エデンを目指して
オアシス
「これはこれは。良く来てくださいました。私が村長です」
ロキに連れられて、老人が入ってきた。
「ウォーカーが来てくれれば百人力ですわ」
「グリンです」
「銀嶺です」
二人は軽く挨拶した。
「ところで、魔界の襲撃はどのくらいの頻度ですか?」
「そうですな。二、三日おき位ですかな」
「どんな奴等なんです?」
「黒い大きな蜥蜴みたいな奴で、羽根があって空を飛びます。それと、大きな口に鋭い歯があって、尻尾もありますな。時々口から凍るような冷たい息を吐くんです。それを浴びた人間は凍り付いてしまいます」
「ふーん。中々手強そうだな」
「ええ。化け物ですよ」
「守備隊の隊長にあって話を聞きたいが」
「お待ちください。呼んできます」
村長はそう言って教会を出ていった。
「空を飛ぶのね」
「そうだな……カイトで空中戦になるな」
「結構ハードになりそうね」
「うん。覚悟しておけよ」
二人が話し込んでいると、聖歌隊の少年達が聖歌を歌い始めた。それは澄んだ声で、そのまま歌に乗って天へ昇天しそうな、美しいものだった。
しばらくすると村長が隊長を連れてやって来た。
「あんたが守備隊長?」
「ああ、そうだ。あんたらはウォーカーかい?」
「ああ、この村を襲う魔界について知りたいんだ。普段どうやって戦っているかもな」
「奴等は空を飛んで来るんだ。冷たい息を吐いて、相手を凍りつかせる奴等もいる。俺達は普段は馬に乗って、剣で戦ってるんだが、ウォーカーみたいに火を扱えるやつが居なくてね。結構難儀してるのさ」
「火なら俺が使える」
「そいつは助かるぜ」
「今度魔界が攻めてきたら、俺達を呼んでくれ」
「分かった」
「ところでお二方、この村には美しい公衆浴場があるんですが、そちらでアストラル体のクリーンアップを図っては如何ですか?」
「それは良いな。ぜひ使わせてもらうよ」
「こちらです」
村長はそう言うと、二人を連れて教会を出た。
大通りを歩いて、公衆浴場の前まで来ると、村長は
「この奥です」
と二人を入り口へ促した。建物の外壁は日干し煉瓦だが、中へ入ると壁面は美しいタイル張りだった。青と白の爽やかな配色が壁一面を覆っている。脱衣所は木の板が張られた明るい部屋で、銀嶺はワクワクしながら服を脱いだ。浴室はやはり白と青のタイル張りで、広いバスタブが壁際に設えてある。銀嶺は一通り辺りを見回して満足すると、湯船に浸かった。ユラユラと水面が揺らいでまぶしい光を反射し、歪んだタイルの模様と相まって、幻想的な雰囲気を醸し出していた。その光の綾に囲まれていると、銀嶺のアストラル体もユラユラと揺れながら、エネルギーを増していくのだった。
グリンもまた美しい浴槽に感激していた。戦いの前に美に触れてアストラル体のエネルギーを上げておく事は重要である。このオアシスの村は、風景も美しいが、建物もとりわけ美しかった。この美しい村の美しい風呂に入っていると、魔界の事など忘れてしまいそうである。だが、忘れるわけにはいかない――
二人は風呂から上がると、オアシスを散策することにした。青く澄んだ水が太陽の光を反射して美しい。
「何だか、こうして一緒に歩いていると、デートみたいね」
銀嶺がフフフと笑う。
「何を呑気なこと言ってるんだ? 俺達は戦いに来たんだぞ」
「そうだけど……」
「まあ良いさ」
二人はゆっくり湖畔を散策し、夕方教会へと戻った。二人が椅子に座って話し始めた時である。
「来たぞ! 魔界だ!」
外から叫び声が聞こえた。
「銀嶺、行くぞ!」
二人はスペースカイトを持って外へ出た。武蔵も後を追う。オアシスの向こうに魔界が飛来して来るのが見えた。二人はカイトに乗ると、武蔵を乗せてオアシスの上を飛んだ。大通りを守備隊が移動していくのが見える。魔界の一群が守備隊に向かって吠え立てた。二匹の魔界が急降下して、守備隊に突っ込んだ。大きな口を開けると、ギザギザの歯で守備隊の肩に噛みつく。守備隊の仲間が剣を抜いて魔界の頬を切りつけた。
ギャース!
