俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
暗い顔で、ガラガラとデリ蔵を押して行くと、
「片岡さん!」と声がかかった。
心臓外科の小林先生だ。
あのパーティの日から、たびたび声をかけてくれる。
少しだけ話をするが、最近はちょっと扱いに困るようになってきた。
食事のお誘いを受けたりするのだ。
小林先生は穏やかな人で、いわゆるイケメンという感じではないけれど、爽やかないい人だ。
凌ちゃんの一年後輩らしい。
でも、何となくお誘いに応じる気にはならなかった。
今日も少しだけお話して、図書館に帰りかける。
「ちょっと!待ちなさい。」
一難去ってまた一難。
例の女医さんだ。パーティ以来会わなかったから、油断していた。
女医さんは、私の前に仁王立ちになって、行き先を遮る。
「あなた、どこかで見たことがあると思っていたら、凌介の家の隣の子だったのね。
凌介とは、高校の頃からの付き合いなの。あなたにも会ったことがあるわ。お家にお邪魔してたから。」
ふふんと自慢気に言う。
「ここの司書になれたのも、凌介に手を回してもらったおかげなんでしょ。
人事課の友達に聞いたわ。ほんとに図々しいのね。」
莉子は目を見開いた。
「双子のもう一人はうまく晃介さんに取りいったようだけど、まさか姉妹で柳田家に入り込もうなんて思ってないわよね。
私は、前園病院の娘なの。私と凌介が一緒になれば、お互いの病院をもっと大きくしていける。
どうすることが、柳田家のためになるか、よく考えて行動するのね。」
話し終わると、前園先生はサッと立ち去っていった。
司書に着けたのは、凌ちゃんのおかげ?
うそ。院長先生じゃなくて?
私は動揺して、その場に立ちつくした。