俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
*◇*◇*
「パーティの前半は記念式典なんでしょ?その間は晃ちゃんが、香子の側にいれないんだって。
婚約発表までの間、香子の側にいて欲しいって言われたの。香子も一人で待つのはイヤって言うしさ。」
「お前、パーティとか嫌いなんじゃないの?大丈夫なのか?」
意外と私のこと知ってるね。
「香子を一人にするのはかわいそうだし。もしかすると、晃ちゃんの婚約者だと聞き付けて、意地悪する人がいるかもしれないじゃん。」
「お前、昔から香子の言いなりだな。」呆れたように言われる。
うーんと考えて、お箸を置いた。
「私さぁ。香子より300グラム重く生まれてきたんだって。」
いきなり何の話だよっていう顔で凌ちゃんが見ている。
「香子って、小さい頃、しょっちゅう熱出してたでしょ?おまけに喘息まであって。
小さい時に親戚の集いがあってね。
香子が体が弱いってお母さんが言ったら、親戚のおばさんが、小さく生まれてきたからねって言ったの。
栄養がお姉ちゃんにいっちゃったのねって。
おばさんは何の気なしに言ったんだと思う。でも、私はショックだった。
私が栄養をいっぱい取ったから、香子が小さく生まれてきちゃったんだって。香子が体が弱いのは、私のせいなのかなって。
それからは、熱を出して苦しそうにしてる香子を見ると、申し訳ないなって思うようになった。
晃ちゃんは喘息の持病がある香子のために、呼吸器内科のお医者さんになったんだよね。
私、晃ちゃんが呼吸器内科を選択したって聞いたとき、本当にうれしかったの。ずっと香子のこと、守ってくれるつもりなんだなって。
私はそんな風には香子を守れないけど、香子に頼まれたことは、できるだけしてやりたいって思ってるの。
ただの自己満足なんだけどね。」
じっと見られているのに気づいて恥ずかしくなり、お箸を持つと、またコロッケをパクっと食べた。
何を語っているのだ、私は。
「それに、創立記念パーティは、彩都ホテルであるんでしょ?
立食スタイルで食事が出るから、楽しみにしててって晃ちゃんが言ってたし。少し楽しみにしてるんだ。」
えへへっと笑って答えた。
「お前のコロッケの方がうまいだろうけどな。」優しい顔で言われて、ドキッとした。
何?突然優しくされるとびっくりするんですけど。
「ただいまー」
香子がいいタイミングで帰ってきた。
「あー、お腹すいた。あっ!コロッケじゃん!莉子のコロッケ大好きー。」
のんきな声に救われて、今夜だけは香子の「大好きー」に感謝する気分になった。