エデンを目指して
再会
翌日、銀嶺は町へ出掛けた。ミラに会うためである。以前訪れたアトリエを訪ねた。
「銀嶺! 良く来たわね」
銀嶺の姿を見ると、ミラは嬉しそうな声を上げて、銀嶺を抱き締めた。
「昨日の凱旋パレード、私街道から見てたのよ」
ミラは興奮した面持ちで話した。
「エデンの絵、ありがとう。ちゃんと届いたわよ」
「あの絵、どうかしら? 気に入ってくれた?」
「ええ。素晴らしいわ。でも――」
銀嶺は言葉を探した。
「でも?」
「エデンって、本当はどんな姿だったのかしら? あの絵は飽くまで空想でしょう?」
「そうね」
「私は、エデンの真実の姿が知りたいのよ」
「どうして?」
「だって……知らない物のために命をかけて、大丈夫かしら? もちろん、私はアストラル宇宙の平和のために魔界と戦うつもりよ。でも、その意思をより確かなものにするために、エデンについて知りたいのよ。本当にそんなに素晴らしいものだったのかどうか」
銀嶺はそう言って静かに笑った。
「なるほどね。そういう訳ね。それなら……聞いた話だけど、宇宙のどこかに、かつてのエデンの名残のエネルギーが残っているそうよ。そこに行けば、エデンのエネルギーの欠片を体験する事が出来るとか聞いたわ」
「エデンの名残?」
「ええ。魔界の侵入でエデンは崩壊したけど、エネルギー自体は僅かに残っているっていう噂よ。それを世界の母が今でも見守っているとか」
「何処にあるの?」
銀嶺は興奮して訊いた。
「分からないわ。私が知っているのはそれだけよ」
「そう……」
銀嶺は少し落胆して、ソファーに座った。エデンの欠片……何処にあるのかしら? もしあるなら、そこに行ってエデンのエネルギーを体感してみたいわ。そうすれば、エデンがどんな物だったのか、実感がつかめる筈だわ……。
「探すのね?」
ミラは穏やかな声で訊いた。
「ええ。そのつもりよ。今日はありがとう。私、これで失礼するわ」
「分かったわ。もしかしたら、中央図書館なら、エデンについての文献とかがあるかも知れないわ。エデンを探すなら、気を付けて行くのよ」
「ありがとう」
銀嶺はミラに礼を言うと、アトリエを後にした。その足で中央図書館へ向かう。カイラスの中央図書館は見上げるような円柱形の巨大な建物だった。その外観から推察しても、膨大な量の蔵書が蓄えられている筈である。これはひょっとしたら、エデンにまつわる本もあるかも知れない……。
銀嶺は中へ入ると、受付へ向かった。受付嬢がにこやかに挨拶する。
「今日は。何かお探しですか?」
「ええ。エデンについて知りたいのよ。そういう関連の本はあるかしら?」
「少々お待ちください……」
受付嬢はそう言うと、コンピューターで検索を始める。
「その様な本でしたら、八階にございます。こちらで図書カードを作成してからご利用下さい」
受付嬢はプラスチックの図書カードを差し出した。
「こちらに名前と住所を記入して下さい」
銀嶺はマジックで名前と住所を書くと、カードをポケットに突っ込んでエレベーターに乗った。
エレベーターはあっという間に八階に着いた。広いフロアには所狭しと天井まで届く本棚が整列している。数人利用客が居て、本を探したり、中央に設置された机で本を読んだりしている。銀嶺はガイド様のコンピューターにカードを差し込み、
「エデンの欠片 場所」
と打ち込んだ。数十冊の本のタイトルが表示される。
『エデンへの道程』
というタイトルを見つけた。タイトルをクリックすると、収容してある棚の番号が表示された。
「F-209……」
銀嶺は番号を覚えると、棚へ向かった。
お目当ての本は革張りの分厚い本で、手に取るとずっしりとした重みがあった。銀嶺は期待に胸を踊らせて、中央の机に本を置くと、座ってパラパラとページを捲ってみた。所どころカラーの写真が挿入され、他はビッシリと文字で埋め尽くされていた。目次を見ると、どうやら過去にエデンの欠片まで行った人の体験記の様である。読み終わるまでには随分かかりそうだが、銀嶺は覚悟を決めて読み始めた。
読み終わる頃にはすっかり夜になっていた。読んでみて分かった事は、エデンの欠片はこの本が書かれた当時は宇宙の辺境、ラシマー空域にあったという事、そして、エデンの欠片は常に移動しているという事だった。
「移動しているとなると、探すのは困難だわ……」
銀嶺は少し落胆して本を閉じた。ついでに、銀嶺は魔界についても調べる事にした。コンピューターで検索をかけたが、魔界についての本は一冊も置いてなかった。
「お客様、もう閉館の時間です」
係の者がやって来て告げた。銀嶺は今日は諦めて帰宅する事にした。
バスに揺られてマンションに着くと、銀嶺はソファーに深く身体を沈めた。武蔵が足元にすり寄る。武蔵を撫でようと手を伸ばした時、グリンから念話が来た。
「エデンについて、何か分かったか?」
「ええ。かつてはラシマー空域にあったという事が分かったわ。でも、エデンは常に移動しているらしいの」
