『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
「これが? イルルヤンカシュの鱗なのか?」
すっかりお祭り騒ぎも落ち着き、砂漠の竜と恐れられた存在の弔いも済んだときにゼイニさんが私たちに見せたいものがあると言ってラバルナの部屋に集まった。
差し出されたのは、女性の胸当てでギラギラと輝く防具はどこまでも綺麗で傷一つなかった。
「そうだ、これがイルルヤンカシュの鱗を研磨して形を整えたんだが、酷いヒドイ、何度も研磨の歯が折れてしまったがここまで整えられたんだ」
私に差し出してくる。
「わ、私に?」
「あ、あぁ……そ、その男性の用は大きくてまだ加工できないから、とりあえず女性用しかできなかったんだよ」
あの巨大な生物の鱗、矢を通さず剣を弾く強靭な鱗のプレートなんて……。
「嬉しい、ありがとうございますゼイニさん」
ボッと赤くなる。 ずずっと後ろに下がっていくけれど、私なにかしたのだろうか?
「べ、べつにレイナのために作ったんじゃないからな! あくまで、あくまで現在できる加工がそこまでなんだからな!」
いや、そこまで言わなくとも理解しているのだけど、複雑な人だ。
でも素直に嬉しい、プレートを胸に当ててみるとゼイニさんが再度寄ってきて背中にまわると長さを整えてくれる。
カチンと音がなり、しっかり固定された感覚が伝わる。
「凄い、軽いのね」
「あぁ、驚くほどにね。それに強度は文字通り化け物だ、これが兵士に行き渡れば凄いことになるぞ」
「ゼイニ、それはどれぐらいの人数分確保できそうだ?」
「わからない、ただ、まだまだあるとだけは言えるね」
それを聞いたラバルナの瞳が大きくなっていくのがわかる。
確かに、この防具が増えればそれだけでかなりの戦力増強につながるのは目に見えていた。
今後、相手がどんな動きを見せてくるのかわからない以上、なにか手を打っておく必要があるに決まっている。
「でも、驚いたわね。続々と集まってくるじゃない。どうするのコレ?」
「まぁ、戦力が増えるのは嬉しいんだが、急に来られてもな?」
先ほどまでの顔とは違い、苦笑を浮かべる彼は外で引き留めているファルスさんたちの声が近づいてくるのが気がかりでしかたがない。
「失礼いたします!」
ついに押し切られてしまったのか、ゾロゾロと日に焼けた男性数名が家に入り込んでくる。
そして、ざっと膝をついて頭を下げて挨拶を始めた。
「先日から申し上げておりますが、どうか、我が村も加えていただきたく……」
そう、彼らは先日のイルルヤンカシュ討伐を聞きつけて遠方から訪れている村長たちだった。
今まで外の世界に無関心を貫いてきた教王国が最近になって動きが活発化しており、危機感をもっていたところに幻の怪物を討伐した噂が舞い込み保護と保身のためにこうやって村に加わりたいと申し出てくるところが後を絶たない。
「すまないが、今のオアシスの現状ではこれ以上の拡大は不可能だ。すまない」
「し、しかし! 教王国の脅威は増すばかり、いや王都から離れれば離れるほど危険を感じております。どうか、どうか何卒……」
全員頭を下げて懇願されるが、無理なものは無理だろう。
だけど、今後のことを考えると無下にはできのも事実だった。
「ねぇ、どこか大きなオアシスは無いの? それこそ、一帯の村を集めても大丈夫な場所って?」
ゼイニさんとラバルナが顔を見合わせて嫌な感じの気配を若干発した。
ソマリの力なのか、そういったことには今まで以上に敏感になり、表情は変わっていないけれど内側から滲み出るナニかを若干では感じ取れるようになっている。
「いや、無いな」
すっぱり言われてしまい、私は外に出ることにする。
この場にいても埒が明かないと判断したためだ。
そして、外で疲れた様子のファルスさんたちに話しかけることにした。
「ねぇ、この近くで大きなオアシスってあるかしら?」
「お、大きなオアシスですか? それがどうかしたので?」
私はただの好奇心だと伝えると、少し困惑した表情になり仲間に視線で確認を取っている。
だけど、彼は小さな声で教えてくれた。
「少し南にイフリートの泉がございます。昔、そこは魔人が支配する場所だったそうですが、緑も多く大きなオアシスがあったとされております。しかし、魔人が討伐されたとき巨大な爆発が起き辺りは焼け野原と化してしまい、次第に砂漠にのまれていきましたが爆発の跡地に水が湧き出て巨大なオアシスとなっております」
「そうなの? なんでそんな場所があるのに、みんなこんな小さなオアシスを頼りにしているのかしら?」
「レイナ様は本当にご存じでないのですか? あの場所は教王国の管理地でございまして軍隊によって警護されておりますぞ」
なるほど、それであの二人は黙っていたのか……。
でも、そのオアシスを手に入れられれば一気に問題は解決するように思える。
私は夜を待って、再度ラバルナの家を訪れるとお酒を嗜んでいる最中だった。
「ごめんなさいね、急に押しかけてしまって」
「ん? いや、大丈夫だ。どうしたんだ? 酒でも飲みたくなったのか?」
コトリと差し出されるが、口をつけることなく話を始める。
「聞いたわ、イフリートの泉があるそうね」
その言葉を聞いたとき、表情を曇らせる。
「誰から聞いたんだ? まぁ、でも砂漠で生活していて泉の存在を知らないのはレイナぐらいか……」
「教王国の管理下だってのはわかったけれど、今までもずっとそうなの?」
私の質問に答えるためか、お酒を床に置いてこちらを真っすぐ向いて淡々と話し出した。
すっかりお祭り騒ぎも落ち着き、砂漠の竜と恐れられた存在の弔いも済んだときにゼイニさんが私たちに見せたいものがあると言ってラバルナの部屋に集まった。
差し出されたのは、女性の胸当てでギラギラと輝く防具はどこまでも綺麗で傷一つなかった。
「そうだ、これがイルルヤンカシュの鱗を研磨して形を整えたんだが、酷いヒドイ、何度も研磨の歯が折れてしまったがここまで整えられたんだ」
私に差し出してくる。
「わ、私に?」
「あ、あぁ……そ、その男性の用は大きくてまだ加工できないから、とりあえず女性用しかできなかったんだよ」
あの巨大な生物の鱗、矢を通さず剣を弾く強靭な鱗のプレートなんて……。
「嬉しい、ありがとうございますゼイニさん」
ボッと赤くなる。 ずずっと後ろに下がっていくけれど、私なにかしたのだろうか?
