エデンを目指して
帰還
崩壊を始めた城の階段を一目散に駆け上がって、一同は最上階の司令室へ雪崩れ込んだ。突入した時に乗ってきたスペースカイトが転がっている。
「良し、これに乗って帰還するぞ!」
グリンはそう言ってキリンを担いだままカイトに乗った。銀嶺は武蔵をカイトに乗せる。準備を終えた三人は一気に窓から飛び出した。
ガラガラ……!
三人が空中を飛び出すと同時に、天守閣が崩れ始める。三人は一目散に基地目掛けてカイトを飛ばした。途中銀嶺が振り返ると、巨大な城が全壊して崩れ落ちた所だった。
「危なかったわね。逃げ遅れていたら――」
「まあな。だが間に合ったし、コイツも助けることが出来た」
グリンはキリンの方へ顎をしゃくった。
「その子、どうするの?」
「そうだな。魔界に囚われていた訳だし、一応このまま俺達とシャンバラまで連れていく。首都の治療施設で見てもらった方が良い」
「そうね……」
銀嶺はそう答えてハッとした。さっきから今までずっと頭を悩ませていた魔界の陰性エネルギーを感じないのだ。
「本当にやったんだわ」
銀嶺は喜びの笑みを漏らした。
宇宙船に戻ると、中央司令部から連絡が入った。今回の惑星ハザール奪還作戦は成功。その功績を称えて、今回の作戦に参加したウォーカーはシャンバラヘ戻った後、首都カイラスで凱旋パレードに参加する事となった。
「凱旋パレードですって。凄いわね!」
銀嶺はトニの肩を叩いた。
「そうですね」
「正直、そこまでやったっていう実感が湧かないけど」
「そんな事ありませんよ。魔界の司令官を殺っただけでも凄い事です」
「いずれにせよ、これでハザールは元に戻る。さっき聞いたんだが、惑星の高波動エネルギーフィールドが回復したそうだ」
グリンはそう言って晴々とした笑顔を見せた。
「やっぱりそうなのね。さっきから頭がクリアだもの」
「そうだな。しかし銀嶺、新人ウォーカーとしては良くやったぞ」
「そうさ。始めは地球人のウォーカーなんてどうかと思ったが、上出来だ」
タラがバンッと銀嶺の背中を叩いた。
「ツッ!」
銀嶺は胸を押さえる。
「何だ、アイツにやられた所か?」
グリンが心配そうな声を出した。あの後念のためグリンの火炎で傷口を炙ったのだが、痛みは取れなかった。
「ええ。ちょっと痛むのよ」
「アストラル体が損傷したかも知れんな。カイラスで集中治療を受けると良い」
「ええ。そうするわ」
旗艦の宇宙船から連絡が入った。
これから皆でシャンバラヘ帰還する――
順番に宇宙船が飛び立っていった。黄昏時の黄金の光を反射して、船体が金色に輝いている。
「英雄達の帰還という訳ね」
銀嶺はシートに座ると背もたれに身体を沈めた。武蔵を膝に乗せたままゆっくり目を閉じて、武蔵の背中を撫でる。
「エデンが完成すれば、もうお前達は人間ではなくなる――」
魔界の司令官の声が脳内に甦った。銀嶺はハッとして目を開ける。
「グリン、あの司令官が最後に言っていた事だけど……」
「あれか。気にする事はない。あれは奴の最後の悪あがきさ」
「そうかしら?」
「そうさ」
銀嶺はそれ以上言うのをやめ、武蔵を撫で続けた。だが、疑問が消えた訳ではなかった。あの司令官の言った通り、銀嶺はエデンの園の真の姿を知らないのだ。ただ言い伝えがあるだけで……。そう思うと、急に銀嶺の心は不安になった。あれほど清らかで心地よいエネルギーを提供してくれる、睡蓮や白檀の様な高級勢力達が、まさか銀嶺達を騙そうとしているとはどうしても思えなかったが、エデンの姿を知らないという不安は魔界と戦い続けるための理由に影を射した。もちろん、エデンを知らなくたって、アストラル宇宙の平和のため、地球人の未来のために銀嶺は戦い続けるつもりでいるが、最終目的であるエデンの園について、もっと知りたい。どうすればいいのか――?
「今はやめるんだ。まずパレードに参加して傷を治す、その事だけを考えろ」
グリンが静かな声で言った。
「あの……私念話使ってないわよ?」
「フフフ。顔に書いてあるさ」
グリンがそう言って笑った所で、宇宙船はハザールの成層圏を抜けてチューブへと突入した。
「ほら、いよいよ帰還だ。この後俺達には長期休暇が出る。カイラスでしばらく楽しもうぜ」
「グリンは不安になった事はないの?」
「……あるよ。昔はな。だが、俺はウォーカーとしてやっていくと決めてるんでね。例え、その先に何があったとしてもだ」
「グリンは根っからの戦士なのね」
「お前だってそうなるさ。何しろ、睡蓮さんが選んだんだからな」
グリンはシートを倒すと、目を閉じた。
「良し、これに乗って帰還するぞ!」
グリンはそう言ってキリンを担いだままカイトに乗った。銀嶺は武蔵をカイトに乗せる。準備を終えた三人は一気に窓から飛び出した。
ガラガラ……!
