『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
イルルヤンカシュ討伐
それからの動きは早かった。
普段やる気のないラバルナが的確に指示を行い、複数での編隊で近隣の村々へ報せを行い私たちの村へと合流するように指示をだしていく。
「おぉ、それならさっそく準備に移ります。これ以上アヤツの恐怖に怯えて過ごすなどごめんです」
快く受けてくれる村もあれば、頑なに動かない村もあり、全部が集まることはなくとも予想以上に人が集まり出した。
オアシスだけでは賄えないほどの人が集まると、水源の確保も今後視野に入れていかなければならない。
「おっし! 順調だな、こっちもなんとか間に合わせる」
人口が増えることと同時に、戦力になる人たちも急激に増えていく。
元々のジャマル隊が五十人程だったのが今は百を超えており、立派な軍隊と呼べるまでになった。
その訓練から装備品を整えるのも苦労するけれど、敵を考えると悠長なことは言ってられない。
「今は苦しいかもしれない、だが、この戦いに勝たなければ砂漠に未来はない」
ラバルナが苦しい言葉を漏らしてしまう。
それだけ状況が厳しいのだろう、今後のことも考えてオアシス間で水のやり取りが可能なシステムなどを考えておく必要もありそうだが、今は目の前のことに集中しなければならい。
準備は着々と進められていくも、私たちと合流に反対した村が一つ消えた報せを受けたのは、その数日後だった。
「これ以上は待てない、もう少しで周囲の村が完全に無くなる。そうなれば次は我々の番ですぞ」
ファルスさんが嫌な汗を流しつつ、進言してくる。
準備は八割完成しているが、おそらく間に合わないだろう、だから現状のやれる範囲で行うしかない。
「わかった。ならば鐘を鳴らせ!」
ガンガンっと鐘の音が村中に響き渡る。
それを聞いた兵が一か所に集まり、ラバルナの言葉を待っていた。
「いよいよ出撃のときはきた! 敵はあまりにも凶悪で得体の知れない存在だが、我々の剣は刺さる! 自らの切っ先を心臓に突き刺せ、今こそそなた達が伝説となる番である、良いか、これはこの世界で誰も成し遂げなかった悲願であり、神への挑戦でもある。我らが力を砂に込め立ち上がれ! いざ行かん、その背に風を受け進め、迷うことなく全力を尽くすのだ!!」
「「「「オオオオオオオッ!!」」」」
いくつもの声が村中を包む、私も旗を掲げた。
ゼイニが作ってくれた私の旗、聖女ソマリをモチーフに砂漠に咲くサボテンの花を散らした旗を……。
「皆さん、ありがとうございます。死地へ誘う私の言葉を信じ共に戦っていただけることを嬉しく思います。家族や恋人、友人の方々を不安にさせることにお詫びを申し上げます。だけど、このまま放っておくと更に多くの人々が亡くなります。そして、最後には本当に無となる砂漠が待っております。この厳しい世界で皆さんは輝いております。一人一人がその輝きを失うわけなにはいきません! だから、お願いします。私たちと共に戦ってください、必ず、必ず! この砂の世界に光を灯すと誓います!!」
一瞬の静寂が過ぎると、次第に増していく人々の声。
ラバルナが私に合図を送ってくれる。 剣を抜き、空へ掲げる。
バタバタと旗が動き、風が駆け抜けていく、私はその風に未来を見つめた。
『やだ、ちょっとカッコよすぎない? 私はもっと泥臭かったけどね』
「そう? でも、ほら、今のあなた凄く素敵よ」
旗に描かれた少女は優しく、そして強さを秘めている。
ソマリによれば、彼女の時代には竜は暴れることはなく、たまに行方不明者の噂は聞いていたが、ここまで活発でなくひっそりと伝説が生きている状態だった。
やはり、教王国の人たち、何をやったの?
そこまでして、自らの手を汚したくないのだろうか? 本当に腐っている。
上辺だけの存在が貪っているなんて許せない、だからお願い、私がこっちの世界に来たのは彼女の導き以外になにかあるのかもしれない。
「おい! 準備万端だぜ、一輌間に合わなかったが、十分だろう!」
「ありがとうゼイニ、助かったわ」
私がお礼を述べると、視線をずらしてブツブツと何かしゃべっている。
「べ、別にお前のためにやったわけじゃねぇし、こっちだって商売が……」
ふふ、素直なんだか不器用なんだか、好意を向けられるのに慣れていなだけかもしれない。
自分のジャマルに乗ると、次々に準備が整いだした兵士が隊列に加わる。
「先行部隊! 準備をしていろ、続いて我らも出る」
ファルスさんたちが先行部隊として、罠と敵をおびき寄せる危険な任務に就いてくれた。
彼らほどの精鋭でなければ、きっと上手くいくとこはないだろう。
「ご武運を」
「レイナ様も王も、どうかご無事で」
ジャマルを操り、走り出していく。
きっと夜には敵が私たちの元へと向かいだすだろう、うまく誘導できたとしても勝てる確率はそれほど高くない。
でも、やるしかない。これは未来を賭けた戦いであり、私たちの背中には多くの人たちの命があるのだから。
「月部隊動くぞ、遅れたら死ぬと思え!!」
ラバルナが最初に動きした。
月、私が教えた言葉でルナは元居た世界で【月】を意味するって言うと、気に入ってくれたようだ。
もちろん、元居た世界なんて言っても信じてくれないだろうから、そこは昔読んだ本でなんて嘘を言ったけれどね。
「レイナ隊、続きます」
