トンネルの向こう側
「母さん、寮のことなんだけどさ、
葬儀の間、掃除とかしてないならオレやるけど、教えてくれる?」

「あ、そうね。 お掃除は業者さんがやってるはずだけど、郵便物とか見てこなくちゃ!」

「教えてくれたら、オレがやろうか?」

「うん。じゃあ郵便物ボックスの鍵は事務所のこの鍵で…
外の郵便受けから持ってきて下駄箱の横の個人用のボックスに入れるのよ。」

母さんと一緒に教えてもらって個人用ボックスに入れていく。

そのあと、厨房も中に入り父さんが使っていた白衣やエプロン、長靴を確認する。

棚などを開けて皿や食器類、調味料を確認してからオレは包丁を久しぶりに研いだ。

さすが父さんだなぁ〜 父さん専用包丁は、全てきちんと手入れされているのがわかる。

数日前までここで働いてたのかと思うとなんとも切なくなり、涙が出てきた。

母さんが了承してくれたらこの包丁全部、オレが受け継ごう! 

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