三人が空中を飛び出すと同時に、天守閣が崩れ始める。三人は一目散に基地目掛けてカイトを飛ばした。途中銀嶺が振り返ると、巨大な城が全壊して崩れ落ちた所だった。
「危なかったわね。逃げ遅れていたら――」
「まあな。だが間に合ったし、コイツも助けることが出来た」
グリンはキリンの方へ顎をしゃくった。
「その子、どうするの?」
「そうだな。魔界に囚われていた訳だし、一応このまま俺達とシャンバラまで連れていく。首都の治療施設で見てもらった方が良い」
「そうね……」
銀嶺はそう答えてハッとした。さっきから今までずっと頭を悩ませていた魔界の陰性エネルギーを感じないのだ。
「本当にやったんだわ」
銀嶺は喜びの笑みを漏らした。
宇宙船に戻ると、中央司令部から連絡が入った。今回の惑星ハザール奪還作戦は成功。その功績を称えて、今回の作戦に参加したウォーカーはシャンバラヘ戻った後、首都カイラスで凱旋パレードに参加する事となった。
「凱旋パレードですって。凄いわね!」
銀嶺はトニの肩を叩いた。
「そうですね」
「正直、そこまでやったっていう実感が湧かないけど」
「そんな事ありませんよ。魔界の司令官を殺っただけでも凄い事です」
「いずれにせよ、これでハザールは元に戻る。さっき聞いたんだが、惑星の高波動エネルギーフィールドが回復したそうだ」
グリンはそう言って晴々とした笑顔を見せた。
「やっぱりそうなのね。さっきから頭がクリアだもの」
「そうだな。しかし銀嶺、新人ウォーカーとしては良くやったぞ」
「そうさ。始めは地球人のウォーカーなんてどうかと思ったが、上出来だ」
タラがバンッと銀嶺の背中を叩いた。
「ツッ!」
銀嶺は胸を押さえる。
「何だ、アイツにやられた所か?」
グリンが心配そうな声を出した。あの後念のためグリンの火炎で傷口を炙ったのだが、痛みは取れなかった。
「ええ。ちょっと痛むのよ」
「アストラル体が損傷したかも知れんな。カイラスで集中治療を受けると良い」
「ええ。そうするわ」
旗艦の宇宙船から連絡が入った。
これから皆でシャンバラヘ帰還する――
順番に宇宙船が飛び立っていった。黄昏時の黄金の光を反射して、船体が金色に輝いている。
「英雄達の帰還という訳ね」
銀嶺はシートに座ると背もたれに身体を沈めた。武蔵を膝に乗せたままゆっくり目を閉じて、武蔵の背中を撫でる。
「エデンが完成すれば、もうお前達は人間ではなくなる――」
魔界の司令官の声が脳内に甦った。銀嶺はハッとして目を開ける。
「グリン、あの司令官が最後に言っていた事だけど……」
「あれか。気にする事はない。あれは奴の最後の悪あがきさ」
「そうかしら?」
「そうさ」
銀嶺はそれ以上言うのをやめ、武蔵を撫で続けた。だが、疑問が消えた訳ではなかった。あの司令官の言った通り、銀嶺はエデンの園の真の姿を知らないのだ。ただ言い伝えがあるだけで……。そう思うと、急に銀嶺の心は不安になった。あれほど清らかで心地よいエネルギーを提供してくれる、睡蓮や白檀の様な高級勢力達が、まさか銀嶺達を騙そうとしているとはどうしても思えなかったが、エデンの姿を知らないという不安は魔界と戦い続けるための理由に影を射した。もちろん、エデンを知らなくたって、アストラル宇宙の平和のため、地球人の未来のために銀嶺は戦い続けるつもりでいるが、最終目的であるエデンの園について、もっと知りたい。どうすればいいのか――?
「今はやめるんだ。まずパレードに参加して傷を治す、その事だけを考えろ」
グリンが静かな声で言った。
「あの……私念話使ってないわよ?」
「フフフ。顔に書いてあるさ」
グリンがそう言って笑った所で、宇宙船はハザールの成層圏を抜けてチューブへと突入した。
「ほら、いよいよ帰還だ。この後俺達には長期休暇が出る。カイラスでしばらく楽しもうぜ」
「グリンは不安になった事はないの?」
「……あるよ。昔はな。だが、俺はウォーカーとしてやっていくと決めてるんでね。例え、その先に何があったとしてもだ」
「グリンは根っからの戦士なのね」
「お前だってそうなるさ。何しろ、睡蓮さんが選んだんだからな」
グリンはシートを倒すと、目を閉じた。