トンネルの向こう側
「あの、寮の方々の食事は?……」と将大が質問すると、
「はい…、ご主人が調理担当でしたので…
寮の社員には、今月は食事提供なしにしようと思っております。」
「そうですか。大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
母さん、今月分のメニューは決まってるの?」
「うん。寮の社員さんの予約数も決まってるのよ。
食材の業者さんは、総務課さんから今週分は配達ストップしてもらってるんだけど…」
「じゃあ、俺も今月末の引っ越しまでここに住んで、調理するわ!
父さんがお世話になった会社の皆さんに申し訳ないから、ご恩をお返ししなきゃ!
人事部長さん、今月末までオレをココに住まわせていただけませんか?
母の事も心配ですし、給料は要りませんので、
私に調理させていただけませんか?」
「しかし、息子さんとはいえ、調理師免許がないとちょっと… 」
「あ、調理師免許なら、持ってます。
調理専門学校を卒業してます。」
「それなら! 大丈夫です。
来週の月曜日の朝食からお願いしてもよろしいですか?」
「はい。突然で申し訳ございませんが宜しくお願いします。」
人事部長さんが帰られてから、オレは恭弥さんと岡部さんに連絡した。