俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
柳田兄弟と片岡姉妹
合同家族旅行
柳田家と片岡家の年中行事の一つに、夏休みに行く合同家族旅行があった。
合同家族旅行というと聞こえはいいが、実は、長野県にある柳田家の別荘に、我々も便乗してお泊まりするというものだ。
私たちが小学生四年生の夏休み。
その年も例年通り、長野に来ていた。
到着すると、男子チームはすぐに釣りをするのが毎年のスケジュールだ。
普段は影が薄い父は、昔から釣りが趣味で、ここぞとばかりに活躍する。一年一度の晴れ舞台なのだ。
夕食のバーベキューの材料をたくさん釣り上げれば、「お父さんスゴい!」と称賛される。
父はこの初日に全てをかけていた。
女子チームは涼しい木陰で優雅にティータイムをするのだが、この年は夏休みの宿題に、写生の課題が出ていたので、私と香子は写生ポイントを探しに、別荘近くの林に行くことにした。
何度も来ている土地だ。問題が起こるはずがない。
その油断がダメだったのだろう。
二人で歩いていると、突然リスが飛び出してきて、びっくりした香子が、木の根っこに躓いて転んでしまったのだ。
慌てて駆け寄って、『大丈夫!?』と声をかけた。
痛そうに顔をしかめる香子は、どうやら足首を痛めてしまったようだ。
とても歩いて帰れそうにない。
『助けを呼んでくるから!』
と言うと、
『一人で待つのは絶対にイヤ!
誰かが来てくれるまで一緒に待ってて。』
香子がシクシクと泣き出したので、私も途方にくれた。
私は香子の涙にとても弱い。
泣かれると、しょうがないなといつも素直に受け入れるだけだ。
元来のんびりした性格の私は、まぁなんとかなるでしょと気持ちを立て直し、その場に座り込んだ。
運よく写生に適した場所だったので、周りのお花なんかの絵を描きつつ、私たちは助けを待っていた。