『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
「レイナ……」
「レイナ様」
私は二人のもとにいくと、奥に通された。
ゼイニさんも一緒に来るようにと言われて、嫌そうな顔をしながら私の後ろを歩いてついてくる。
「どうしたんだよ、お前らしくもないじゃないか」
黙り込む二人、それに陣内にいる兵たちの雰囲気も何か違っているように思えた。
私がもしこの戦闘に参加して、順調に勝っていてもう少しで勝利という段階で急に撤退を告げられたら絶対に嫌だ。
だけど、その不満があまり見えないのは彼らも何かを感じ取ったのかもしれない。
誰もいない部屋に通され、座るように促された。
「どうかしたの?」
二人は困ったような表情になり、ファルスさんは頭を抱えている。
「レイナの言う通り、この戦はかなり厄介なことになった」
「おいおい、ラバルナどういう意味だ?」
こちらに私たちが向かうまで、彼らも情報を仕入れていたのだろう。
こちらが教王国の兵を抑えていたことは知っていて、それに関してはお礼をのべてくれた。
「ゼイニ様の言う通り、我らは今一歩のところで退却してまいりましたが、それは正解だと思っております。あのまま泉の砦に残っていれば何が起きたのか……」
もったいぶる態度のファルスさんに、ゼイニさんは明らかにイライラしたような態度になっていく。
「信じてもらえないかもしれないが、実は敵の攻撃が止んだときに一度物見を放っている」
淡々と話し出し、その吐く息の冷たさに嫌な感じが含まれていた。
「恐る恐る確認してみると、今まで確かに俺たちに弓を引き、槍を持ち盾を構えていた兵の姿が消えていた。正確に言うならば、全て死んでいたと」
「!!」
「し、死んでたってお前、冗談にもほどがあるだろう!」
「冗談ではない!! 本当にだ、全てだ。今まで決死の覚悟で戦っていた相手が全て死んだのだぞ? これは泉に隠された罠が発動し毒などがまかれたと考え、その場から撤退を開始したが……」
違う、それはその場から兵を撤退させるための口実だろう。
真相は違うと彼らの顔を見ればわかる。
二人は慎重に周りを確認すると、私たちに小声で話しかけてきた。
「しかし、物見の兵の報せでは敵は全て斬り殺されていたらしい……」
「馬鹿な、背後から襲われたっていうのか? しかも短時間で正規兵たちを皆殺しにできるまで強力な存在が?」
コクリと頷くラバルナに額に脂汗を浮かべるアルスさん。
事の深刻さが伝わってきた。
「それで、泉からはまだ何も見つかっていないの?」
「あぁ、一応離れて見張りは立たせているが、今はまだ連絡は入っていない。もし、仮にそんな存在がいたとするならどうする?」
おかしな点がいくつもある。
彼の質問に答えるまえに、今度はこちらから質問をした。
「待って、最初は私から質問させて――まず、第一になんであれだけ乗り気じゃなかったイフリートの泉の攻略を決めたの?」
「うっ、そ、それは」
何か後ろめたいことでもあるのだろうか? ゼイニさんも不思議そうに彼を見つめていた。
「け、啓示があった。眠っているとイフリートが私に話しかけてきたのだ。我を解放せよって!! そうすれば、この世界は俺の思った世界に近づくと言ってくれた」
夢のお告げで戦争を決めた⁉ ちょっと、信じられない。
「馬鹿にするかもしれないが、俺はイフリートの鼓動を確かに感じ、朝目覚めると手にこれが握られていた」
見せてくれたのは、何かの石のようなもので紅く綺麗だった。
ゼイニさんが石を受け取ると、興味深く調べ始める。
「これはすげぇ、こんなデカいルベライト初めてみるぞ」
聞きなれない単語だけど、私が元いた世界でも似たような名前を聞いたことがある。
たしか、ルビーに似ている宝石で鑑定技術が未熟な時代はよく間違われていたと聞いたことがあった。
「俺は装飾関係に関しては無頓着でな、そんなモノは一切持っていない。だが、それが握られていてイフリートの鼓動を感じたのだ」
そこまでお膳立てされて、奮い立たない人はいないか……。
あのフードの存在が言っていたことが脳裏に蘇っていく、私の意思とは無関係に世界は進んでいく。
もし、これが罠であるならそれを覆さなければならない。
「もし、毒でないなら何が考えられる?」
「正直分からない、ただ言えるのは恐ろしく強いということだけだ」
そんな曖昧な表現を求めていなかったが、わからないなら仕方がない。
でも、情報が皆無というのはダメで、何か手掛かりのようなものはないかしら? そう思っていると、先ほどから黙っているファルスさんが何かいいたげそうにしていた。
「どうかしたの?」
私が促すと、彼は答えてくれた。
「わ、私が思いますに、あの斬り口は人間のできる範囲ではありません、こ、これは噂に聞く【魔人】ではないでしょうか?」
魔人? それって、以前きいたイフリートが使役して人間たちと戦争した魔人という意味だろうか?
