恋を叶える魔法の呪文
「それじゃあ、時間になったらまたここに戻ってくるように!」

先生の注意事項が終わると、一斉に生徒たちは事前に決めておいた班に分かれて駆け出していく。先生の「走るなよ〜」という言葉は恐らく誰も聞いていない。

桑原夏津樹(くわはらかづき)もそうだ。すぐに友達のところへ行き、「めちゃくちゃ楽しみ!」と笑う。

高校三年生の秋、夏津樹たちはユニバーサルスタジオに遠足で来ていた。遠足で来ているのは夏津樹の通う学校だけではないようで、他校の生徒たちの姿もチラホラ見える。

「夏津樹、目の下に隈ができてるよ?ちゃんと寝れたの?」

どのアトラクションを最初に乗ろうかとパンフレットをみんなで見ていると、一緒の班になった小笠原愛梨(おがさわらあいり)に見つめられる。心配げな目にドキッとしてしまった。男子の友達がニヤニヤしているのがわかり、夏津樹は慌てて目を逸らした。

皆さんお察しの通り、夏津樹は愛梨に片想い中だ。どんな些細なことでも気付いて心配してくれる優しいところに惹かれている。
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