トンネルの向こう側
「母さん、味付けはどう? 
レシピ通りにしてるけど、濃い?薄い?」

「大丈夫だよ。美味しい! ありがとう将大。」

「社員さん達も残さず食べてくれたから安心はしたんだけどさ〜
久しぶりの調理場だから、カンも鈍っててさ〜
腕や背中も痛いんだよ〜ハハハ!」

「もう〜、若いのに年寄りみたいなんだから、ハハハ! 将大は背が高いから流し台が低いからかな? 身長いくつ?」

「身長? 183cm。 
ここの厨房はザ・昭和!だもんなぁ
確かに洗いものする時の腰が痛いんだわ。
父さんは身長何センチだった?」

「お父さんは173cmだったよ。
将大より10cmも低かったから丁度良かったのかもね!
お父さんも私も、ザ・昭和だし〜!ハハハ」

「だからか〜、父さんのパジャマ借りてるけどズボンの裾が短いんだよ〜 ハハハ!」

母さんもオレも、
忙しくて良かったのかもしれない。
それじゃあないと、何も手につかず泣いてばかりいたかもしれないから…。

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