総長様に愛されたい!~溺愛するはずが溺愛される日々が始まりました~
第一章
挨拶は堂々と
桜side
「失礼します。柊先生はいらっしゃいますか?」
春の花もすっかり落ち切り夏の訪れを感じ始めた頃。
私、園崎 桜はここ、王華高校へと転入する。
そして今日はその初日。
気分はどうかって?
それは勿論……最高過ぎてニヤけが止まりません。
一人で口を緩めていると、奥の方の席で作業していた私の新しい担任、柊 秋人先生が気だるげに歩いて来た。
グレーの長い髪を後ろで一つに纏め、羽織った白衣のポケットに両手を突っ込んでいる。
「うぃーす桜。初日から遅刻とは度胸あるなテメェ」
「えへへ、許してくださいよ。
和葉くんに会えると思ったら緊張しちゃって。髪型とかメイクとか全然決まらなかったんだもん」
「髪型?メイク?いつもと変わらねえじゃねえか」
「そうなの!色々考えた結果、ありのままの自分を好きになって貰おうと思って!」
クルッと一度ターンすると胸辺りまである栗色の髪がやわらかく揺れた。
毛先の緩いウェーブは癖毛で、崩れることは無い。
「はあ。ま、たしかにお前は下手に化粧なんかしねえ方がいいな。
ただでさえ派手な顔してんだし」
「派手な顔じゃないし!美人って言ってよ!」
「自分で言うか」
「だって事実だもん」
くだらない会話を繰り広げながらどちらともなく歩き出した。
既に授業は始まっているけれど、すれ違う生徒もちらほら。
「つうかお前、よくこんな所転校して来れたな。一応お嬢様だろ?」
「お母様もお父様も、とても優しい方だから。お願いしたら直ぐに許してくれたよ」
「へえ。そりゃよかった」
王華高校はあまり生徒の素行が良くないことで知られている。
男子生徒の殆どが暴走族に入っているし、当然のことと言えば当然のことなんだけど。