『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
大きな違和感が二つ含まれている。
その一つは、先ほど言ってくれた魔人がなぜ今になって現れたのかということだ。
「きっと何か切っ掛けがあるはずだわ」
「う――ん、わからんが、とにかく魔人たちは外に出ないんだろ? なら、問題ないんじゃいか?」
「ダメだ、それだと俺たちが泉を攻めた意味が無くなるし、今は外に出ないが将来的に外に出てみろ? どうする、今ならまだ砦に抑えこむことも可能だ」
そう、この泉は私たちが世界を救うためには必ず必要になる場所で、そんな凶悪な存在が外に出たら正規兵の被害程度では済まないだろう。
切っ掛け、何か魔人たちを目覚めさせる引き金があったのは間違いない。
この地でいままで無くて、ラバルナたちがやってきたことで変わったもの、もしくは増えた要素……? まさか。
「えっと、確信ではないのだけれど、魔人たちってもしかすると封印されていたのかしら?」
「? そうかもしれないな、イフリートが眠る地だからその可能性はかなり高いだろう」
「その封印が解かれたってことは、何か切っ掛けが必要だったと思うんだけど、それがもし死人だったら?」
ゾクっと全員の顔色が変わるのがわかる。
ここを護ってきた教王国には外敵が殆どいない、だけど、過去の恐怖から兵を置いて守護させていた。
盗賊も入らないし、砂漠の中でも一番安全な地だったと思われる。
「死人の魂か血か何かはハッキリしないけれど、それが復活に必要だとしたら? 今までは戦はこの地では行われいなかったら、昨日の今日で劇的に変わったことと言えばそれくらいじゃない?」
「言われてみれば、なら俺たちは魔人を解放するためにこの地へ誘われたってことなのか?」
私は軽く頷くと、悔しそうな顔をするラバルナ。
「クソッ! お告げかと思ったら、騙された。イフリートめ――!!」
そして、もう一つ私の心に引っかかっていることがある。
それは、なぜ魔人なのだろうか? という点だ。
魔人復活の鍵が人の魂なり血肉だったりした場合、イフリートは? 私たちを正規軍と戦わせて魔人を解放するのが最初から目的だったように思える。
「イフリートの解放条件は違うというのか?」
「たぶん、きっとこれはかなり練られた作戦よ。私たちはあくまで魔人の餌として呼ばれただけで、魔人たちの目的は別にあるとみて間違いないわ」
言っている意味を理解できないでいる。
しかし、後ろでずっと黙っていたゼイニさんが唐突に声を発した。
「あぁ、つまりこの作戦を仕込んだのはイフリートではなくて、魔人だということだろ? それで復活には人間の何かしらの犠牲が必要だったわけだ」
「そう、イフリートが魔人を使役していたのなら、イフリートを解放すれば自然と魔人たちも戻れたはず、だけど、それをしない理由があるのよ」
ややこしい、だけど、これは非常に大切な何かを意味しているように思えた。
いったい相手の本当の狙いは? そして、なぜ泉から出てこないの? まだ外に出ないようにしているだけ?
全ての要素をつなぎ合わせていくと、ある言葉が浮かんできた。
『人間は傲慢である。自分たちに都合の良い伝説を残し子孫に伝えている』
もし仮に、あのフードの存在が言ったこの言葉の意味を考えるなら、そもそも私たちが聞いていたイフリートの伝説二つは違うということなのだろうか?
「仮に、イフリートそのものは実は人間と敵対していなかったとしたら?」
ゼイニさんがぼそりと呟く。
ラバルナとファルスさんが何を言っているんだ? そう言いたげな顔をしている。
「いや、考えてみろよ。なんだか、魔人はかなり自分勝手に俺たちを利用しているようで、イフリートを解放するっというよりも自らの封印を解かれる条件しか揃えていない」
「それじゃあ、なんだ? お前が言いたいのは、実はイフリートは人間の味方で敵対していたのは魔人だけだったってことか?」
全てが揃った条件、以前はこの泉に多くの兵が存在した。
それは、教王国の強さの象徴でもあり、外敵がほぼ存在しない世界ではだれもこの泉に興味すらもたなかったのだろう。
しかし、教王国の力が弱まり私たちという外敵が現れたのを魔人たちは見逃さなかったのだ。
「魔人たちは外にでる機会を伺っているはずだ。おそらくかなりの数が封印されていると見て間違いない。だけど、あの数だけじゃ解放された個体数は限らているだろうよ」
「なら、なぜ外に出てこない? まだ意識が朦朧としているとでも?」
魔人たちは復活を望み、血肉を求めて行動するはずなのに、動きがない。
それはつまり、内部で何かを行っている可能性がある? あの砦の中にいるのって、正規兵は全滅してしまったし、こちらの兵も退却している。
他に残っているのって……⁉
「待って、もしかしてさっきゼイニさんが言っていたことが本当なら? イフリートは昔は人間に味方をしたの、魔人たちは誰に封印されたの? もし、イフリート自身が封印し自らを犠牲にして泉を誕生させ魔人の復活を予防する意味で教王国が兵を配置していたとしたら?」
全てが線で繋がっていく。
そう、魔人たちの狙いは泉に眠る最大の敵であるイフリートを滅ぼすこと。