私たちも後ろをついていく、ジャマルの頭を撫でると気持ちよさそうに走り出していく。
彼女の名前を借りた部隊が動き出した。
普段やる気のないラバルナが的確に指示を行い、複数での編隊で近隣の村々へ報せを行い私たちの村へと合流するように指示をだしていく。
「おぉ、それならさっそく準備に移ります。これ以上アヤツの恐怖に怯えて過ごすなどごめんです」
快く受けてくれる村もあれば、頑なに動かない村もあり、全部が集まることはなくとも予想以上に人が集まり出した。
オアシスだけでは賄えないほどの人が集まると、水源の確保も今後視野に入れていかなければならない。
「おっし! 順調だな、こっちもなんとか間に合わせる」
人口が増えることと同時に、戦力になる人たちも急激に増えていく。
元々のジャマル隊が五十人程だったのが今は百を超えており、立派な軍隊と呼べるまでになった。
その訓練から装備品を整えるのも苦労するけれど、敵を考えると悠長なことは言ってられない。
「今は苦しいかもしれない、だが、この戦いに勝たなければ砂漠に未来はない」
ラバルナが苦しい言葉を漏らしてしまう。
それだけ状況が厳しいのだろう、今後のことも考えてオアシス間で水のやり取りが可能なシステムなどを考えておく必要もありそうだが、今は目の前のことに集中しなければならい。
準備は着々と進められていくも、私たちと合流に反対した村が一つ消えた報せを受けたのは、その数日後だった。
「これ以上は待てない、もう少しで周囲の村が完全に無くなる。そうなれば次は我々の番ですぞ」
ファルスさんが嫌な汗を流しつつ、進言してくる。
準備は八割完成しているが、おそらく間に合わないだろう、だから現状のやれる範囲で行うしかない。
「わかった。ならば鐘を鳴らせ!」
ガンガンっと鐘の音が村中に響き渡る。
それを聞いた兵が一か所に集まり、ラバルナの言葉を待っていた。
「いよいよ出撃のときはきた! 敵はあまりにも凶悪で得体の知れない存在だが、我々の剣は刺さる! 自らの切っ先を心臓に突き刺せ、今こそそなた達が伝説となる番である、良いか、これはこの世界で誰も成し遂げなかった悲願であり、神への挑戦でもある。我らが力を砂に込め立ち上がれ! いざ行かん、その背に風を受け進め、迷うことなく全力を尽くすのだ!!」
「「「「オオオオオオオッ!!」」」」
いくつもの声が村中を包む、私も旗を掲げた。
ゼイニが作ってくれた私の旗、聖女ソマリをモチーフに砂漠に咲くサボテンの花を散らした旗を……。
「皆さん、ありがとうございます。死地へ誘う私の言葉を信じ共に戦っていただけることを嬉しく思います。家族や恋人、友人の方々を不安にさせることにお詫びを申し上げます。だけど、このまま放っておくと更に多くの人々が亡くなります。そして、最後には本当に無となる砂漠が待っております。この厳しい世界で皆さんは輝いております。一人一人がその輝きを失うわけなにはいきません! だから、お願いします。私たちと共に戦ってください、必ず、必ず! この砂の世界に光を灯すと誓います!!」
一瞬の静寂が過ぎると、次第に増していく人々の声。
ラバルナが私に合図を送ってくれる。 剣を抜き、空へ掲げる。
バタバタと旗が動き、風が駆け抜けていく、私はその風に未来を見つめた。
『やだ、ちょっとカッコよすぎない? 私はもっと泥臭かったけどね』
「そう? でも、ほら、今のあなた凄く素敵よ」
旗に描かれた少女は優しく、そして強さを秘めている。
ソマリによれば、彼女の時代には竜は暴れることはなく、たまに行方不明者の噂は聞いていたが、ここまで活発でなくひっそりと伝説が生きている状態だった。
やはり、教王国の人たち、何をやったの?
そこまでして、自らの手を汚したくないのだろうか? 本当に腐っている。
上辺だけの存在が貪っているなんて許せない、だからお願い、私がこっちの世界に来たのは彼女の導き以外になにかあるのかもしれない。
「おい! 準備万端だぜ、一輌間に合わなかったが、十分だろう!」
「ありがとうゼイニ、助かったわ」
私がお礼を述べると、視線をずらしてブツブツと何かしゃべっている。
「べ、別にお前のためにやったわけじゃねぇし、こっちだって商売が……」
ふふ、素直なんだか不器用なんだか、好意を向けられるのに慣れていなだけかもしれない。
自分のジャマルに乗ると、次々に準備が整いだした兵士が隊列に加わる。
「先行部隊! 準備をしていろ、続いて我らも出る」
ファルスさんたちが先行部隊として、罠と敵をおびき寄せる危険な任務に就いてくれた。
彼らほどの精鋭でなければ、きっと上手くいくとこはないだろう。
「ご武運を」
「レイナ様も王も、どうかご無事で」
ジャマルを操り、走り出していく。
きっと夜には敵が私たちの元へと向かいだすだろう、うまく誘導できたとしても勝てる確率はそれほど高くない。
でも、やるしかない。これは未来を賭けた戦いであり、私たちの背中には多くの人たちの命があるのだから。
「月部隊動くぞ、遅れたら死ぬと思え!!」
ラバルナが最初に動きした。
月、私が教えた言葉でルナは元居た世界で【月】を意味するって言うと、気に入ってくれたようだ。
もちろん、元居た世界なんて言っても信じてくれないだろうから、そこは昔読んだ本でなんて嘘を言ったけれどね。
「レイナ隊、続きます」
私たちも後ろをついていく、ジャマルの頭を撫でると気持ちよさそうに走り出していく。
彼女の名前を借りた部隊が動き出した。