俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
お茶を飲んで落ち着いたところで、凌ちゃんがポツポツと話し出した。
「莉子、パーティではキツいことを言って申し訳なかった。」
深く頭を下げる。
「さっきも言ったが、あの時からずっと深く反省している。
言い訳になるが、聞いてくれないか?」
「パーティでは、莉子があまりにも綺麗だったから動揺したんだ。
たくさんの人がいるのに、こんなに綺麗な莉子は誰かの目に止まってしまうんじゃないかと心配になった。
そしたら、案の定、小林が話しかけてただろ?
夢中で連れ去ったが、無頓着なお前を見て、腹が立ち、ひどい言葉を投げかけてしまった。
本当は、誰よりも綺麗だよって言いたかったんだ。」
「すまなかった。」
私は真っ赤になった。
こんな凌ちゃんは凌ちゃんじゃない!
恥ずかしさにウズウズしたが、コクコクと頷いた。
「あと、前園のことだけど。」
「前園がお前に絡んでることに気づいてなかった。ひどいことをいっぱい言われたんだってな。小林から話は聞いた。」
「前園は高校の同級生だ。同じ医師を目指す仲間だし、実家もお互い病院ということで、友達づきあいのようなものはあったが、個人的に二人で会うようなことはなかった。実家にも来たことはあるが、一人で来たことはない。」
「信じてほしい」
凌ちゃんは真剣な表情で言った。
私は少しうつむき加減になる。
「前園先生からは、何回も身の程知らずって言われてたの。
気にしないようにしてたのに、あのパーティの時に、凌ちゃんに『香子の付き添いのくせに』って言われたから、あぁ私はやっぱり身の程知らずだったんだって思っちゃって。
おしゃれしてたことに浮かれてたのも恥ずかしくなった。
似合いもしないのにって、凌ちゃんに言われた気がしたの。」
「子どもの頃は、いつも不機嫌で私のことを、バカとかまぬけとか言う凌ちゃんが恐かった。
大人になってからは、恐くなくなったのに、パーティの時にまたバカって言って怒鳴ったでしょ?
あぁ、やっぱり凌ちゃんは凌ちゃんなんだなって。
不機嫌で恐いままなんだなって思って逃げたの。」
「あー」と言って、凌ちゃんは頭を抱えた。
「子どもの頃は、お前、兄貴のことが好きだっただろ?
俺には見向きもせずに、晃ちゃん、晃ちゃんって嬉しそうにしている莉子にムカついてたんだ。
ずっと莉子のことが好きだったから。
子どもだったし、お前に八つ当たりしてたんだ。悪かったな。」
私はそれを聞いて、またウルッと泣きそうになる。
凌ちゃんは焦って何度も、ごめんな、悪かったと頭を下げて謝り、今日一日だけで今まで生きてきて謝った回数を越えたわ、とガックリ項垂れた。
私はおかしくなって、涙目のままクスクスと笑った。
「やっと笑ってくれた。やっぱり莉子は笑顔がいい。」
凌ちゃんはホッとしたように優しく微笑むと、そっと頬を撫でてくれた。
甘いっ!甘過ぎでしょ!
この調子だと溶けちゃうよ。