「イフリートが魔人の解放を求めていたのでは? そして、魔人たちは主であるイフリートを解放にするという流れでは?」
なんだか、引っかかる。
何かが噛み合ってない、でも魔人と言う線はかなりあっていそうだった。
「ファルスの言う通り、魔人とみるのが的確だろう。しかし、なぜ魔人が今になって現れる。この数百年まったく姿を現していなかったのに」
「レイナ様」
私は二人のもとにいくと、奥に通された。
ゼイニさんも一緒に来るようにと言われて、嫌そうな顔をしながら私の後ろを歩いてついてくる。
「どうしたんだよ、お前らしくもないじゃないか」
黙り込む二人、それに陣内にいる兵たちの雰囲気も何か違っているように思えた。
私がもしこの戦闘に参加して、順調に勝っていてもう少しで勝利という段階で急に撤退を告げられたら絶対に嫌だ。
だけど、その不満があまり見えないのは彼らも何かを感じ取ったのかもしれない。
誰もいない部屋に通され、座るように促された。
「どうかしたの?」
二人は困ったような表情になり、ファルスさんは頭を抱えている。
「レイナの言う通り、この戦はかなり厄介なことになった」
「おいおい、ラバルナどういう意味だ?」
こちらに私たちが向かうまで、彼らも情報を仕入れていたのだろう。
こちらが教王国の兵を抑えていたことは知っていて、それに関してはお礼をのべてくれた。
「ゼイニ様の言う通り、我らは今一歩のところで退却してまいりましたが、それは正解だと思っております。あのまま泉の砦に残っていれば何が起きたのか……」
もったいぶる態度のファルスさんに、ゼイニさんは明らかにイライラしたような態度になっていく。
「信じてもらえないかもしれないが、実は敵の攻撃が止んだときに一度物見を放っている」
淡々と話し出し、その吐く息の冷たさに嫌な感じが含まれていた。
「恐る恐る確認してみると、今まで確かに俺たちに弓を引き、槍を持ち盾を構えていた兵の姿が消えていた。正確に言うならば、全て死んでいたと」
「!!」
「し、死んでたってお前、冗談にもほどがあるだろう!」
「冗談ではない!! 本当にだ、全てだ。今まで決死の覚悟で戦っていた相手が全て死んだのだぞ? これは泉に隠された罠が発動し毒などがまかれたと考え、その場から撤退を開始したが……」
違う、それはその場から兵を撤退させるための口実だろう。
真相は違うと彼らの顔を見ればわかる。
二人は慎重に周りを確認すると、私たちに小声で話しかけてきた。
「しかし、物見の兵の報せでは敵は全て斬り殺されていたらしい……」
「馬鹿な、背後から襲われたっていうのか? しかも短時間で正規兵たちを皆殺しにできるまで強力な存在が?」
コクリと頷くラバルナに額に脂汗を浮かべるアルスさん。
事の深刻さが伝わってきた。
「それで、泉からはまだ何も見つかっていないの?」
「あぁ、一応離れて見張りは立たせているが、今はまだ連絡は入っていない。もし、仮にそんな存在がいたとするならどうする?」
おかしな点がいくつもある。
彼の質問に答えるまえに、今度はこちらから質問をした。
「待って、最初は私から質問させて――まず、第一になんであれだけ乗り気じゃなかったイフリートの泉の攻略を決めたの?」
「うっ、そ、それは」
何か後ろめたいことでもあるのだろうか? ゼイニさんも不思議そうに彼を見つめていた。
「け、啓示があった。眠っているとイフリートが私に話しかけてきたのだ。我を解放せよって!! そうすれば、この世界は俺の思った世界に近づくと言ってくれた」
夢のお告げで戦争を決めた⁉ ちょっと、信じられない。
「馬鹿にするかもしれないが、俺はイフリートの鼓動を確かに感じ、朝目覚めると手にこれが握られていた」
見せてくれたのは、何かの石のようなもので紅く綺麗だった。
ゼイニさんが石を受け取ると、興味深く調べ始める。
「これはすげぇ、こんなデカいルベライト初めてみるぞ」
聞きなれない単語だけど、私が元いた世界でも似たような名前を聞いたことがある。
たしか、ルビーに似ている宝石で鑑定技術が未熟な時代はよく間違われていたと聞いたことがあった。
「俺は装飾関係に関しては無頓着でな、そんなモノは一切持っていない。だが、それが握られていてイフリートの鼓動を感じたのだ」
そこまでお膳立てされて、奮い立たない人はいないか……。
あのフードの存在が言っていたことが脳裏に蘇っていく、私の意思とは無関係に世界は進んでいく。
もし、これが罠であるならそれを覆さなければならない。
「もし、毒でないなら何が考えられる?」
「正直分からない、ただ言えるのは恐ろしく強いということだけだ」
そんな曖昧な表現を求めていなかったが、わからないなら仕方がない。
でも、情報が皆無というのはダメで、何か手掛かりのようなものはないかしら? そう思っていると、先ほどから黙っているファルスさんが何かいいたげそうにしていた。
「どうかしたの?」
私が促すと、彼は答えてくれた。
「わ、私が思いますに、あの斬り口は人間のできる範囲ではありません、こ、これは噂に聞く【魔人】ではないでしょうか?」
魔人? それって、以前きいたイフリートが使役して人間たちと戦争した魔人という意味だろうか?
「イフリートが魔人の解放を求めていたのでは? そして、魔人たちは主であるイフリートを解放にするという流れでは?」
なんだか、引っかかる。
何かが噛み合ってない、でも魔人と言う線はかなりあっていそうだった。
「ファルスの言う通り、魔人とみるのが的確だろう。しかし、なぜ魔人が今になって現れる。この数百年まったく姿を現していなかったのに」