『義賊の女王』-世界を救う聖女となる-
その力を掲げて砂漠を駆けろ!!
「何をやっておる!! 進め、進めぇ!!」
「む、無理です! 敵の強弓凄まじく、兵が進めません」
砂漠に阿鼻叫喚が広がる。
目の前には教王国軍がファルスさん率いる部隊の足止めにより、ゼイニさんの弓隊の良い的になっていた。
「固まるな! 盾を構えて動け――えぇいっ! 敵はどこか……ッゴファ!!」
散り散りに逃げ始める正規軍に対し、私たちは常に優位性を保っている。
乱雑な統率に、防具と武器だけが立派な烏合の衆となっていた。
「レイナ様、そろそろ頃合いかと」
私は頷くとジャマルにまたがり、号令を発する。
「いくわよ! 敵の本隊はまだ到着していないわ」
イフリートの泉を解放してから、私たちの動きは加速していった。
とくに、ラバルナの政治力が冴えわたり即座に周囲の村を取りまとめ大きな勢力へになる。
更にゼイニさんが武力を持つことにより、今まで以上に物流が活発化され資金力と資源力問題も解決した。
「ソマリ、それにイフリート……力を貸してちょうだい」
『任せて、レイナと一緒なら楽勝よ』
『おいおい嬢ちゃん、いつから人間同士で争うようになったんだ? まぁ、いいか……楽しいことには変わりねぇ』
光の玉に紅色が混ざる。それは、私の体の中に入っていくと力となっていく。
イルルヤンカシュの鱗から作られた特殊な防具に、牙は私の刃となっていた。
全てを防ぎ、全てを貫く、矛盾という言葉を私は知っているがそれ以外の表現が思い浮かばない。
「レイナ! 突っ込んで来い!!」
泉から本隊のラバルナが合流し、いよいよ敵を追い詰めていく。
「レイナ隊前に! そのまま先遣隊を突破し、後方の本隊を突くわよ!!」
「「「るあああああああああああああああ!!」」」
美しく光るホワイトパールの剣に灼熱の炎が宿る。
我が刃は真炎の巨神、我が肉体は創世の聖女。
「レイナ隊、私に続けぇぇぇ!!」
私が率いる部隊は胸にイルルヤンカシュの胴当てを装備し、ジャマルの周りには歩兵が追従していく。
ファルスさんが機動力ならば、私は攻撃に特化していた。
目の前で逃げ惑う相手が、こちらの姿を確認すると矢の雨が止む、それは次章へ合図であり彼らの終わりを告げている。
「レイナ様だけで終わりそうですな」
「ん? あぁ、そうだな……」
本隊のラバルナが暇そうにしている。
少しは残しておこうと思わなくもないが、それができないのが私であった。
『もう、ちょっと! 少し黙っていてよ』
『あん? なんだじゃじゃ馬、やるか?』
お互い協力しあっているように見せて、中ではいつでも喧嘩している。
それが平常であり、私の心の支えでもあった。
***
「おい、ラバルナ」
「おう、ご苦労だったゼイニ」
「ご苦労って、お前がこんな場所に居ていいのかよ? って、聞くまでもないか」
先遣隊を真っ二つに分断し、後続の敵本体へ突撃していくレイナ隊。
しかも、隊長である彼女の強さは常軌を逸している。 どんな盾も一撃で打ち破る武器に、矢を通さない防具、さらに剣術はラバルナ軍内で一番ときていた。
「まさに、武神ってところか」
「ラバルナ様、さすがに武神とは……」
後ろで控えている老兵が咳払いをして訂正を促してくる。
ゼイニはポリポリと後頭部を掻きながらレイナの様子を伺っていた。
「戦いの女神か……」
砂漠に初代聖女の旗が動くたびに敵は逃げ惑う。
先遣隊は既に機能していない、頼みの本隊はレイナの攻撃にタジタジ状態で左右から迫っているファルス隊の姿が目に入っていなかった。
「決まったな」
「あぁ、楽勝すぎないか?」
「馬鹿、これは前哨戦だ……寄せ集めの兵たちだけで勝とうって魂胆が見え透いていて反吐がでる。奴らが本気になればこんな簡単にはいかない」
一見正規軍に見えなくもないが、指揮系統がまるで機能していないのを見るに、スラムや街で適当に集めたゴロツキたちに武器だけを持たせているのだろう。
訓練もされていないうえに、連携も取れていない。
これなら、泉に常駐していた兵たちのほうがよっぽど手ごわかった。
「掃討戦だ」
ゼイニが頷くと、重装荷駄隊を率いて敵陣へと向かっていく。
弓隊から重装歩兵に入れ替えており、素早く歩兵を運べるこの方法は強く無駄がない。
「しかし、なんでまたイフリートがレイナにねぇ」
不思議でならない、魔人討伐が最優先事項に変わり多くの犠牲をだしながらも砦と泉を手に入れることができたが、本当にイフリートの力まで手に入れるなんて思いもしなかった。
「どうなっているんだよ。ここは物語の世界じゃないんだぞ」
彼女が気を失い、目を覚ましてから詳しく事情はきいたがハッキリ言うとまったく納得できていない。
しかも、まだ何かを隠している可能性があった。
奇妙であり、神秘的にも見える場面があり俺の視線はレイナを自然と追うようになっていた。
「不思議だ、なんだこの気持ちは」
今まで感じたことのない、理解不能な感情に困惑してしまう。
自分はいったい何を考えているのか? この戦場という一つも心が休まるはずのない世界でなぜ彼女を思い浮かべる?
