エデンを目指して
凱旋
カイラスへ戻った銀嶺達は、まず連れてきたキリンを治療センターへ連れていった。担当医に事情を説明してしばらく預けることにする。高層マンションに戻った銀嶺にその日の夕方、睡蓮から念話があった。
「お帰りなさい。銀嶺さん。お疲れ様でした。明日、凱旋パレードがあります。午前十時にカイラス中央広場の前に行って下さい。そこからトレイラーに乗って、市街を凱旋してもらいます」
「分かりました……あの、武蔵は?」
「もちろん連れてきて下さい。彼も立派な功労者ですからね」
銀嶺はベッドへ寝転ぶと、武蔵を胸の上に乗せて顔を覗き込んだ。武蔵は濡れた鼻を銀嶺の顎に擦り付ける。
「武蔵、お前も英雄の一員になるのよ」
「ワン!」
銀嶺は武蔵の背中を優しく撫でた。
翌日、銀嶺はカイラス中央広場へ向かった。広場には沢山のトレイラーが整列している。その荷台に、ウォーカー達が各部隊毎に乗り込んでいた。
「よう、銀嶺!」
グリンが銀嶺の肩を叩いた。
「グリン。私達はどれに乗れば良いの?」
「あれだ」
グリンは一台のトレイラーを指差す。既にタラとトニが乗り込んで整列していた。
「俺達も行こうぜ」
「ええ」
二人は武蔵を連れてトレイラーの荷台に乗った。
「よう、来たか新人」
バルタの部隊もそこに居た。次々とウォーカーが各トレイラーに乗り込み、一行は市街地の大通りへ向けて出発した。
大通りの脇にはウォーカーを一目見ようと大勢の人が詰めかけていた。建ち並んだビルから色鮮やかな紙吹雪が舞い散る。ウォーカーを乗せたトレイラーが通ると、人々はどっと歓声を上げた。
「凄い人ね!」
銀嶺は隣に立っているグリンに囁いた。
「フフ。多分街中が総出で見に来たんじゃないか?」
「まさかこんなに注目を集めるとは思っていなかったわ」
「魔界と戦う事こそがこのアストラル宇宙の大義だ。注目して当然さ」
「私達、何処へ向かっているのかしら?」
「このまま大通りを抜けて、勝利の門をくぐったら、市庁舎へ行く。そこで市長の挨拶があり、表彰式だ」
トレイラーは観衆の声援を浴びながら大通りを抜けて、勝利の門をくぐった。すぐ先に市庁舎が見えてくる。市庁舎前の大広場にトレイラーが整列して止まり、ウォーカー達は順番に降りて、広場中央に設置してある椅子に座った。前に講壇が設けられてマイクが置かれている。
しばらくして市長が壇上に上がった。市長はマイクをチェックすると、話し始めた。
「ウォーカー諸君。この度の惑星ハザールでの戦闘ご苦労だった。戦果は聞いている。見事ハザールに巣くう魔界勢力を打ち倒し、あまつさえ敵の司令官を消滅させた。これは素晴らしい功績だ。諸君の働きに応えるため、ここにカイラス栄誉勲章を用意させてもらった。この勲章はウォーカー第一師団の団長、ハウアー司令官に与える事とする。司令官、どうぞ前へ」
最前列に座っていたハウアーが、壇上に上がった。市長に礼をして、勲章を胸に受ける。席上から盛大な拍手がわき起こった。
「アウー!」
武蔵が吠える。会場中に笑いの渦が巻き起こった。
「おや、犬君。君も良くやったよ、ありがとう」
市長が武蔵の方を見て笑った。
「次に、特別新人賞を新人ウォーカー、銀嶺氏に与える。銀嶺氏は、地球生まれで今回が初の戦闘であるにも関わらず、目覚ましい成長を遂げた。銀嶺氏、壇上へどうぞ」
「へっ? 私?」
銀嶺は驚きの余り上ずった声を上げて周囲をキョロキョロ見回した。
「そうだ。行けよ」
グリンが尻を叩く。銀嶺は恐る恐る壇上に上がった。ぎこちなく礼をすると、市長はエメラルドのバッジを銀嶺の胸に着けた。会場から割れんばかりの拍手。
「銀嶺! 結婚してくれ~!」
何処からか叫ぶ声がして、再び会場は笑いに包まれた。銀嶺が席に戻ると、市長が再び話し始めた。
「諸君。諸君の一部はこれから長期休暇に入る。是非この首都カイラスを楽しんで欲しい。だが、まだまだ魔界の攻撃は続いている。油断は禁物である。存分に楽しんでアストラルエネルギーを上げたら、再び真善美を守るために戦って欲しい。アストラル宇宙にエデンを取り戻そう。以上だ」
「エデン……」
銀嶺は呟いた。胸の傷がチクリと痛む。銀嶺は痛みのする箇所を手で軽く押さえた。
「まだ痛むのか? お前も医療センターへ行った方が良いな。この後俺が送っていってやる」
「ありがとう。そうね……そうするわ」
銀嶺はそう言って胸のバッジを見た。
「これで私も、ウォーカーとして認められたという事かしら」
「そういうこったな!お前はもっと自信を持って良いと思うぞ」
「ワン!」
