『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
その存在たちは、意外にもあっさりとその姿を現した。
砦に近づくと、入り口の門は閉まり上にはゴロゴロと蠢く影が複数体確認される。
「数約二十!! 体大きく、我らの倍はありますぞ」
大人の倍って、それは恐怖でしかない。
でも、想像していたよりも数は少ないが個体値が高いのかもしれない。
油断は一切できなかった。
「ゼイニ隊! 前に出るぞ」
強化荷駄隊が一斉に前面に展開すると、三台に荷駄が横一列に砦に側面を向けて止まる。
その左右を私とファルスさんが駆けていく。
バンバンバンっと、荷駄の壁が降りると強弓隊が一斉に構えて矢を放ち始める。
「遠い……けれども!!」
魔人たちもなにか小馬鹿にしたような様子に見えた。
そんな距離から矢が届くものかと――だが、それは過去の記憶でそれを塗り替えてあげなくちゃ!!
遠距離から砦を直接攻撃しだした弓に驚きの叫びが聞こえてきた。
「不気味で、なんて品の叫び声」
ブルっと体が震えてしまう。
無理やり恐怖心を振り払って進んでいくと、敵は砦の上から怒ったのか飛び出してきた。
「あの高さから飛び降りるというのか⁉」
ファルスさんが驚くのも無理はない、人間なら確実に骨折か悪ければ死んでしまう高さをなんの躊躇もなく降りてきてこちらに向かってきたのだ。
一瞬、嫌な風が砂漠を抜けようとする。
「怯えないで! 恐怖が足を止め、手を強張らせてしまう」
ジャマルの横腹を蹴り、速度を増した私を見て後続隊も声を出し始める。
「聖女様の加護を我らに!」
「「「我らに!!」」」
ソマリの姿が装飾された旗がはためく、風向きは変えられる。
いや、変えなければならない!!
『レイナ、魔人は初めてだからちょっと不安だけど助けてね』
「何を言っているの、あなたがダメなら私もダメよ」
『ふふふっ、レイナったらそう言ってイルルヤンカシュを倒したじゃない』
「あら? そうだったかしら?」
イルルヤンカシュの鱗から作られた防具がギラリと光る。
相手に近づくたびに、その姿に驚かされた。
「大きくて、そしてなんて姿をしているの……」
赤、緑、紫、個体の色は違えど姿は馬や牛の顔に小さな角が二本生えており、筋肉質な体躯に巨大な鈍器を持っていた。
まるで地獄の門番で有名な牛頭馬頭を思い出してしまう。
ゼイニさんは必死に砦に向かって矢を放っており、後続の魔人を足止めしているが飛び降りてきた個体は十体程度だが、油断はいっさいできない。
「やるわよ! はぁぁぁぁ!」
先頭の一体、牛頭の棍棒を回避するとサーベルを腹部に一撃、相手の叫びが聞こえてくる。
「グギャヤヤアアアア!!」
ブンッ! 隣では馬頭の石斧が盾を構えた歩兵ごと吹き飛ばしており、兵の足並みが崩れてしまう。
一気に混戦状態になるが、ファルスさんたちが敵の退路を塞ぐ形で展開をしていく。
「つ、強い」
ブンッ!! その一撃は重く、受けようものなら武器ごと折れてしまうだろう。
しかも、体も硬く深い一撃が入れられないでいた。
「何か手立ては?」
周りでは複数人で囲んで戦っている。
それしか方法が無い、だが、ゼイニさんたちの矢を逃れた個体が続々と砦から飛び降りてきており、それをファルス隊が足止めしつつ、こちらの援護もしていた。
「フンッ!」
ザックっと一撃、背中に入るが傷が浅い! 致命傷にはならないだろう。
