俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
香子の服はお嫁様らしく、清楚で上品な物がよいらしい。次期院長夫人っていう貫禄も必要だ。
ワンピースよりも、スーツの方がよいのでは、というマダムのオススメで、華やかさに加えて、キチッとした印象もうけるオフホワイトのスーツに決まった。
うんうん、新妻って感じするなぁ。
香子も嬉しそうに頬をピンクに染めている。
私はワンピースでお願いする。
だって、スーツはすごくお値段が張るのだ。ジャケットにスカートにブラウスの三点だしね。
おまけに靴とカバンも絶対ついてくる。恵理子さんの考えはお見通しだ。
色は紺か黒。そこも譲れない。
華やかな色の服を着てる自分なんて想像もできないし。
マダムが残念そうに、
「こちらのお嫁様も少し華やかな方がよろしいかと思いますけど」と言ってくるが、私はお嫁様の姉なので、と心の中でもう一度言い、
「紺か黒のワンピースでお願いします。」とキッパリ言った。
マダムは仕方なさそうに、紺色で袖とデコルテの辺りが透けた素材の、清楚な感じのワンピースを持ってきた。
キラキラしたものや、ピラピラしたものが若干ついてはいるが、いちおう私の希望通りだ。
おぉ!思ってたよりは派手な気がするが、お祝いの席だし、これくらいは着た方がいいだろう。
試着してみると、さすがに高級ワンピース。体の線に沿っていて、すごく着心地がよい。
キラキラもピラピラも許容範囲。
恵理子さんに見てもらうと、
「莉子ちゃん、素敵!
莉子ちゃんは知的美人だもの。
紺のワンピースは、莉子ちゃんの清楚さと知的さを際立たせていいわね!」
と、意外と高評価だった。
その後、思っていた通り、靴とバッグも服に合わせて購入し、マダムとお店のスタッフ勢揃いのお見送りの中、お店を後にした。
いくらしたのかは恐ろしくて聞けない。
スタッフ全員で見送りしてもらえるくらいの金額だったことは確かだ。
「あー。楽しかったわ。
今までは、一緒にお買い物に行ったとしても、『お隣の莉子ちゃんと香子ちゃんとお買い物』だったけれど、これからは本当の娘になるんだもの。
娘とお買い物するのってこんなに楽しいものなのね。」
心底嬉しそうに恵理子さんが言う。
私は相変わらず「お隣の莉子ちゃん」のままですが。
でも、今度からは「お嫁さんの香子ちゃんのお姉さん」になる。新しい関係を喜んでくれるなら、私も嬉しいなと思うのだった。