『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
空から降り注ぐ雫の勢いがなくなっていく。
日差しが私たちを照らし始めると同時に、戦場から勝どきが聞こえてくる。
「勝ったか」
「えぇ、なんとかね」
「圧勝に見えたが?」
ゼイニさんも嬉しいのか、声が軽い感じがした。
私が見つめる先には、散り散りに逃げていく教王国兵たちと多くの亡骸に負傷兵たちの姿。
追い討ちはダメだと伝えているので、それに従ってくれている兵たちに感謝しなければならない。
「負傷兵の手当てを急がせて、それに捕虜の扱いも丁寧にね」
伝令係の兵がジャマルに乗り、伝えに向かう。
ゼイニさんが率いる荷駄に次々に運ばれていく負傷者たち、敵味方関係なく丁寧に傷を癒していく。
「おいおい、それにしてもラバルナはどうしているんだ? こっちは終わったいうのに」
「そうね、思いのほか苦戦しているかもしれないわ、ゼイニさん助けに行く?」
問いかけに対し大げさに首を振って否定した。
一応物見の兵は放っているので、待っていれば状況が伝わるはずなのだけど、なんだろう。
まだ嫌な感じが拭えないでいた。
しばらくして、殆どの処理が終わった段階でその報せがもたらされた。
「報告! ラバルナ様率いる部隊――ッ! イフリートの泉より撤退を開始、後退し陣を立て直しております!!」
「はぁ⁉ なんだ、どういうことだ? ラバルナはしくじったってことなのか?」
「どういうこと? まさか、他にも教王国の兵が?」
首を振って否定する兵、さらに詳しい情報を話し出した。
戦況は、私たちが予想したとおり、敵は最奥で強固な護りをとり中々突破できない。
その間に、こちらが背後から迫っている敵を倒し援軍の無い状態の敵を彼が破るだけだったが、状況が変わったらしい。
「どう変わったの? 詳しくわかる?」
「想像以上に敵の強固な護りに対し、ファルス隊の活躍により突破口が見つかりそこを一点集中で攻めており、陥落も目前となりました」
それは、さすがとしか言えない。
もしかすると、もっと時間がかかる可能性だってあった。
そうなれば、さらに援軍の可能性を考えて長い間ここに布陣しなければいけないと覚悟はしていた。
「しかし、門を突破できる! そう思ったとき、敵の攻撃が一斉に止んだのです……それに対し、ラバルナ様は撤退を指示し今に至ります」
「おいおい! 意味わかんねよ。敵が降伏したってことだろ? なぁ、そう思わないか? そのまま攻撃するか、話し合いで解放するかでもすればよいだけだろ」
確かに、言われてみると変すぎる。
何かを感じ取ったのかもしれない、これは急いで合流する必要がありそうだ。
「ありがとう、作戦変更! 急いでラバルナ隊と合流するわ」
ドクドクと不安ばかりが大きくなっていく。
戦には勝てたが、なんだろう、この得体の知れないドロッとした雰囲気は?
「一応、敵の増援を考えて僅かだけど兵を残していくわ、もし動きがあったら、撹乱しつつ逃げて良い?」
「了解いたしました」
素直に指示に従ってくれる兵たち、負傷兵と捕虜を乗せた荷駄隊も引き返していく。
残された兵を引き連れて、ラバルナたちが布陣している場所へと向かい始めた。
ゼイニさんも重装弓兵と補強した荷駄隊を率いてくれており、先ほどの戦でも初手の遠距離からの弓による攻撃がかなり有効であると証明された。
この世界の弓は小さく、小回りはきくが威力と飛距離があまり優秀ではない、私がイメージする日本の弓はもっと大きくそして強い。
もちろん、至近距離どうしの戦闘なら手返しのよい前者に軍配があがるので、使い分けをするのがベストなのかもしれない。
「それにしても、ラバルナがねぇ……」
「えぇ、変ね」
「でも、あいつよくよく思い返してみれば、なんだろう変な感が良いっていうか、危険を察知する嗅覚はかなり優れていると思うんだ」
陣に向かっていく途中でゼイニさんが話しかけてくれた。
もし、敵の攻撃が緩み突撃していたら? そうなっていたのだろ。
ここで、考えていても仕方がない、早く到着して事情を聴くしかない。
しばらく走っていると、遠くに彼らが築いた陣地が見えてくる。
「誰か先に行って報せてちょうだい」
隣にいた兵が大きく頷き、一足先に私の旗を掲げて向かいだした。
陣に近づくたび、多くの兵たちが私たちを歓迎して出迎えてくれた。
「レイナ様! お待ちしておりました」
「凄い数の兵ですな……どこからこんなに」
ジャマルから降りると、全隊へ休むように伝える。
すると、集まってきた人たちがザっと左右に避けて道ができる。