「む、無理です! 敵の強弓凄まじく、兵が進めません」
砂漠に阿鼻叫喚が広がる。
目の前には教王国軍がファルスさん率いる部隊の足止めにより、ゼイニさんの弓隊の良い的になっていた。
「固まるな! 盾を構えて動け――えぇいっ! 敵はどこか……ッゴファ!!」
散り散りに逃げ始める正規軍に対し、私たちは常に優位性を保っている。
乱雑な統率に、防具と武器だけが立派な烏合の衆となっていた。
「レイナ様、そろそろ頃合いかと」
私は頷くとジャマルにまたがり、号令を発する。
「いくわよ! 敵の本隊はまだ到着していないわ」
イフリートの泉を解放してから、私たちの動きは加速していった。
とくに、ラバルナの政治力が冴えわたり即座に周囲の村を取りまとめ大きな勢力へになる。
更にゼイニさんが武力を持つことにより、今まで以上に物流が活発化され資金力と資源力問題も解決した。
「ソマリ、それにイフリート……力を貸してちょうだい」
『任せて、レイナと一緒なら楽勝よ』
『おいおい嬢ちゃん、いつから人間同士で争うようになったんだ? まぁ、いいか……楽しいことには変わりねぇ』
光の玉に紅色が混ざる。それは、私の体の中に入っていくと力となっていく。
イルルヤンカシュの鱗から作られた特殊な防具に、牙は私の刃となっていた。
全てを防ぎ、全てを貫く、矛盾という言葉を私は知っているがそれ以外の表現が思い浮かばない。
「レイナ! 突っ込んで来い!!」
泉から本隊のラバルナが合流し、いよいよ敵を追い詰めていく。
「レイナ隊前に! そのまま先遣隊を突破し、後方の本隊を突くわよ!!」
「「「るあああああああああああああああ!!」」」
美しく光るホワイトパールの剣に灼熱の炎が宿る。
我が刃は真炎の巨神、我が肉体は創世の聖女。
「レイナ隊、私に続けぇぇぇ!!」
私が率いる部隊は胸にイルルヤンカシュの胴当てを装備し、ジャマルの周りには歩兵が追従していく。
ファルスさんが機動力ならば、私は攻撃に特化していた。
目の前で逃げ惑う相手が、こちらの姿を確認すると矢の雨が止む、それは次章へ合図であり彼らの終わりを告げている。
「レイナ様だけで終わりそうですな」
「ん? あぁ、そうだな……」
本隊のラバルナが暇そうにしている。
少しは残しておこうと思わなくもないが、それができないのが私であった。
『もう、ちょっと! 少し黙っていてよ』
『あん? なんだじゃじゃ馬、やるか?』
お互い協力しあっているように見せて、中ではいつでも喧嘩している。
それが平常であり、私の心の支えでもあった。
***
「おい、ラバルナ」
「おう、ご苦労だったゼイニ」
「ご苦労って、お前がこんな場所に居ていいのかよ? って、聞くまでもないか」
先遣隊を真っ二つに分断し、後続の敵本体へ突撃していくレイナ隊。
しかも、隊長である彼女の強さは常軌を逸している。 どんな盾も一撃で打ち破る武器に、矢を通さない防具、さらに剣術はラバルナ軍内で一番ときていた。
「まさに、武神ってところか」
「ラバルナ様、さすがに武神とは……」
後ろで控えている老兵が咳払いをして訂正を促してくる。
ゼイニはポリポリと後頭部を掻きながらレイナの様子を伺っていた。
「戦いの女神か……」
砂漠に初代聖女の旗が動くたびに敵は逃げ惑う。
先遣隊は既に機能していない、頼みの本隊はレイナの攻撃にタジタジ状態で左右から迫っているファルス隊の姿が目に入っていなかった。
「決まったな」
「あぁ、楽勝すぎないか?」
「馬鹿、これは前哨戦だ……寄せ集めの兵たちだけで勝とうって魂胆が見え透いていて反吐がでる。奴らが本気になればこんな簡単にはいかない」
一見正規軍に見えなくもないが、指揮系統がまるで機能していないのを見るに、スラムや街で適当に集めたゴロツキたちに武器だけを持たせているのだろう。
訓練もされていないうえに、連携も取れていない。
これなら、泉に常駐していた兵たちのほうがよっぽど手ごわかった。
「掃討戦だ」
ゼイニが頷くと、重装荷駄隊を率いて敵陣へと向かっていく。
弓隊から重装歩兵に入れ替えており、素早く歩兵を運べるこの方法は強く無駄がない。
「しかし、なんでまたイフリートがレイナにねぇ」
不思議でならない、魔人討伐が最優先事項に変わり多くの犠牲をだしながらも砦と泉を手に入れることができたが、本当にイフリートの力まで手に入れるなんて思いもしなかった。
「どうなっているんだよ。ここは物語の世界じゃないんだぞ」
彼女が気を失い、目を覚ましてから詳しく事情はきいたがハッキリ言うとまったく納得できていない。
しかも、まだ何かを隠している可能性があった。
奇妙であり、神秘的にも見える場面があり俺の視線はレイナを自然と追うようになっていた。
「不思議だ、なんだこの気持ちは」
今まで感じたことのない、理解不能な感情に困惑してしまう。
自分はいったい何を考えているのか? この戦場という一つも心が休まるはずのない世界でなぜ彼女を思い浮かべる?