「う、うわぁぁぁあ! このクソがぁぁ!」
石斧で腕を折られた歩兵が、槍を構えて突撃していく。
そして一撃で潰されそうになるところに、仲間が集まり全員が盾を構えた。
「⁉」
「踏ん張れええええぇ!」
「「オウッ!!」」
バゴンッ!! 大きな音と共に何人も構えた盾がその一撃を受け止めた。
腰低く、上からの攻撃を見事防ぎ、さらにその盾を足場にし歩兵が相手に向かって飛び掛かる。
「人間なめんなよぉ!」
ザクっと、喉を貫通する一撃が声を発せず魔人を絶命させた。
倒れる音は乾いた砂でも音を吸収しきれずに戦場に鳴り響く。
「うおおおおおお!」
雄たけびが広がる。
グルっと瞳を動かした目の前の魔人、その隙を見逃さず懐に入り込むとジャマルから飛び降りる。
私の上を空気を鈍く切る音が聞こえたが、今はその足しかみえない。
「わかった? あなたたちは既に神話の世界の存在、現在に居てはいけないの」
腰から剣を抜き、両足を素早く何度も斬っていくと、ぐらっとその巨体が揺らぐ。
「グルシャアアアアッ!」
ドスンっと、砂に倒れこむとその胸板にあがり額に剣を突き入れる。
深く、深く、そうもっと!
バタバタと暴れる魔人だけど、しだいに力を無くしついに動かなくなった。
「聖女様へ続けぇぇ」
「仲間を助けろ!!」
「列乱すな! 周りを見ろ! 複数で取り囲むんだ」
急いで組まれた隊だが、連携はかなり良い。
命を懸けた戦場で人の命の華が必死に咲きほころうとしている。
「次! 手の空いた人はファルス隊の援護を! ラバルナたちの道を作るのよ!!」
しかし、なんて強力な相手なのだろうか、こんなのと昔はずっと戦っていたの? 信じられない。
どう考えても人間側が不利だとしか思えない、今はこの数に対しこちら側が圧倒的に多いので戦っていられるが、もし、これよりも遥かに多いと考えるだけで寒気が止まらない。
砦に近づくと、入り口の門は閉まり上にはゴロゴロと蠢く影が複数体確認される。
「数約二十!! 体大きく、我らの倍はありますぞ」
大人の倍って、それは恐怖でしかない。
でも、想像していたよりも数は少ないが個体値が高いのかもしれない。
油断は一切できなかった。
「ゼイニ隊! 前に出るぞ」
強化荷駄隊が一斉に前面に展開すると、三台に荷駄が横一列に砦に側面を向けて止まる。
その左右を私とファルスさんが駆けていく。
バンバンバンっと、荷駄の壁が降りると強弓隊が一斉に構えて矢を放ち始める。
「遠い……けれども!!」
魔人たちもなにか小馬鹿にしたような様子に見えた。
そんな距離から矢が届くものかと――だが、それは過去の記憶でそれを塗り替えてあげなくちゃ!!
遠距離から砦を直接攻撃しだした弓に驚きの叫びが聞こえてきた。
「不気味で、なんて品の叫び声」
ブルっと体が震えてしまう。
無理やり恐怖心を振り払って進んでいくと、敵は砦の上から怒ったのか飛び出してきた。
「あの高さから飛び降りるというのか⁉」
ファルスさんが驚くのも無理はない、人間なら確実に骨折か悪ければ死んでしまう高さをなんの躊躇もなく降りてきてこちらに向かってきたのだ。
一瞬、嫌な風が砂漠を抜けようとする。
「怯えないで! 恐怖が足を止め、手を強張らせてしまう」
ジャマルの横腹を蹴り、速度を増した私を見て後続隊も声を出し始める。
「聖女様の加護を我らに!」
「「「我らに!!」」」
ソマリの姿が装飾された旗がはためく、風向きは変えられる。
いや、変えなければならない!!