「封印されているうちに滅ぼすつもりなのか⁉」
「えぇ、きっとそうよ。間違いない」
その一つは、先ほど言ってくれた魔人がなぜ今になって現れたのかということだ。
「きっと何か切っ掛けがあるはずだわ」
「う――ん、わからんが、とにかく魔人たちは外に出ないんだろ? なら、問題ないんじゃいか?」
「ダメだ、それだと俺たちが泉を攻めた意味が無くなるし、今は外に出ないが将来的に外に出てみろ? どうする、今ならまだ砦に抑えこむことも可能だ」
そう、この泉は私たちが世界を救うためには必ず必要になる場所で、そんな凶悪な存在が外に出たら正規兵の被害程度では済まないだろう。
切っ掛け、何か魔人たちを目覚めさせる引き金があったのは間違いない。
この地でいままで無くて、ラバルナたちがやってきたことで変わったもの、もしくは増えた要素……? まさか。
「えっと、確信ではないのだけれど、魔人たちってもしかすると封印されていたのかしら?」
「? そうかもしれないな、イフリートが眠る地だからその可能性はかなり高いだろう」
「その封印が解かれたってことは、何か切っ掛けが必要だったと思うんだけど、それがもし死人だったら?」
ゾクっと全員の顔色が変わるのがわかる。
ここを護ってきた教王国には外敵が殆どいない、だけど、過去の恐怖から兵を置いて守護させていた。
盗賊も入らないし、砂漠の中でも一番安全な地だったと思われる。
「死人の魂か血か何かはハッキリしないけれど、それが復活に必要だとしたら? 今までは戦はこの地では行われいなかったら、昨日の今日で劇的に変わったことと言えばそれくらいじゃない?」
「言われてみれば、なら俺たちは魔人を解放するためにこの地へ誘われたってことなのか?」
私は軽く頷くと、悔しそうな顔をするラバルナ。
「クソッ! お告げかと思ったら、騙された。イフリートめ――!!」
そして、もう一つ私の心に引っかかっていることがある。
それは、なぜ魔人なのだろうか? という点だ。
魔人復活の鍵が人の魂なり血肉だったりした場合、イフリートは? 私たちを正規軍と戦わせて魔人を解放するのが最初から目的だったように思える。
「イフリートの解放条件は違うというのか?」
「たぶん、きっとこれはかなり練られた作戦よ。私たちはあくまで魔人の餌として呼ばれただけで、魔人たちの目的は別にあるとみて間違いないわ」
言っている意味を理解できないでいる。
しかし、後ろでずっと黙っていたゼイニさんが唐突に声を発した。
「あぁ、つまりこの作戦を仕込んだのはイフリートではなくて、魔人だということだろ? それで復活には人間の何かしらの犠牲が必要だったわけだ」
「そう、イフリートが魔人を使役していたのなら、イフリートを解放すれば自然と魔人たちも戻れたはず、だけど、それをしない理由があるのよ」
ややこしい、だけど、これは非常に大切な何かを意味しているように思えた。
いったい相手の本当の狙いは? そして、なぜ泉から出てこないの? まだ外に出ないようにしているだけ?
全ての要素をつなぎ合わせていくと、ある言葉が浮かんできた。
『人間は傲慢である。自分たちに都合の良い伝説を残し子孫に伝えている』
もし仮に、あのフードの存在が言ったこの言葉の意味を考えるなら、そもそも私たちが聞いていたイフリートの伝説二つは違うということなのだろうか?
「仮に、イフリートそのものは実は人間と敵対していなかったとしたら?」
ゼイニさんがぼそりと呟く。
ラバルナとファルスさんが何を言っているんだ? そう言いたげな顔をしている。
「いや、考えてみろよ。なんだか、魔人はかなり自分勝手に俺たちを利用しているようで、イフリートを解放するっというよりも自らの封印を解かれる条件しか揃えていない」
「それじゃあ、なんだ? お前が言いたいのは、実はイフリートは人間の味方で敵対していたのは魔人だけだったってことか?」
全てが揃った条件、以前はこの泉に多くの兵が存在した。
それは、教王国の強さの象徴でもあり、外敵がほぼ存在しない世界ではだれもこの泉に興味すらもたなかったのだろう。
しかし、教王国の力が弱まり私たちという外敵が現れたのを魔人たちは見逃さなかったのだ。
「魔人たちは外にでる機会を伺っているはずだ。おそらくかなりの数が封印されていると見て間違いない。だけど、あの数だけじゃ解放された個体数は限らているだろうよ」
「なら、なぜ外に出てこない? まだ意識が朦朧としているとでも?」
魔人たちは復活を望み、血肉を求めて行動するはずなのに、動きがない。
それはつまり、内部で何かを行っている可能性がある? あの砦の中にいるのって、正規兵は全滅してしまったし、こちらの兵も退却している。
他に残っているのって……⁉
「待って、もしかしてさっきゼイニさんが言っていたことが本当なら? イフリートは昔は人間に味方をしたの、魔人たちは誰に封印されたの? もし、イフリート自身が封印し自らを犠牲にして泉を誕生させ魔人の復活を予防する意味で教王国が兵を配置していたとしたら?」
全てが線で繋がっていく。
そう、魔人たちの狙いは泉に眠る最大の敵であるイフリートを滅ぼすこと。
「封印されているうちに滅ぼすつもりなのか⁉」
「えぇ、きっとそうよ。間違いない」