けたたましい声を上げて、魔界はコールド・ブレスを吐きかけた。一瞬で凍りつく守備兵。
「不味いぞ。 急げ、銀嶺!」
グリンは叫ぶと、スピードを上げた。二人は思い切り加速して、魔界勢力の群へ突っ込んだ。武蔵がカイトの上から遠吠えすると、魔界は怯えて守備隊から離れた。すかさず切り込む二人。グリンは火炎を浴びせ、銀嶺は剣で一匹の魔界を切り裂いた。次の瞬間、二匹の魔界後ろに回り込み、銀嶺に体当たりした。バランスを失って、カイトから落ちる銀嶺。
「銀嶺!」
グリンが叫んだ。地面へ身体を打ち付けて動けない銀嶺に魔界が群れになって襲いかかる。銀嶺は慌てて剣を振った。次の瞬間、
パシュッ
剣から疾風が飛び出した。疾風は魔界を一気に切り裂いた。風で裂かれてバラバラになる魔界。
「どういう事?」
銀嶺はまじまじと剣を見つめた。
「やったな、銀嶺! ウォーカーの技を獲得したんだ」
「ウォーカーの技?」
ロキに連れられて、老人が入ってきた。
「ウォーカーが来てくれれば百人力ですわ」
「グリンです」
「銀嶺です」
二人は軽く挨拶した。
「ところで、魔界の襲撃はどのくらいの頻度ですか?」
「そうですな。二、三日おき位ですかな」
「どんな奴等なんです?」
「黒い大きな蜥蜴みたいな奴で、羽根があって空を飛びます。それと、大きな口に鋭い歯があって、尻尾もありますな。時々口から凍るような冷たい息を吐くんです。それを浴びた人間は凍り付いてしまいます」
「ふーん。中々手強そうだな」
「ええ。化け物ですよ」
「守備隊の隊長にあって話を聞きたいが」
「お待ちください。呼んできます」
村長はそう言って教会を出ていった。
「空を飛ぶのね」
「そうだな……カイトで空中戦になるな」
「結構ハードになりそうね」
「うん。覚悟しておけよ」
二人が話し込んでいると、聖歌隊の少年達が聖歌を歌い始めた。それは澄んだ声で、そのまま歌に乗って天へ昇天しそうな、美しいものだった。
しばらくすると村長が隊長を連れてやって来た。
「あんたが守備隊長?」
「ああ、そうだ。あんたらはウォーカーかい?」
「ああ、この村を襲う魔界について知りたいんだ。普段どうやって戦っているかもな」
「奴等は空を飛んで来るんだ。冷たい息を吐いて、相手を凍りつかせる奴等もいる。俺達は普段は馬に乗って、剣で戦ってるんだが、ウォーカーみたいに火を扱えるやつが居なくてね。結構難儀してるのさ」
「火なら俺が使える」
「そいつは助かるぜ」
「今度魔界が攻めてきたら、俺達を呼んでくれ」
「分かった」
「ところでお二方、この村には美しい公衆浴場があるんですが、そちらでアストラル体のクリーンアップを図っては如何ですか?」
「それは良いな。ぜひ使わせてもらうよ」
「こちらです」
村長はそう言うと、二人を連れて教会を出た。
大通りを歩いて、公衆浴場の前まで来ると、村長は
「この奥です」
と二人を入り口へ促した。建物の外壁は日干し煉瓦だが、中へ入ると壁面は美しいタイル張りだった。青と白の爽やかな配色が壁一面を覆っている。脱衣所は木の板が張られた明るい部屋で、銀嶺はワクワクしながら服を脱いだ。浴室はやはり白と青のタイル張りで、広いバスタブが壁際に設えてある。銀嶺は一通り辺りを見回して満足すると、湯船に浸かった。ユラユラと水面が揺らいでまぶしい光を反射し、歪んだタイルの模様と相まって、幻想的な雰囲気を醸し出していた。その光の綾に囲まれていると、銀嶺のアストラル体もユラユラと揺れながら、エネルギーを増していくのだった。
グリンもまた美しい浴槽に感激していた。戦いの前に美に触れてアストラル体のエネルギーを上げておく事は重要である。このオアシスの村は、風景も美しいが、建物もとりわけ美しかった。この美しい村の美しい風呂に入っていると、魔界の事など忘れてしまいそうである。だが、忘れるわけにはいかない――
二人は風呂から上がると、オアシスを散策することにした。青く澄んだ水が太陽の光を反射して美しい。
「何だか、こうして一緒に歩いていると、デートみたいね」
銀嶺がフフフと笑う。
「何を呑気なこと言ってるんだ? 俺達は戦いに来たんだぞ」
「そうだけど……」
「まあ良いさ」
二人はゆっくり湖畔を散策し、夕方教会へと戻った。二人が椅子に座って話し始めた時である。
「来たぞ! 魔界だ!」
外から叫び声が聞こえた。
「銀嶺、行くぞ!」
二人はスペースカイトを持って外へ出た。武蔵も後を追う。オアシスの向こうに魔界が飛来して来るのが見えた。二人はカイトに乗ると、武蔵を乗せてオアシスの上を飛んだ。大通りを守備隊が移動していくのが見える。魔界の一群が守備隊に向かって吠え立てた。二匹の魔界が急降下して、守備隊に突っ込んだ。大きな口を開けると、ギザギザの歯で守備隊の肩に噛みつく。守備隊の仲間が剣を抜いて魔界の頬を切りつけた。
ギャース!
けたたましい声を上げて、魔界はコールド・ブレスを吐きかけた。一瞬で凍りつく守備兵。
「不味いぞ。 急げ、銀嶺!」
グリンは叫ぶと、スピードを上げた。二人は思い切り加速して、魔界勢力の群へ突っ込んだ。武蔵がカイトの上から遠吠えすると、魔界は怯えて守備隊から離れた。すかさず切り込む二人。グリンは火炎を浴びせ、銀嶺は剣で一匹の魔界を切り裂いた。次の瞬間、二匹の魔界後ろに回り込み、銀嶺に体当たりした。バランスを失って、カイトから落ちる銀嶺。
「銀嶺!」
グリンが叫んだ。地面へ身体を打ち付けて動けない銀嶺に魔界が群れになって襲いかかる。銀嶺は慌てて剣を振った。次の瞬間、
パシュッ
剣から疾風が飛び出した。疾風は魔界を一気に切り裂いた。風で裂かれてバラバラになる魔界。
「どういう事?」
銀嶺はまじまじと剣を見つめた。
「やったな、銀嶺! ウォーカーの技を獲得したんだ」
「ウォーカーの技?」