エデンを目指して
マスター・ルー
レジーナ号は惑星サルバへ到着した。サルバは地球型の星だった。緑豊かな惑星である。グリンは深い森に佇んだ広い湖の畔にレジーナ号を着陸させた。向かいに小さな木の小屋が見える。
「あそこにマスター・ルーが居る筈だ」
「マスター・ルー?」
「ウォーカーの剣術の師匠だよ」
グリンはそう言うとレジーナ号を降りて小屋に向かった。
「マスター・ルー! いらっしゃいますか」
大声で小屋に向かって叫ぶ。
ガタガタと戸が開いて、大柄の長い白髪をポニーテールにした男が出てきた。金色の鋭い猛禽のような瞳が光っている。
「……誰かね?」
マスター・ルーはグリンをまじまじと見て言った。
「グリンと言います。こちらは銀嶺です」
「何しに来た?」
「我々はウォーカーです。ぜひマスターに稽古をつけて頂きたく、はるばるカイラスから来ました」
「そうかね。取り敢えず、上がりたまえ」
マスター・ルーはそう言うと、二人を部屋へ通した。武蔵もちゃっかり中へ入る。
「今、茶を入れる」
マスター・ルーはぶっきらぼうにそう言うと、奥のキッチンへ向かった。リビングは丸木を組み上げて出来た壁に、小さな窓からの明かりが差し込んで、暖かな空間を演出していた。グリーンのカーペットの上に白いソファーが置かれており、およそ、ウォーカーの師匠の部屋とは思えない可愛らしい様相を呈していた。
「待たせたな」
マスター・ルーはトレイに紅茶を乗せて来た。柔らかな紅茶の香りが部屋に広がる。
「それで、稽古だって?」
マスター・ルーは少々驚いた声で聞いた。
「はい。ウォーカーとしての腕を上げるため、マスターに稽古をつけて頂きたいのです。特に、こちらの銀嶺は新人です。まだまだ鍛練が足りません」
「ふむ……良いだろう。スペースカイトには乗れるのかね?」
「はい。それは実戦でやりました」
「ではスライドは?」
「それも、少し出来ましたね。まあ、偶然の出来事ですが」
「よろしい。ではスライドの訓練から始めよう。外へ出て」
三人は外へ出た。
「こっちだ」
マスター・ルーは森の奥へ歩いてゆく。しばらく歩くと、開けた場所に出た。
「ここならやり易いだろう。どれ、まず浮いてみなさい」
銀嶺は頭の中で身体が浮くところをイメージした。次の瞬間、フワリと銀嶺の身体が中に浮いた。
「良いぞ。そのまま前に移動して」
銀嶺はスーっと前方に移動する。ちょっとぐらついたが、何とか数十メートル滑った。
「次はバックだ」
銀嶺は同じ姿勢のまま、バックした。身体がヨロヨロとぐらつく。
「右にターンして」
言われるままに右に回る。
「次は左だ」
左ターンも完了した。
「悪くないが、姿勢制御が今一だな。ぐらつかずに滑らかに動ける様、練習だ。前進とバック、それから左右に横移動を繰り返すんだ」
「分かったわ」
銀嶺は言われた通り、前後左右に滑った。初めのうちこそよろけていたが、そのうちに綺麗な姿勢で移動できるようになってきた。
「中々良いぞ。上達が早いじゃないか。次は剣を構えてスライドし、上段から切りつけるんだ。まず俺が手本を見せる」
マスター・ルーはそう言うとフワリと浮かんで、前方に勢い良く滑り、エイッと剣を上から下へ斬り付けた。
「やってみろ」
銀嶺は剣を構えてスライドすると、剣を振り下ろした。
「よし、良いぞ。次は剣を振り下ろしたらそのままターンして反対側へ回り込み、もう一度剣を振るんだ」
銀嶺はスライドして剣を斬り付け、ターンして反対側へ回り込んで再び斬り付けた。
「良い動きだ。これの練習をしばらく続けろ」
銀嶺はそれから一時間程、同じ動きを続けた。
「お前は中々見所があるな。よし、今日はここまでだ。暇があったらスライドの練習をするといい」
マスター・ルーはそう言うと小屋へ戻っていった。
「実戦をやったという話だが、魔界に遭遇してどうだったね?」
「はい……戦う事はそれ程難しくはありませんでした。ただ……」
「ただ?」
「あの魔界の精神波がどうしても慣れなくて」
「ふむ……そうだろうね。あれは経験を積んでも、慣れるものではないからな。まともな人間ならな。あれに対抗するには、エネルギーを上げておくしかない。明日の朝は、二人で森を散策してみたら良い。中々美しい森だ。エネルギーも上がるだろう。それに、森の奥の岩場に、温泉があるんだ。入ってみたら良いぞ」
「それは素敵ですね!」
「うん。中々風光明媚な眺めだよ」
