エデンを目指して
ウォーカーの技
「そうだ。今のはお前の風の属性のアストラルエネルギーを受けて、剣が反応したんだ……よし、次が来るぞ」
銀嶺は立ち上がると、転がっていたカイトに乗った。武蔵がカイトに飛び乗る。銀嶺は再び空中に浮かぶと、風魔法で魔界の群れを切り裂いた。魔界は剣から飛び出た疾風で、たちまち切り裂かれていった。
「……凄いわ」
銀嶺はあれが自分がやった事とは思えなかった。それほど、凄まじい勢いで、風が魔界を切り裂いたのである。武蔵がワンワン吠えて、魔界を追い立てた。魔界は逃げて、グリンの方へ向かう。待ってましたとばかりに、グリンは火炎を浴びせた。地上からも、守備隊の矢が飛んだ。銀嶺はカイトから飛んで空中をスライドしながら魔界を切り裂いていった。瞬く間に魔界は殲滅されていった。
「終わったな」
グリンが銀嶺に声をかける。
「そうね……」
「お二方! 良くやって下さいました。お陰で助かりました。これから、防御成功を祝って祝宴をあげますから、広場へ入いらしてください」
守備隊の隊長が叫んだ。
「了解した」
二人が広場へ行くと、既に守備隊の面々が集まっていた。
「来ましたな」
隊長が声をかける。広場にはテーブルがセットされ、お茶が振る舞われていた。
「今日は皆御苦労だった。今日の魔界の撃退は、ウォーカーのお二方の働きによるところが大きい。皆で感謝しよう」
「そうだな! グリンさん、銀嶺さん、ありがとうございました」
皆は口々に二人へ礼をした。
「ありがとう。そう言ってもらえると俺達も嬉しいぜ。しかし、いつまでもこんな風に、奴等が襲って来てから対応してるんじゃ、いたちごっこだ。近くに魔界の巣があるんだろう? 皆でそこを叩いたらどうだ?」
グリンが提案した。
「そうですな。実はここから数キロ離れた枯れ木林に巣があることが分かっています。ウォーカーのお二人が来てくれるなら心強い」
「次に村が襲われる前に叩こう。準備しておいてくれ」
「分かりました」
銀嶺とグリンは教会へ戻った。神父が蝋燭を片付けている所だった。
「すみません、神父様」
グリンが話しかけた。
「何でしょうか?」
「俺達、数日後には魔界の巣へ行くんです。それまで、聖歌隊の歌を聴かせてもらえませんか?」
「ええ。良いですよ。明日から毎日、朝昼晩と歌わせましょう」
「有り難うございます」
グリンはそう言うと、長椅子に寝転がる。
「エネルギーを上げておこうって訳ね」
「フフ……そうだな」
「ねえ、グリンは何でウォーカーになったの?」
「俺は……俺の住んでいた惑星ハシマは辺境の星でね。時々魔界に襲われていたんだ。ここバザールと同じ様にな。あれは俺が十四の時だった。俺が住んでいた砂漠の街を魔界が襲撃したんだ。その時駆け付けて街を救ってくれたのがウォーカーの集団でね。子供心に、格好良い、と憧れたものさ。次の年からウォーカー養成所に入ったんだ」
グリンは天井を見ながら遠い目をして言った。
「そうだったのね……その星は今は?」
「高級勢力の尽力もあって、今は安全になってる。前にも話したが、自然に溢れた良い星だよ」
「ふーん。ちょっと見てみたいわね」
「そうだな。いつか連れていってやるよ」
「ワン!」
武蔵が訴える様に吠えた。
「もちろんおまえもさ、武蔵」
グリンはそう言って笑うと、武蔵の頭を撫でた。
三日後、一行は魔界の巣へ向かって村を出発した。オアシスを出ると巨大な砂丘があり、ちょっとした山の様である。
「この山を越えた先に巣があるんです」
隊長が説明する。
「巣には何匹位居るんだ?」
「判りませんが、多分百は居るんじゃないかと」
「多分、こちらが巣を見付けたら、向こうもこっちに気付いて襲って来るだろう。そいつらはあんたらに任せて、俺と銀嶺で巣へ突っ込む」
「……分かりました。大丈夫ですか?」
「多分な」
巨大な砂山の頂点まで登ると、遠くに灰色の枯れ木林が見えた。枝に無数の魔界が留まっている。
「あれだな……確かに百は居るな」
「ええ……アッ、気付かれたようです」
見ると、群れの一部が飛び立って、こちらへ向かって来る。
「よし、俺達はあれを迂回して突っ込む。頼んだぞ!」
「了解!」
グリンと銀嶺と武蔵はカイトで飛び立った。飛んでくる群れを大きく迂回して、巣へ向かう。二人は巣の周りを旋回した。武蔵が遠吠える。魔界は武蔵の声にすくんで、枝から飛び立てないでいた。
「良し! 行くぞ、銀嶺!」
グリンは火炎を吐きながら巣へ突っ込んだ。勢い良く吹き出す緑色の炎で魔界が焼かれていく。銀嶺はカイトから飛んで空中をスライドすると、今まさに飛び立とうとする魔界を真横から切り付けた。魔界が飛び立とうとする度に、武蔵が吠えて牽制する。苛立った魔界は銀嶺に一斉にコールド・ブレスを浴びせた。
