エデンを目指して
突進
翌日、作戦は決行された。武器を持って、カイトに乗り込んだ一同にグリンがエールを送る。
「良し! 皆、いよいよ突撃だ。何とか敵の司令官を殺って、シャンバラへ凱旋しようぜ! 行くぞ! 付いてこい!」
グリンがスペースカイトを飛ばす。銀嶺は後を追いながら周囲を見渡した。敵の城を包囲したウォーカーの一団が、砂漠を疾走する姿が見えた。いよいよ始まったのだ。銀嶺は軽く武者震いした。猛スピードで砂漠を進むと、遠くに要塞が見えてきた。城壁の門から、馬に乗った魔界の騎兵と、ドラゴンが現れてウォーカーを迎え撃つ。
「出来るだけあいつらには構うな! 俺達の目標は司令官だ!」
グリンはそう叫ぶと、カイトの高度を上げた。もうすぐ騎兵隊とすれ違う――そう思った時である。漆黒の魔馬が地面を大きく蹴り上げた。そのまま、グリン達の高度まで飛び上がり、空を駆けた。ドラゴンも黒い翼をバサリと羽ばたかせると、空高く飛んでくる。
「クソッ! 奴等飛べるのか!」
グリンが舌打ちした。
「俺に任せろ!」
タラは叫ぶと、雷撃を食らわせる。向かってくる騎兵とドラゴンの半分が、消滅した。
「人形《ひとがた》の魔界も居るのね!」
銀嶺が驚きの声を上げる。
「ああ、魔界でも上位クラスは人形だ。仕方ない、あいつらを殺るぞ!」
グリンはそう言って騎兵とドラゴンの一群に火炎放射器を向けた。
「どうやら、今回は本気を出さないといけないらしいな!」
火炎放射器から巨大な緑色の炎が吹き出し、広がって、瞬く間に空中を緑の火の波が走った。それはまるで突如として天空に緑の海が出現したかの様であった。波は大きくうねり、騎兵とドラゴンを飲み込んでゆく。炎に飲まれた魔界は次々に消滅していった。
「今の何なの? グリンたら、こんな凄い技持っていたのね!」
銀嶺は興奮して叫んだ。一騎、炎の波を飛び越えた騎兵が、グリンをかわして銀嶺の目の前に現れた。いぶし銀の剣を振りかざして銀嶺に迫る。銀嶺は咄嗟に剣を抜き、かち合った刃が火花を散らす。武蔵が吠えた。騎兵は銀嶺から離れてそのまま走り抜け、すぐ様ターンすると後ろから銀嶺の背中を切り付けた。ジャケットが大きく裂け、背中に鋭い傷が付く。
「ウッ!」
銀嶺はうめいてカイトの上に膝を付いた。
「銀嶺! 大丈夫か?」
グリンが振り向いて、騎兵に炎を浴びせた。騎兵は霧散した。グリンは銀嶺に並走する。銀嶺の背中に焼け付くような痛みが走った。その傷口から、何か邪悪なものがジワジワ入り込む。銀嶺は頭を振った。
「私……私は……! 一体こんな所で何をしているの!? こんな若さで死にたくなかった……地球で長生きして、結婚もしたかったわ! 子供だって欲しかった……孫に囲まれて幸せそうに笑う父さんと母さんの顔が見たかった! それが……それが、あんな所で死んじゃって、それで、こんな所で剣なんか振り回して! 私は何をやっているの……」
銀嶺は半狂乱で泣き出した。カイトの上でじたばたと暴れ出す。
「魔界の精神波が入り込んだな……待ってろ。武蔵、遠吠えて魔界を寄せ付けるな! 万が一来た奴は、タラ、頼むぞ!」
「了解だ!」
武蔵の遠吠えを聞きながら、グリンは銀嶺に特大の炎を浴びせた。シュウウッ! 魔の焼ける匂いが辺りに拡散する。
「うう……」
銀嶺はしばらく身悶えて居たが、やがて正気に戻った。
「グリン……」
「おう。大丈夫か?」
「……ええ」
「よし、次行くぞ!」
三人は再び編成を立て直して、城へ向かった。巨大なドラゴンが数頭三人の目の前に迫る。ドラゴンの吐き出す溶岩液をかわし、電気ショックを避けると、銀嶺は竜巻をイメージして剣を振った。
ヒュウウ!
風が巻いて、数頭のドラゴンと騎兵が竜巻に巻き込まれる。竜巻は魔界をグルグルと翻弄しながら、彼等を天高く巻き上げた。その後、地表に向かって急降下する。
グワッ!
