俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
結論。
私が今までしていたのは、メイクではなかった。
初めてちゃんとフルメイクをしてもらった感想だ。
香子にメイクをしてもらったことは今までにもあったけれど、私が長時間の作業を嫌がるので、半メイクくらいの出来だったようだ。
香子の同僚の人は、重ね塗りにも程があるっていうくらい、いろんな物を小刻みに使い、メイクをしていく。
はい、目だけ上に向けてとか、目蓋を閉じてとか、口を半開きにしてとか、私は言われた指示に従うだけ。
出来上がった顔はズバリ「イリュージョン」。
これ、私が莉子って気づく人がいるのかなと心配になるレベルだ。
普段は後ろで結んでるだけの髪も、くるくると巻かれて、捻られて、止められて…と大変な騒ぎ。
最終的には、フワッとした編み込みが出来上がっていた。
恵理子さんに買っていただいたワンピースを身に付け、全身を鏡で見ると、これ誰?としか言いようがなかった。
「お姉さん、本当に香子にそっくりですよね。元がいいから、私もメイクしていて楽しかったです。」
なんと優しい同僚の人よ。
今度少しだけでも、化粧品をあなたから買うわと、心に誓う。
香子も緊張した顔つきだったが、メイクをされている内に、リラックスしてきて、全てが終わったときには、申し分のないお嬢様になっていた。
美容師さんと香子の同僚さんに、心からのお礼を言い、私たちは彩都ホテルへと向かった。