総長様に愛されたい!~溺愛するはずが溺愛される日々が始まりました~
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
「え?」
「朱雀の溜り場は、和葉くんにとって大切な場所だろうから」
続きは言葉にしなくても伝わったようだ。
菫は少し寂しそうに、けれど納得したように微笑んでくれた。
と、そんなやり取りの後で。
「あ、あそこのお店行きましょ!桜に似合いそうな服がたくさんあるわよ!」
「いやあの……って、い、いたたた!力強いです!」
「あら、ごめんね」
私は菫さんと二人で学校近くのショッピングモールへ遊びに来ていた。
倉庫へ行けないなら、どこかへ買い物に行けばいいのよ!という菫さんの謎の思考回路が原因だ。
「ていうか……どうして私に敬語を使うの?」
「え?」
「友達になったんだからタメ口でいいわよ!菫って呼んで!」
「……」
あっけらかんと言う菫さんの姿に思考が停止する。
過去に引きずり込もうとするような、自分の意志とは関係なく働く何かに耐えるためだ。
「桜……?」
菫が心配そうにこちらを覗き込んでいるのが見えて、慌てて笑顔を作った。
「あ、あはは!まさか菫の方から友達って呼んでくれると思わなくて驚いちゃった!」
「…、ふふ、桜ってば大げさね」
「えー?そうかな?」
「そうよ!……あ、この鞄可愛い!」
「ほんとだ!私はこっちの色が好きだなー」