俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
香子の結婚に向けての準備も着々と進んでいた。
香子たちは、最初から柳田家に同居することにしたらしい。
香子は仕事を続ける上に、料理もあまり上手とはいえない。
恵理子さんと実家の母の力添えがあった方がいいと判断したようだ。
子どもができた時のことを考えても、その方がよいだろう。
柳田家の二階を若夫婦が使うため、凌ちゃんは本格的に家を出ることになったようだ。
未だアメリカから帰らぬ凌ちゃんは、本人不在のまま、恵理子さんが決めたマンションに引っ越しさせられることになった。
恵理子さんは、ファミリー向けの低層マンションの4LDKの部屋をさっさと契約し、家具やら電化製品やらを勝手に見繕いだした。
私はことある毎に呼び出され、このテーブルとこのテーブルではどっちがいいと思う?とか、冷蔵庫はこのメーカーでいいわよね?とか、細々と相談される。
いや、私ではなく、前園先生に聞いた方がよいのでは?
凌ちゃんと前園先生の縁談は、どうなっているのかはわからない。
恵理子さんと話していても、彼女の名前が出ることはないし。
でも、前園先生のいう通り、二人が結婚するなら、私好みの家具や電化製品は、結婚した直後に廃棄されること間違いなしだ。
私が選んだナチュラル木目調の家具なんて、前園先生には絶対似合わない。あの人は、黒一色の家具とか使いそう。
でも恵理子さんが相談してくるんだから、私のせいじゃない。
私は自分の趣味全開の家具を選んで、勝手に決めてやった。
これくらいの嫌がらせは許されるはずだ。
だってあの人、むちゃくちゃ意地悪だったし。ふんっ。
新しいマンションにも何度か誘われたが、そこだけは固辞した。
部屋に入ってしまったら、そこで生活するであろう二人の姿が想像されそうだったから。
驚いたのは、マンションが私の新しい職場「つぼみ文庫」のそばにあることだ。
住所を見ると、どう考えても徒歩圏内。
凌ちゃんたちに子どもが生まれて、三人で来られたらどうしよう。
いや、その頃には私も幸せな結婚をしてるはず。
そのためにもお見合いを頑張ろう。