銀嶺は立ち上がると、転がっていたカイトに乗った。武蔵がカイトに飛び乗る。銀嶺は再び空中に浮かぶと、風魔法で魔界の群れを切り裂いた。魔界は剣から飛び出た疾風で、たちまち切り裂かれていった。
「……凄いわ」
銀嶺はあれが自分がやった事とは思えなかった。それほど、凄まじい勢いで、風が魔界を切り裂いたのである。武蔵がワンワン吠えて、魔界を追い立てた。魔界は逃げて、グリンの方へ向かう。待ってましたとばかりに、グリンは火炎を浴びせた。地上からも、守備隊の矢が飛んだ。銀嶺はカイトから飛んで空中をスライドしながら魔界を切り裂いていった。瞬く間に魔界は殲滅されていった。
「終わったな」
グリンが銀嶺に声をかける。
「そうね……」
「お二方! 良くやって下さいました。お陰で助かりました。これから、防御成功を祝って祝宴をあげますから、広場へ入いらしてください」
守備隊の隊長が叫んだ。
「了解した」
二人が広場へ行くと、既に守備隊の面々が集まっていた。
「来ましたな」
隊長が声をかける。広場にはテーブルがセットされ、お茶が振る舞われていた。
「今日は皆御苦労だった。今日の魔界の撃退は、ウォーカーのお二方の働きによるところが大きい。皆で感謝しよう」
「そうだな! グリンさん、銀嶺さん、ありがとうございました」
皆は口々に二人へ礼をした。
「ありがとう。そう言ってもらえると俺達も嬉しいぜ。しかし、いつまでもこんな風に、奴等が襲って来てから対応してるんじゃ、いたちごっこだ。近くに魔界の巣があるんだろう? 皆でそこを叩いたらどうだ?」
グリンが提案した。
「そうですな。実はここから数キロ離れた枯れ木林に巣があることが分かっています。ウォーカーのお二人が来てくれるなら心強い」
「次に村が襲われる前に叩こう。準備しておいてくれ」
「分かりました」
銀嶺とグリンは教会へ戻った。神父が蝋燭を片付けている所だった。
「すみません、神父様」
グリンが話しかけた。
「何でしょうか?」
「俺達、数日後には魔界の巣へ行くんです。それまで、聖歌隊の歌を聴かせてもらえませんか?」
「ええ。良いですよ。明日から毎日、朝昼晩と歌わせましょう」
「有り難うございます」
グリンはそう言うと、長椅子に寝転がる。
「エネルギーを上げておこうって訳ね」
「フフ……そうだな」
「ねえ、グリンは何でウォーカーになったの?」
「俺は……俺の住んでいた惑星ハシマは辺境の星でね。時々魔界に襲われていたんだ。ここバザールと同じ様にな。あれは俺が十四の時だった。俺が住んでいた砂漠の街を魔界が襲撃したんだ。その時駆け付けて街を救ってくれたのがウォーカーの集団でね。子供心に、格好良い、と憧れたものさ。次の年からウォーカー養成所に入ったんだ」
グリンは天井を見ながら遠い目をして言った。
「そうだったのね……その星は今は?」
「高級勢力の尽力もあって、今は安全になってる。前にも話したが、自然に溢れた良い星だよ」
「ふーん。ちょっと見てみたいわね」
「そうだな。いつか連れていってやるよ」
「ワン!」
武蔵が訴える様に吠えた。
「もちろんおまえもさ、武蔵」
グリンはそう言って笑うと、武蔵の頭を撫でた。
三日後、一行は魔界の巣へ向かって村を出発した。オアシスを出ると巨大な砂丘があり、ちょっとした山の様である。
「この山を越えた先に巣があるんです」
隊長が説明する。
「巣には何匹位居るんだ?」
「判りませんが、多分百は居るんじゃないかと」
「多分、こちらが巣を見付けたら、向こうもこっちに気付いて襲って来るだろう。そいつらはあんたらに任せて、俺と銀嶺で巣へ突っ込む」
「……分かりました。大丈夫ですか?」
「多分な」
巨大な砂山の頂点まで登ると、遠くに灰色の枯れ木林が見えた。枝に無数の魔界が留まっている。
「あれだな……確かに百は居るな」
「ええ……アッ、気付かれたようです」
見ると、群れの一部が飛び立って、こちらへ向かって来る。
「よし、俺達はあれを迂回して突っ込む。頼んだぞ!」
「了解!」
グリンと銀嶺と武蔵はカイトで飛び立った。飛んでくる群れを大きく迂回して、巣へ向かう。二人は巣の周りを旋回した。武蔵が遠吠える。魔界は武蔵の声にすくんで、枝から飛び立てないでいた。
「良し! 行くぞ、銀嶺!」
グリンは火炎を吐きながら巣へ突っ込んだ。勢い良く吹き出す緑色の炎で魔界が焼かれていく。銀嶺はカイトから飛んで空中をスライドすると、今まさに飛び立とうとする魔界を真横から切り付けた。魔界が飛び立とうとする度に、武蔵が吠えて牽制する。苛立った魔界は銀嶺に一斉にコールド・ブレスを浴びせた。