「もちろん、武蔵もな」
グリンはそう言って笑った。
式典の後、二人は武蔵を連れて医療センターへ向かった。
「お帰りなさい。銀嶺さん。お疲れ様でした。明日、凱旋パレードがあります。午前十時にカイラス中央広場の前に行って下さい。そこからトレイラーに乗って、市街を凱旋してもらいます」
「分かりました……あの、武蔵は?」
「もちろん連れてきて下さい。彼も立派な功労者ですからね」
銀嶺はベッドへ寝転ぶと、武蔵を胸の上に乗せて顔を覗き込んだ。武蔵は濡れた鼻を銀嶺の顎に擦り付ける。
「武蔵、お前も英雄の一員になるのよ」
「ワン!」
銀嶺は武蔵の背中を優しく撫でた。
翌日、銀嶺はカイラス中央広場へ向かった。広場には沢山のトレイラーが整列している。その荷台に、ウォーカー達が各部隊毎に乗り込んでいた。
「よう、銀嶺!」
グリンが銀嶺の肩を叩いた。
「グリン。私達はどれに乗れば良いの?」
「あれだ」
グリンは一台のトレイラーを指差す。既にタラとトニが乗り込んで整列していた。
「俺達も行こうぜ」
「ええ」
二人は武蔵を連れてトレイラーの荷台に乗った。
「よう、来たか新人」
バルタの部隊もそこに居た。次々とウォーカーが各トレイラーに乗り込み、一行は市街地の大通りへ向けて出発した。
大通りの脇にはウォーカーを一目見ようと大勢の人が詰めかけていた。建ち並んだビルから色鮮やかな紙吹雪が舞い散る。ウォーカーを乗せたトレイラーが通ると、人々はどっと歓声を上げた。
「凄い人ね!」
銀嶺は隣に立っているグリンに囁いた。
「フフ。多分街中が総出で見に来たんじゃないか?」
「まさかこんなに注目を集めるとは思っていなかったわ」
「魔界と戦う事こそがこのアストラル宇宙の大義だ。注目して当然さ」
「私達、何処へ向かっているのかしら?」
「このまま大通りを抜けて、勝利の門をくぐったら、市庁舎へ行く。そこで市長の挨拶があり、表彰式だ」
トレイラーは観衆の声援を浴びながら大通りを抜けて、勝利の門をくぐった。すぐ先に市庁舎が見えてくる。市庁舎前の大広場にトレイラーが整列して止まり、ウォーカー達は順番に降りて、広場中央に設置してある椅子に座った。前に講壇が設けられてマイクが置かれている。
しばらくして市長が壇上に上がった。市長はマイクをチェックすると、話し始めた。
「ウォーカー諸君。この度の惑星ハザールでの戦闘ご苦労だった。戦果は聞いている。見事ハザールに巣くう魔界勢力を打ち倒し、あまつさえ敵の司令官を消滅させた。これは素晴らしい功績だ。諸君の働きに応えるため、ここにカイラス栄誉勲章を用意させてもらった。この勲章はウォーカー第一師団の団長、ハウアー司令官に与える事とする。司令官、どうぞ前へ」
最前列に座っていたハウアーが、壇上に上がった。市長に礼をして、勲章を胸に受ける。席上から盛大な拍手がわき起こった。
「アウー!」
武蔵が吠える。会場中に笑いの渦が巻き起こった。
「おや、犬君。君も良くやったよ、ありがとう」
市長が武蔵の方を見て笑った。
「次に、特別新人賞を新人ウォーカー、銀嶺氏に与える。銀嶺氏は、地球生まれで今回が初の戦闘であるにも関わらず、目覚ましい成長を遂げた。銀嶺氏、壇上へどうぞ」
「へっ? 私?」
銀嶺は驚きの余り上ずった声を上げて周囲をキョロキョロ見回した。
「そうだ。行けよ」
グリンが尻を叩く。銀嶺は恐る恐る壇上に上がった。ぎこちなく礼をすると、市長はエメラルドのバッジを銀嶺の胸に着けた。会場から割れんばかりの拍手。
「銀嶺! 結婚してくれ~!」
何処からか叫ぶ声がして、再び会場は笑いに包まれた。銀嶺が席に戻ると、市長が再び話し始めた。
「諸君。諸君の一部はこれから長期休暇に入る。是非この首都カイラスを楽しんで欲しい。だが、まだまだ魔界の攻撃は続いている。油断は禁物である。存分に楽しんでアストラルエネルギーを上げたら、再び真善美を守るために戦って欲しい。アストラル宇宙にエデンを取り戻そう。以上だ」
「エデン……」
銀嶺は呟いた。胸の傷がチクリと痛む。銀嶺は痛みのする箇所を手で軽く押さえた。
「まだ痛むのか? お前も医療センターへ行った方が良いな。この後俺が送っていってやる」
「ありがとう。そうね……そうするわ」
銀嶺はそう言って胸のバッジを見た。
「これで私も、ウォーカーとして認められたという事かしら」
「そういうこったな!お前はもっと自信を持って良いと思うぞ」
「ワン!」
「もちろん、武蔵もな」
グリンはそう言って笑った。
式典の後、二人は武蔵を連れて医療センターへ向かった。