俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない

「待たせてすまない。」
スーツ姿の男性が、私の前に座る。

「ど、どういうこと?」
私は震える声で言った。

茫然と見つめていると、自己紹介が始まった。

「柳田凌介、27歳。
彩西医科大学附属病院で心臓外科医をしている。
家族構成は、父、母、二歳年の離れた兄。
実家は、柳田総合病院で、父が院長、兄は次期院長として、呼吸器内科に勤務している。

趣味は、映画鑑賞とドライブ。ミニカーを収集すること。

性格は、頑固で短気。
ついカッとなって心無い言葉で他人を傷つけてしまうことがある。
先日も大切な人を深く傷つけてしまい、心から反省しているところだ。」

ここまで一気に言い切ると、私の目をじっと見ながら前のめりになった。

「好きな食べ物は、幼なじみの作るコロッケ。普通のとカレー味の二種類。」

「何か質問は?」

その間、瞬きもせず、ずっと凌ちゃんを見ていた。周りの音も聞こえない。

微かに顔を横に振ると、堪えきれない涙が一粒ポロっと溢れ落ちた。


凌ちゃんは私の頬に手を伸ばして、そっと指で涙を拭き取ってくれた。


「貴女のことはよく知っているので、紹介はいい。」と言い、ゆっくりと話し出した。

「片岡莉子、24歳。
彩西医科大学の図書館司書をしていたが退職。
今は友人二人と開設した私設図書館『つぼみ文庫』で働いている。

家族構成は、父、母、双子の妹。妹は10月に柳田晃介と結婚予定。

趣味は読書。

性格は、温厚で優しく、自分のことよりも周りの人のことを常に気遣っている。

のんきで、やや人に流されやすいが、決断力もある。」

そして、最後にじっと私を見つめ、
「得意な料理はコロッケ。普通のとカレー味の二種類。」
当たってるだろ?と言いたげに方眉をくっと上げた。

私はもう涙が止まらない。


静かに私を見つめていた凌ちゃんは、そっと呟いた。

「莉子、結婚してくれ。お前を愛している。」

見たことのない優しい微笑みだった。




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