その先にはラバルナとファルスさんが控えていた。
日差しが私たちを照らし始めると同時に、戦場から勝どきが聞こえてくる。
「勝ったか」
「えぇ、なんとかね」
「圧勝に見えたが?」
ゼイニさんも嬉しいのか、声が軽い感じがした。
私が見つめる先には、散り散りに逃げていく教王国兵たちと多くの亡骸に負傷兵たちの姿。
追い討ちはダメだと伝えているので、それに従ってくれている兵たちに感謝しなければならない。
「負傷兵の手当てを急がせて、それに捕虜の扱いも丁寧にね」
伝令係の兵がジャマルに乗り、伝えに向かう。
ゼイニさんが率いる荷駄に次々に運ばれていく負傷者たち、敵味方関係なく丁寧に傷を癒していく。
「おいおい、それにしてもラバルナはどうしているんだ? こっちは終わったいうのに」
「そうね、思いのほか苦戦しているかもしれないわ、ゼイニさん助けに行く?」
問いかけに対し大げさに首を振って否定した。
一応物見の兵は放っているので、待っていれば状況が伝わるはずなのだけど、なんだろう。
まだ嫌な感じが拭えないでいた。
しばらくして、殆どの処理が終わった段階でその報せがもたらされた。
「報告! ラバルナ様率いる部隊――ッ! イフリートの泉より撤退を開始、後退し陣を立て直しております!!」
「はぁ⁉ なんだ、どういうことだ? ラバルナはしくじったってことなのか?」
「どういうこと? まさか、他にも教王国の兵が?」
首を振って否定する兵、さらに詳しい情報を話し出した。
戦況は、私たちが予想したとおり、敵は最奥で強固な護りをとり中々突破できない。
その間に、こちらが背後から迫っている敵を倒し援軍の無い状態の敵を彼が破るだけだったが、状況が変わったらしい。
「どう変わったの? 詳しくわかる?」
「想像以上に敵の強固な護りに対し、ファルス隊の活躍により突破口が見つかりそこを一点集中で攻めており、陥落も目前となりました」
それは、さすがとしか言えない。
もしかすると、もっと時間がかかる可能性だってあった。
そうなれば、さらに援軍の可能性を考えて長い間ここに布陣しなければいけないと覚悟はしていた。
「しかし、門を突破できる! そう思ったとき、敵の攻撃が一斉に止んだのです……それに対し、ラバルナ様は撤退を指示し今に至ります」
「おいおい! 意味わかんねよ。敵が降伏したってことだろ? なぁ、そう思わないか? そのまま攻撃するか、話し合いで解放するかでもすればよいだけだろ」
確かに、言われてみると変すぎる。
何かを感じ取ったのかもしれない、これは急いで合流する必要がありそうだ。
「ありがとう、作戦変更! 急いでラバルナ隊と合流するわ」
ドクドクと不安ばかりが大きくなっていく。
戦には勝てたが、なんだろう、この得体の知れないドロッとした雰囲気は?
「一応、敵の増援を考えて僅かだけど兵を残していくわ、もし動きがあったら、撹乱しつつ逃げて良い?」
「了解いたしました」
素直に指示に従ってくれる兵たち、負傷兵と捕虜を乗せた荷駄隊も引き返していく。
残された兵を引き連れて、ラバルナたちが布陣している場所へと向かい始めた。
ゼイニさんも重装弓兵と補強した荷駄隊を率いてくれており、先ほどの戦でも初手の遠距離からの弓による攻撃がかなり有効であると証明された。
この世界の弓は小さく、小回りはきくが威力と飛距離があまり優秀ではない、私がイメージする日本の弓はもっと大きくそして強い。
もちろん、至近距離どうしの戦闘なら手返しのよい前者に軍配があがるので、使い分けをするのがベストなのかもしれない。
「それにしても、ラバルナがねぇ……」
「えぇ、変ね」
「でも、あいつよくよく思い返してみれば、なんだろう変な感が良いっていうか、危険を察知する嗅覚はかなり優れていると思うんだ」
陣に向かっていく途中でゼイニさんが話しかけてくれた。
もし、敵の攻撃が緩み突撃していたら? そうなっていたのだろ。
ここで、考えていても仕方がない、早く到着して事情を聴くしかない。
しばらく走っていると、遠くに彼らが築いた陣地が見えてくる。
「誰か先に行って報せてちょうだい」
隣にいた兵が大きく頷き、一足先に私の旗を掲げて向かいだした。
陣に近づくたび、多くの兵たちが私たちを歓迎して出迎えてくれた。
「レイナ様! お待ちしておりました」
「凄い数の兵ですな……どこからこんなに」
ジャマルから降りると、全隊へ休むように伝える。
すると、集まってきた人たちがザっと左右に避けて道ができる。
その先にはラバルナとファルスさんが控えていた。