総長様に愛されたい!~溺愛するはずが溺愛される日々が始まりました~
パチクリと長い睫毛で縁取られた瞳を開閉する椎那くん。
彼は小豆沢 椎那。
言わずもがな朱雀の幹部。
ゴールドのカラコンが入ったアーモンドアイが特徴的で、傷みのない金髪はお洒落にセンターで分けられている。
右耳にはヘリックスが二つ。
首元にはネックレス。
この人は和葉と真逆で、女好きで有名だ。
「桜、こっちに来て。
椎那とそんなに見つめ合ってると変態がうつる」
「いやうつらねえよ!
適当なこと言ってんな!」
「ほら桜、おいで」
いつの間に座っていたのか。
二人用のソファーに腰掛けた菫さんが自分の隣をトントンと叩いている。
しかも今……呼び捨てされた!?
嬉しい……嬉しすぎる……。
「さーくーらー」
「あ、は、はい!」
甘えるように催促されて急いで菫さんの隣に座った。
すると何故か頭を撫で撫でされる。
美人さんに頭撫でられるの……なかなかいいかも。
「ねえ!桜ちゃん……だよね?
めちゃくちゃ可愛くてびっくりしちゃった!」
「……?」
満面の笑みで話しかけてくる椎那くんの発言にささやかな疑問が浮かぶ。
「あれ、首傾げちゃってどうしたの?
もしかして……自分が可愛いって分かってない?
無自覚ちゃん!?やばいそこも可愛……」
「いや、あの。
私が可愛いのは至極当然のことだと思うんですが……」
「え?」
「ただ、菫さんみたいに美しい人がそばにいるのに私が可愛いことでそんなに驚くかなあと思って」
椎那くんは再び目をパチクリさせた。
これだよこれ。
これを“びっくりする”って言うんだ。
「ふふっ、そっか。
桜はそっち系の子なのね。
ますます気に入っちゃった!」
ギューっと菫さんが抱きついて来る。
そのままやわらかい頬をスリスリされてまさに至福の時だった。