総長様に愛されたい!~溺愛するはずが溺愛される日々が始まりました~
女嫌いで有名な最強の総長に躊躇なくアタックする美少女。そう、美少女。
ある程度噂されるとは思っていたけれど、まさかギャラリーが湧くほどとは。
女子生徒から向けられる敵意と、男子生徒から向けられる嫌悪と興味。
この3つの中で最も恐れるべきは女子生徒からの敵意…ではなく男子生徒からの嫌悪だ。
恐らく彼らは朱雀の人間で、自分の尊敬する総長に近づこうとする怪しい女の偵察にでも来たのだらうから。
「……ねえ、桜」
「なんですか?」
「うちの溜り場、来てみる?」
「え、」
周りに聞こえないようにという配慮からか、菫は少し声を潜めてそう誘った。
遠慮なく向けられるいつくもの視線のせいで正直少し憂鬱になっていたけれど、そんなもの一気に吹き飛んでしまう。
数ある暴走族のそれらの中でも朱雀のものは特に有名で、先代の一人が所有していた大きな倉庫を代々引き継ぎ、溜り場としているそうだ。
ただ、そこに立ち入れるのは原則チームメンバーのみで、たとえメンバーの関係者であったとしてもそこに入るには幹部の許可がいる。
更に1年ほど前、ある事件が起きてからその警戒は益々高まった。特に女に対しては。
そんな場所に誘ってもらえるなんて、菫は本当に私のことを信頼してくれているようだ。
「大丈夫よ。私が一緒にいる限り、誰にも文句は言わせないから」
菫が真っ直ぐにこちらを見て微笑んだ。
胸の奥がじんわり温かくなる。