「べ、べつにレイナのために作ったんじゃないからな! あくまで、あくまで現在できる加工がそこまでなんだからな!」
いや、そこまで言わなくとも理解しているのだけど、複雑な人だ。
でも素直に嬉しい、プレートを胸に当ててみるとゼイニさんが再度寄ってきて背中にまわると長さを整えてくれる。
カチンと音がなり、しっかり固定された感覚が伝わる。
「凄い、軽いのね」
「あぁ、驚くほどにね。それに強度は文字通り化け物だ、これが兵士に行き渡れば凄いことになるぞ」
「ゼイニ、それはどれぐらいの人数分確保できそうだ?」
「わからない、ただ、まだまだあるとだけは言えるね」
それを聞いたラバルナの瞳が大きくなっていくのがわかる。
確かに、この防具が増えればそれだけでかなりの戦力増強につながるのは目に見えていた。
今後、相手がどんな動きを見せてくるのかわからない以上、なにか手を打っておく必要があるに決まっている。
「でも、驚いたわね。続々と集まってくるじゃない。どうするのコレ?」
「まぁ、戦力が増えるのは嬉しいんだが、急に来られてもな?」
先ほどまでの顔とは違い、苦笑を浮かべる彼は外で引き留めているファルスさんたちの声が近づいてくるのが気がかりでしかたがない。
「失礼いたします!」
ついに押し切られてしまったのか、ゾロゾロと日に焼けた男性数名が家に入り込んでくる。
そして、ざっと膝をついて頭を下げて挨拶を始めた。
「先日から申し上げておりますが、どうか、我が村も加えていただきたく……」
そう、彼らは先日のイルルヤンカシュ討伐を聞きつけて遠方から訪れている村長たちだった。
今まで外の世界に無関心を貫いてきた教王国が最近になって動きが活発化しており、危機感をもっていたところに幻の怪物を討伐した噂が舞い込み保護と保身のためにこうやって村に加わりたいと申し出てくるところが後を絶たない。
「すまないが、今のオアシスの現状ではこれ以上の拡大は不可能だ。すまない」
「し、しかし! 教王国の脅威は増すばかり、いや王都から離れれば離れるほど危険を感じております。どうか、どうか何卒……」
全員頭を下げて懇願されるが、無理なものは無理だろう。
だけど、今後のことを考えると無下にはできのも事実だった。
「ねぇ、どこか大きなオアシスは無いの? それこそ、一帯の村を集めても大丈夫な場所って?」
ゼイニさんとラバルナが顔を見合わせて嫌な感じの気配を若干発した。
ソマリの力なのか、そういったことには今まで以上に敏感になり、表情は変わっていないけれど内側から滲み出るナニかを若干では感じ取れるようになっている。
「いや、無いな」
すっぱり言われてしまい、私は外に出ることにする。
この場にいても埒が明かないと判断したためだ。
そして、外で疲れた様子のファルスさんたちに話しかけることにした。
「ねぇ、この近くで大きなオアシスってあるかしら?」
「お、大きなオアシスですか? それがどうかしたので?」
私はただの好奇心だと伝えると、少し困惑した表情になり仲間に視線で確認を取っている。
だけど、彼は小さな声で教えてくれた。
「少し南にイフリートの泉がございます。昔、そこは魔人が支配する場所だったそうですが、緑も多く大きなオアシスがあったとされております。しかし、魔人が討伐されたとき巨大な爆発が起き辺りは焼け野原と化してしまい、次第に砂漠にのまれていきましたが爆発の跡地に水が湧き出て巨大なオアシスとなっております」
「そうなの? なんでそんな場所があるのに、みんなこんな小さなオアシスを頼りにしているのかしら?」
「レイナ様は本当にご存じでないのですか? あの場所は教王国の管理地でございまして軍隊によって警護されておりますぞ」
なるほど、それであの二人は黙っていたのか……。
でも、そのオアシスを手に入れられれば一気に問題は解決するように思える。
私は夜を待って、再度ラバルナの家を訪れるとお酒を嗜んでいる最中だった。
「ごめんなさいね、急に押しかけてしまって」
「ん? いや、大丈夫だ。どうしたんだ? 酒でも飲みたくなったのか?」
コトリと差し出されるが、口をつけることなく話を始める。
「聞いたわ、イフリートの泉があるそうね」
その言葉を聞いたとき、表情を曇らせる。
「誰から聞いたんだ? まぁ、でも砂漠で生活していて泉の存在を知らないのはレイナぐらいか……」
「教王国の管理下だってのはわかったけれど、今までもずっとそうなの?」
私の質問に答えるためか、お酒を床に置いてこちらを真っすぐ向いて淡々と話し出した。