次の出方を見守っていく。
「ほらほらほら、どうした、守ってばかりだと死ぬぞ!」
「お願い、やれる?」
小さな声で私のジャマルに声をかけた。
頷くような仕草を確認すると、タンっと横腹を軽く蹴ってみる。
バフッ――! ジャマルの前足が砂をつかみ相手に向かって放つと、一瞬のスキが生じた。
「ぶふぁっ⁉ な、なにしやが……!」
相手の視界が塞がるタイミングで左肩から胸に向かってサーベルを振り下ろした。
ザックっと、肉を斬る感覚が全身に伝わってくる。
だけど、私は覚悟を決めていた、迷わない……だから、進むしかないの!
「――ッ」
声にならないうめき声を発しながら相手は倒れていく。
体から流れた液体が、砂に吸い込まれていった。
「次!」
「ぐぁぁぁ‼」
ジャマル隊の一人がやられてしまう。
相手はそのまま荷駄に向かっていく、このままだと誰かまたやられてしまう可能性があった。
私はジャマルを操って、相手を追いかけていく。
「し、しまった! ゼイニ様!」
ひょこっと、なぜか顔を覗かせている彼に向かって盗賊が向かっていく。
「ヒッ⁉ く、来るな!」
お願い、間に合って!