凄まじい勢いで、魔界は地表に叩き付けられ、幾多の肉片へ分裂して消えていった。
「これか! 風使いの技は!」
タラが感心したように叫ぶ。
「中々凄いだろう?」
グリンが振り向いて同意を求めた。
「ああ、大したものだぜ。地球人がまさかここまでやるとはな!」
「だよな!」
二人に認められて、銀嶺は悪い気はしなかった。自分でも、確かに凄い技だと思う。
「アオーン!」
武蔵も同意する様に遠吠えした。向かってくる魔界の足が乱れる。そこへタラが雷撃を食らわせて、銀嶺達の行く手の敵は居なくなった。邪魔者が消えて、城がハッキリと見える。灰色の禍々し石造りの巨大な建造物が、銀嶺の視界に迫った。
「良し、このまま城へ突っ込むぞ!」
グリンはそう叫ぶと、カイトのスピードを上げた。
「良し! 皆、いよいよ突撃だ。何とか敵の司令官を殺って、シャンバラへ凱旋しようぜ! 行くぞ! 付いてこい!」
グリンがスペースカイトを飛ばす。銀嶺は後を追いながら周囲を見渡した。敵の城を包囲したウォーカーの一団が、砂漠を疾走する姿が見えた。いよいよ始まったのだ。銀嶺は軽く武者震いした。猛スピードで砂漠を進むと、遠くに要塞が見えてきた。城壁の門から、馬に乗った魔界の騎兵と、ドラゴンが現れてウォーカーを迎え撃つ。
「出来るだけあいつらには構うな! 俺達の目標は司令官だ!」
グリンはそう叫ぶと、カイトの高度を上げた。もうすぐ騎兵隊とすれ違う――そう思った時である。漆黒の魔馬が地面を大きく蹴り上げた。そのまま、グリン達の高度まで飛び上がり、空を駆けた。ドラゴンも黒い翼をバサリと羽ばたかせると、空高く飛んでくる。
「クソッ! 奴等飛べるのか!」
グリンが舌打ちした。
「俺に任せろ!」
タラは叫ぶと、雷撃を食らわせる。向かってくる騎兵とドラゴンの半分が、消滅した。
「人形《ひとがた》の魔界も居るのね!」
銀嶺が驚きの声を上げる。
「ああ、魔界でも上位クラスは人形だ。仕方ない、あいつらを殺るぞ!」
グリンはそう言って騎兵とドラゴンの一群に火炎放射器を向けた。
「どうやら、今回は本気を出さないといけないらしいな!」
火炎放射器から巨大な緑色の炎が吹き出し、広がって、瞬く間に空中を緑の火の波が走った。それはまるで突如として天空に緑の海が出現したかの様であった。波は大きくうねり、騎兵とドラゴンを飲み込んでゆく。炎に飲まれた魔界は次々に消滅していった。
「今の何なの? グリンたら、こんな凄い技持っていたのね!」
銀嶺は興奮して叫んだ。一騎、炎の波を飛び越えた騎兵が、グリンをかわして銀嶺の目の前に現れた。いぶし銀の剣を振りかざして銀嶺に迫る。銀嶺は咄嗟に剣を抜き、かち合った刃が火花を散らす。武蔵が吠えた。騎兵は銀嶺から離れてそのまま走り抜け、すぐ様ターンすると後ろから銀嶺の背中を切り付けた。ジャケットが大きく裂け、背中に鋭い傷が付く。
「ウッ!」
銀嶺はうめいてカイトの上に膝を付いた。
「銀嶺! 大丈夫か?」
グリンが振り向いて、騎兵に炎を浴びせた。騎兵は霧散した。グリンは銀嶺に並走する。銀嶺の背中に焼け付くような痛みが走った。その傷口から、何か邪悪なものがジワジワ入り込む。銀嶺は頭を振った。
「私……私は……! 一体こんな所で何をしているの!? こんな若さで死にたくなかった……地球で長生きして、結婚もしたかったわ! 子供だって欲しかった……孫に囲まれて幸せそうに笑う父さんと母さんの顔が見たかった! それが……それが、あんな所で死んじゃって、それで、こんな所で剣なんか振り回して! 私は何をやっているの……」
銀嶺は半狂乱で泣き出した。カイトの上でじたばたと暴れ出す。
「魔界の精神波が入り込んだな……待ってろ。武蔵、遠吠えて魔界を寄せ付けるな! 万が一来た奴は、タラ、頼むぞ!」
「了解だ!」
武蔵の遠吠えを聞きながら、グリンは銀嶺に特大の炎を浴びせた。シュウウッ! 魔の焼ける匂いが辺りに拡散する。
「うう……」
銀嶺はしばらく身悶えて居たが、やがて正気に戻った。
「グリン……」
「おう。大丈夫か?」
「……ええ」
「よし、次行くぞ!」
三人は再び編成を立て直して、城へ向かった。巨大なドラゴンが数頭三人の目の前に迫る。ドラゴンの吐き出す溶岩液をかわし、電気ショックを避けると、銀嶺は竜巻をイメージして剣を振った。
ヒュウウ!
風が巻いて、数頭のドラゴンと騎兵が竜巻に巻き込まれる。竜巻は魔界をグルグルと翻弄しながら、彼等を天高く巻き上げた。その後、地表に向かって急降下する。
グワッ!
凄まじい勢いで、魔界は地表に叩き付けられ、幾多の肉片へ分裂して消えていった。
「これか! 風使いの技は!」
タラが感心したように叫ぶ。
「中々凄いだろう?」
グリンが振り向いて同意を求めた。
「ああ、大したものだぜ。地球人がまさかここまでやるとはな!」
「だよな!」
二人に認められて、銀嶺は悪い気はしなかった。自分でも、確かに凄い技だと思う。
「アオーン!」
武蔵も同意する様に遠吠えした。向かってくる魔界の足が乱れる。そこへタラが雷撃を食らわせて、銀嶺達の行く手の敵は居なくなった。邪魔者が消えて、城がハッキリと見える。灰色の禍々し石造りの巨大な建造物が、銀嶺の視界に迫った。
「良し、このまま城へ突っ込むぞ!」
グリンはそう叫ぶと、カイトのスピードを上げた。