「それは知ってる」
グリンはシレッと答えた。
「銀嶺! 良く来たわね」
銀嶺の姿を見ると、ミラは嬉しそうな声を上げて、銀嶺を抱き締めた。
「昨日の凱旋パレード、私街道から見てたのよ」
ミラは興奮した面持ちで話した。
「エデンの絵、ありがとう。ちゃんと届いたわよ」
「あの絵、どうかしら? 気に入ってくれた?」
「ええ。素晴らしいわ。でも――」
銀嶺は言葉を探した。
「でも?」
「エデンって、本当はどんな姿だったのかしら? あの絵は飽くまで空想でしょう?」
「そうね」
「私は、エデンの真実の姿が知りたいのよ」
「どうして?」
「だって……知らない物のために命をかけて、大丈夫かしら? もちろん、私はアストラル宇宙の平和のために魔界と戦うつもりよ。でも、その意思をより確かなものにするために、エデンについて知りたいのよ。本当にそんなに素晴らしいものだったのかどうか」
銀嶺はそう言って静かに笑った。
「なるほどね。そういう訳ね。それなら……聞いた話だけど、宇宙のどこかに、かつてのエデンの名残のエネルギーが残っているそうよ。そこに行けば、エデンのエネルギーの欠片を体験する事が出来るとか聞いたわ」
「エデンの名残?」
「ええ。魔界の侵入でエデンは崩壊したけど、エネルギー自体は僅かに残っているっていう噂よ。それを世界の母が今でも見守っているとか」
「何処にあるの?」
銀嶺は興奮して訊いた。
「分からないわ。私が知っているのはそれだけよ」
「そう……」
銀嶺は少し落胆して、ソファーに座った。エデンの欠片……何処にあるのかしら? もしあるなら、そこに行ってエデンのエネルギーを体感してみたいわ。そうすれば、エデンがどんな物だったのか、実感がつかめる筈だわ……。
「探すのね?」
ミラは穏やかな声で訊いた。
「ええ。そのつもりよ。今日はありがとう。私、これで失礼するわ」
「分かったわ。もしかしたら、中央図書館なら、エデンについての文献とかがあるかも知れないわ。エデンを探すなら、気を付けて行くのよ」
「ありがとう」
銀嶺はミラに礼を言うと、アトリエを後にした。その足で中央図書館へ向かう。カイラスの中央図書館は見上げるような円柱形の巨大な建物だった。その外観から推察しても、膨大な量の蔵書が蓄えられている筈である。これはひょっとしたら、エデンにまつわる本もあるかも知れない……。
銀嶺は中へ入ると、受付へ向かった。受付嬢がにこやかに挨拶する。
「今日は。何かお探しですか?」
「ええ。エデンについて知りたいのよ。そういう関連の本はあるかしら?」
「少々お待ちください……」
受付嬢はそう言うと、コンピューターで検索を始める。
「その様な本でしたら、八階にございます。こちらで図書カードを作成してからご利用下さい」
受付嬢はプラスチックの図書カードを差し出した。
「こちらに名前と住所を記入して下さい」
銀嶺はマジックで名前と住所を書くと、カードをポケットに突っ込んでエレベーターに乗った。
エレベーターはあっという間に八階に着いた。広いフロアには所狭しと天井まで届く本棚が整列している。数人利用客が居て、本を探したり、中央に設置された机で本を読んだりしている。銀嶺はガイド様のコンピューターにカードを差し込み、
「エデンの欠片 場所」
と打ち込んだ。数十冊の本のタイトルが表示される。
『エデンへの道程』
というタイトルを見つけた。タイトルをクリックすると、収容してある棚の番号が表示された。
「F-209……」
銀嶺は番号を覚えると、棚へ向かった。
お目当ての本は革張りの分厚い本で、手に取るとずっしりとした重みがあった。銀嶺は期待に胸を踊らせて、中央の机に本を置くと、座ってパラパラとページを捲ってみた。所どころカラーの写真が挿入され、他はビッシリと文字で埋め尽くされていた。目次を見ると、どうやら過去にエデンの欠片まで行った人の体験記の様である。読み終わるまでには随分かかりそうだが、銀嶺は覚悟を決めて読み始めた。
読み終わる頃にはすっかり夜になっていた。読んでみて分かった事は、エデンの欠片はこの本が書かれた当時は宇宙の辺境、ラシマー空域にあったという事、そして、エデンの欠片は常に移動しているという事だった。
「移動しているとなると、探すのは困難だわ……」
銀嶺は少し落胆して本を閉じた。ついでに、銀嶺は魔界についても調べる事にした。コンピューターで検索をかけたが、魔界についての本は一冊も置いてなかった。
「お客様、もう閉館の時間です」
係の者がやって来て告げた。銀嶺は今日は諦めて帰宅する事にした。
バスに揺られてマンションに着くと、銀嶺はソファーに深く身体を沈めた。武蔵が足元にすり寄る。武蔵を撫でようと手を伸ばした時、グリンから念話が来た。
「エデンについて、何か分かったか?」
「ええ。かつてはラシマー空域にあったという事が分かったわ。でも、エデンは常に移動しているらしいの」
「それは知ってる」
グリンはシレッと答えた。