それから三人は惑星ハザールでの魔界退治の話で盛り上がった。夜になり、銀嶺はあてがわれた部屋の窓から星を眺めて思った。修行というのも、充実感があって良いわ……。
「あそこにマスター・ルーが居る筈だ」
「マスター・ルー?」
「ウォーカーの剣術の師匠だよ」
グリンはそう言うとレジーナ号を降りて小屋に向かった。
「マスター・ルー! いらっしゃいますか」
大声で小屋に向かって叫ぶ。
ガタガタと戸が開いて、大柄の長い白髪をポニーテールにした男が出てきた。金色の鋭い猛禽のような瞳が光っている。
「……誰かね?」
マスター・ルーはグリンをまじまじと見て言った。
「グリンと言います。こちらは銀嶺です」
「何しに来た?」
「我々はウォーカーです。ぜひマスターに稽古をつけて頂きたく、はるばるカイラスから来ました」
「そうかね。取り敢えず、上がりたまえ」
マスター・ルーはそう言うと、二人を部屋へ通した。武蔵もちゃっかり中へ入る。
「今、茶を入れる」
マスター・ルーはぶっきらぼうにそう言うと、奥のキッチンへ向かった。リビングは丸木を組み上げて出来た壁に、小さな窓からの明かりが差し込んで、暖かな空間を演出していた。グリーンのカーペットの上に白いソファーが置かれており、およそ、ウォーカーの師匠の部屋とは思えない可愛らしい様相を呈していた。
「待たせたな」
マスター・ルーはトレイに紅茶を乗せて来た。柔らかな紅茶の香りが部屋に広がる。
「それで、稽古だって?」
マスター・ルーは少々驚いた声で聞いた。
「はい。ウォーカーとしての腕を上げるため、マスターに稽古をつけて頂きたいのです。特に、こちらの銀嶺は新人です。まだまだ鍛練が足りません」
「ふむ……良いだろう。スペースカイトには乗れるのかね?」
「はい。それは実戦でやりました」
「ではスライドは?」
「それも、少し出来ましたね。まあ、偶然の出来事ですが」
「よろしい。ではスライドの訓練から始めよう。外へ出て」
三人は外へ出た。
「こっちだ」
マスター・ルーは森の奥へ歩いてゆく。しばらく歩くと、開けた場所に出た。
「ここならやり易いだろう。どれ、まず浮いてみなさい」
銀嶺は頭の中で身体が浮くところをイメージした。次の瞬間、フワリと銀嶺の身体が中に浮いた。
「良いぞ。そのまま前に移動して」
銀嶺はスーっと前方に移動する。ちょっとぐらついたが、何とか数十メートル滑った。
「次はバックだ」
銀嶺は同じ姿勢のまま、バックした。身体がヨロヨロとぐらつく。
「右にターンして」
言われるままに右に回る。
「次は左だ」
左ターンも完了した。
「悪くないが、姿勢制御が今一だな。ぐらつかずに滑らかに動ける様、練習だ。前進とバック、それから左右に横移動を繰り返すんだ」
「分かったわ」
銀嶺は言われた通り、前後左右に滑った。初めのうちこそよろけていたが、そのうちに綺麗な姿勢で移動できるようになってきた。
「中々良いぞ。上達が早いじゃないか。次は剣を構えてスライドし、上段から切りつけるんだ。まず俺が手本を見せる」
マスター・ルーはそう言うとフワリと浮かんで、前方に勢い良く滑り、エイッと剣を上から下へ斬り付けた。
「やってみろ」
銀嶺は剣を構えてスライドすると、剣を振り下ろした。
「よし、良いぞ。次は剣を振り下ろしたらそのままターンして反対側へ回り込み、もう一度剣を振るんだ」
銀嶺はスライドして剣を斬り付け、ターンして反対側へ回り込んで再び斬り付けた。
「良い動きだ。これの練習をしばらく続けろ」
銀嶺はそれから一時間程、同じ動きを続けた。
「お前は中々見所があるな。よし、今日はここまでだ。暇があったらスライドの練習をするといい」
マスター・ルーはそう言うと小屋へ戻っていった。
「実戦をやったという話だが、魔界に遭遇してどうだったね?」
「はい……戦う事はそれ程難しくはありませんでした。ただ……」
「ただ?」
「あの魔界の精神波がどうしても慣れなくて」
「ふむ……そうだろうね。あれは経験を積んでも、慣れるものではないからな。まともな人間ならな。あれに対抗するには、エネルギーを上げておくしかない。明日の朝は、二人で森を散策してみたら良い。中々美しい森だ。エネルギーも上がるだろう。それに、森の奥の岩場に、温泉があるんだ。入ってみたら良いぞ」
「それは素敵ですね!」
「うん。中々風光明媚な眺めだよ」
それから三人は惑星ハザールでの魔界退治の話で盛り上がった。夜になり、銀嶺はあてがわれた部屋の窓から星を眺めて思った。修行というのも、充実感があって良いわ……。