総長様に愛されたい!~溺愛するはずが溺愛される日々が始まりました~

「思ったより遅くなっちゃったわね。家まで送るわ」

「大丈夫!私、昔こっちに住んでたから道詳しいし」

「いいえ、そうじゃなく……」

それは丁度、すこし人気のない路地へと入った時だった。

菫が突然後ろを振り返りながら足を振り上げる。その蹴りは丁度男の急所へと打ち込まれ、卑怯にも後ろから菫を狙ったそいつは地面へ座り込んだ。

しかしその男の後ろには、まだ数人の仲間がいる。

「そうじゃなくて、この辺りはこういう男達が多いから」

「ああ、なるほど」

わざわざ狙い撃ちしてくるのは菫の立場があってこそだろうけれど、女に暴力を振るうことに抵抗のない男達がのさばっているという事実は確かに認識した。

それにしたって、女二人相手に後ろから奇襲を仕掛けるなんて情けない話だ。

どうやらそんな思いが顔に表れていたらしい。

既に一人やられて気が立っている男達が苛立たしげに拳を振り上げて向かってきた。

「桜、下がって!」

菫は人数差と力の差をものともせず、相手の急所を確実について一人一人倒していく。
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