俺様な幼なじみは24年前の約束を忘れない
食べ終わると、凌ちゃんが言った。
「お前も早く支度しろよ。」
「は?なんで?」
「俺が送っていくんだから、お前も当然行くだろ。」
お前バカなのかとでも言いたげだ。
「行くわけないでしょ。なんで私が行かなきゃいけないのよ!」
「いいから支度しろよ。」
「お前、海沿いにできたカフェに行ってみたいって言ってただろ?
昼飯代は兄貴が出してくれるって言うから、予約しといた。一緒に行くぞ。」
んぐっと声が詰まる。
確かに行ってみたかったのだ。
有機野菜を使ったランチが売りの新しいカフェは、今人気急上昇の店だった。
むむむと考えたが、「…わかったよ。」としぶしぶ答える。
俺様な凌ちゃんの言いなりになるのは、本意ではなかったが、行きたかったお店に行けて、更にはランチ代もタダとなると、行かないという選択肢はなかった。
安月給で働く身には美味しすぎるエサなのだ。
「お母さーん。私、コーヒーだけちょうだい。」
ようやく身支度を終えた香子が戻ってくる。
化粧品会社に勤務している香子は、いつもメイクに一時間くらいかかる。
何種類あるの?と驚くほど重ね塗りをし、作品(顔)が出来上がるのだ。