俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
「片岡さん、大丈夫?」
おそるおそる小林先生が声をかけてきた。
「ごめんね。前園先生の話聞いちゃったんだ。
気にしなくていいよ。あの人、誰にでも威圧的な物の言い方をするんだ。」
苦笑いで「大丈夫です。」と答える。
そんな私を、小林先生は真剣な目で見た。
「ねぇ、片岡さん。
僕と付き合ってくれないかな?
前から片岡さんのことが気になってたんだけど、あのパーティの日に偶然会って、とても綺麗だなと思ったんだ。
そして、こうして話をしているうちに、どんどん好きになった。
凌介さんは、大きな病院の息子だから、一緒になっても苦労するかもしれない。
でも、僕は開業医の息子だから、片岡さんの負担になるようなことはないよ。」
「どうかな?」
小林先生は優しく聞いてくれた。
「ごめんなさい。お気持ちはとても嬉しいです。
でも私、しばらくは恋愛はいいかなと思っていて…
本当に申し訳ないんですが…」
頭を深く下げた。
ふーっと息を深く吐いて、小林先生は言った。
「断られるだろうなとは思ってたんだ。でも、ちゃんと想いを伝えたかった。話を聞いてくれてありがとう。
また、会ったら声をかけさせてね。」
優しく微笑んで小林先生は去っていった。
私は小林先生の後ろ姿に、もう一度深く頭を下げた。
なんていい人なんだろう。
ねえ、デリ蔵。
断っちゃって、私ほんとにバカかもね。
小林先生となら、身の丈にあった恋ができたのかな。
でも、小林先生だって、お医者様だよ。
私の身の丈ってどれくらいなんだろう。
デリ蔵を押しながら、深くため息をついた。