俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない

「すみません、彩西医科大の図書館司書の方ですよね?」
と声をかけられた。

振り向くと、顔見知りのドクターっぽい。名前は思い出せないけど。

「はい、そうです。」

「よかった!今日はあまりにもお綺麗なので、声をかけるのも憚られて。」
某ドクターは、はにかみながら言った。
言葉のチョイスがうまい。
いいんですよ。イリュージョンみたいって言っても。

「司書さん、双子なんですね。
お姉さん?妹さん?晃介さんのお嫁さんなんですね。」

「香子は妹なんです。私が姉です。」

「そうなんだ。だから凌介さんとも親しいんですね。ほら、僕は心臓外科なので、あなたたちが話しているのをよく見てるから。」

心臓外科のドクターか!
どうしても名前は思い出せないけど。

曖昧に笑っておいた。

「莉子!」
凌ちゃんが足早にやってくる。

「小林、今日は来てくれてありがとう。」
私の腕を取り、背後に隠すようにした。

小林ドクター!
そうだ。よく雑誌を届けてるよ。
白衣じゃないから全くわからなかった。

「凌介さん、本日はおめでとうございます。」

「ゆっくりして行ってくれ。
ちょっと莉子に用事があるので、失礼するよ。」

凌ちゃんがグイグイ引っ張って行くので、私は慌てて頭をペコリと下げ、引きずられていった。


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