俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
「実は転職の誘いがあって…。
迷ってるんですが、院長先生のお陰で司書をさせていただいたので、まずは院長先生にご相談してから考えようと思って。」
私は、軽く下を向きながら言った。
「僕たちのことは気にしなくていい。莉子ちゃんがしたいようにすればいいんだよ。」
優しく院長先生は言ってくれる。
「どんな仕事なんだい?」
「高校時代の友達からの誘いなんですが、その友達の伯父様が、大学で児童文学の研修をなさっているんです。
その方はたくさんの童話や絵本をお持ちなんですが、それを多くの子どもたちに読んでもらいたいということで、大学を退職することを機に、私設図書館を開設することにしたそうなんです。
友達はその開設を任されて、私に手伝う気はないかって声をかけてくれたんです。」
そうなのだ。ちょうどパーティの一週間前に、この話を聞いた。
前からしたいと思ってたことに近い仕事だが、今の職は院長先生の口利きで始めた仕事だし、勝手に辞めることはできない。
しかも、給料は確実に今より少なくなる。それで迷っているのだ。
「楽しそうな仕事じゃないか!
莉子ちゃんは元々、児童文学に携わりたくて司書を目指したんだろう?
もし、やりたいと思うなら、どんどんやってみたらいい。莉子ちゃんの人生なんだから。」
院長先生は、軽くウインクをして言った。