『レイナ、魔人は初めてだからちょっと不安だけど助けてね』
「何を言っているの、あなたがダメなら私もダメよ」
『ふふふっ、レイナったらそう言ってイルルヤンカシュを倒したじゃない』
「あら? そうだったかしら?」
イルルヤンカシュの鱗から作られた防具がギラリと光る。
相手に近づくたびに、その姿に驚かされた。
「大きくて、そしてなんて姿をしているの……」
赤、緑、紫、個体の色は違えど姿は馬や牛の顔に小さな角が二本生えており、筋肉質な体躯に巨大な鈍器を持っていた。
まるで地獄の門番で有名な牛頭馬頭を思い出してしまう。
ゼイニさんは必死に砦に向かって矢を放っており、後続の魔人を足止めしているが飛び降りてきた個体は十体程度だが、油断はいっさいできない。
「やるわよ! はぁぁぁぁ!」
先頭の一体、牛頭の棍棒を回避するとサーベルを腹部に一撃、相手の叫びが聞こえてくる。
「グギャヤヤアアアア!!」
ブンッ! 隣では馬頭の石斧が盾を構えた歩兵ごと吹き飛ばしており、兵の足並みが崩れてしまう。
一気に混戦状態になるが、ファルスさんたちが敵の退路を塞ぐ形で展開をしていく。
「つ、強い」
ブンッ!! その一撃は重く、受けようものなら武器ごと折れてしまうだろう。
しかも、体も硬く深い一撃が入れられないでいた。
「何か手立ては?」
周りでは複数人で囲んで戦っている。
それしか方法が無い、だが、ゼイニさんたちの矢を逃れた個体が続々と砦から飛び降りてきており、それをファルス隊が足止めしつつ、こちらの援護もしていた。
「フンッ!」
ザックっと一撃、背中に入るが傷が浅い! 致命傷にはならないだろう。
「う、うわぁぁぁあ! このクソがぁぁ!」
石斧で腕を折られた歩兵が、槍を構えて突撃していく。
そして一撃で潰されそうになるところに、仲間が集まり全員が盾を構えた。
「⁉」
「踏ん張れええええぇ!」
「「オウッ!!」」
バゴンッ!! 大きな音と共に何人も構えた盾がその一撃を受け止めた。
腰低く、上からの攻撃を見事防ぎ、さらにその盾を足場にし歩兵が相手に向かって飛び掛かる。
「人間なめんなよぉ!」
ザクっと、喉を貫通する一撃が声を発せず魔人を絶命させた。
倒れる音は乾いた砂でも音を吸収しきれずに戦場に鳴り響く。
「うおおおおおお!」
雄たけびが広がる。
グルっと瞳を動かした目の前の魔人、その隙を見逃さず懐に入り込むとジャマルから飛び降りる。
私の上を空気を鈍く切る音が聞こえたが、今はその足しかみえない。
「わかった? あなたたちは既に神話の世界の存在、現在に居てはいけないの」
腰から剣を抜き、両足を素早く何度も斬っていくと、ぐらっとその巨体が揺らぐ。
「グルシャアアアアッ!」
ドスンっと、砂に倒れこむとその胸板にあがり額に剣を突き入れる。
深く、深く、そうもっと!
バタバタと暴れる魔人だけど、しだいに力を無くしついに動かなくなった。
「聖女様へ続けぇぇ」
「仲間を助けろ!!」
「列乱すな! 周りを見ろ! 複数で取り囲むんだ」
急いで組まれた隊だが、連携はかなり良い。
命を懸けた戦場で人の命の華が必死に咲きほころうとしている。
「次! 手の空いた人はファルス隊の援護を! ラバルナたちの道を作るのよ!!」
しかし、なんて強力な相手なのだろうか、こんなのと昔はずっと戦っていたの? 信じられない。
どう考えても人間側が不利だとしか思えない、今はこの数に対しこちら側が圧倒的に多いので戦っていられるが、もし、これよりも遥かに多いと考えるだけで寒気が止まらない。